「蓮也、夕ごはんも準備してるけど食べられる? ってみかん食べてたの」

 母親は部屋に入って来るなりみかんに釘付けになっているようだ。

「うん、竜輝がくれたから」
「まだ5つくらいは残ってるわね……これ、冷蔵庫の野菜室に入れておくから。ごはんはどう?」
「食べる」

 リビングに降りると、すでに父親がもっそもっそと夕食を口にしている。夕食のメニューは鶏肉と根菜類を煮詰めた筑前煮みたいなやつと、キャベツの入った味噌汁にフレークタイプのわかめと菜っ葉の入った混ぜご飯。

「いただきます~」
「蓮也、もう食えるのか」
「おとん、だいぶ食欲はあるから大丈夫」
「そっか、なら大丈夫そうだな」

 父親は多くを語らない人。だがその方がいい。少なくとも俺はそう思う。

「蓮也、症状はどうなんだ?」
「まあ、大分落ち着いたと思う」
「それなら明日は学校行けそうだな」
「多分な」

 会話は少ない。テレビから流れ出るアナウンサーの声がメインに響いてくる。