なんだと? 竜輝が男を好きになるわけがない?
 
「なんか桜井君勘違いしてるみたいだからね」

 悔しい。コイツらにそう思われているのが悔しい。
 なのに、反論の言葉が出てこないのはなんでだ。

「黙ってるけど、もしかして竜輝君の事好きだった?」

 好きだ。恋してる。でもこいつらにそんな事言えるわけがない。

「うわぁ、図星!? キモっ!」
「まさか、竜輝君はずっと一緒にいてくれるなんて思ってないよねぇ?」
「……俺は……」

 女子達の目線がまるで包丁の切っ先か銃口を向けられているようで痛い。目を合わさないようにしていたら、今度はくすくすと悪意のある笑みが鼓膜を貫いてくる。

「ま、桜井君をいじめたい訳じゃないからここまでにしよっか」
「竜輝君からはなれてよね。あの子は私達みたいな1軍が相応しいんだから」

 去っていく女子達の醜い背中を見ている事しか出来ない俺は、ギュッと両手の拳を握りしめる。

「わかってたよ、そんな事くらい……!」 
「桜井君。どうしたん?」

 気がついたら隣のクラスの担任であるおばさん教師が、音もなしに俺達の後ろに立っていた。