◇ ◇ ◇

 教室でお茶を飲んでいると、忍が教室にやってきた。

「はよ〜」
「っす、忍。朝練おつかれ」
「もう元気になったんだな」
「まあね」

 忍はニヤッと笑って俺の肘を軽く小突く。

「やっぱお前がいねぇとしまらねぇ」
「そうか?」
「竜輝のテンションとかマジでそうだしな」

 竜輝から見た俺の存在は忍から見てもデカいものらしい。そんな忍だが、隣のクラスのサッカー部員に呼ばれて出て行った。

「ちょっと、桜井君。今いい?」

 いきなり声がしたのでガバッと驚きながら振り返ると、同じクラスのザ・1軍な女子と他クラスの女子が併せて5人くらい固まって、腕組みをしながら俺を睨みつけている。

「何?」

 これは嫌な予感がする。俺もしかしてなんかしたか?

「何の用だよ」
「桜井君に話したい事があるの」
「……話したい事って」

 こういう時、女子が何をしでかすかたまったもんじゃねぇ。
 俺は女子達に促されて教室を出ると、人気の少ないエレベーターの近くまで連れて行かれる。

「じゃあここで言うね。桜井君、これ以上竜輝君に近づかないでくれる?」
「はぁ?」

 いや、はぁ? 何を言っているんだコイツは。意味がわかんねぇ。

「竜輝君に近づかないでって言ってるの。わかる?」
「なんでだよ」
「竜輝君は桜井君みたいな陰キャにはふさわしくないの、わかる? しかも竜輝君が男好きになるわけないじゃん」