みかんは俺も竜輝も好きで、特に冬場はこたつに入ってよく食べていたっけ。

「これ食べて。ビタミンとか入ってるから」
「さんきゅ。俺がみかん好きなの覚えてたんだ」
「当たり前じゃん! れんくんの好きな食べ物は全部覚えてるよ!」

 これみよがしに、俺がよく給食でおかわりしていた品物をすらすらと語る竜輝へ、そこまでしなくていいから……。と制するのがやっとだった。

「じゃ、食べよっかな」
「どうぞどうぞ。皮剥いてあげようか」

 ここは竜輝に剥いてもらうとしよう。アイツの方が皮剥くのうまいし。

「ほい、どうぞ」
「ありがとう。いただきま~す」

 皮が剥かれたみかん1切れを口の中に投げ入れると、みかん独特の酸味が口の中にじゅわっと広がった。
 う~んこれよこれ。このきゅっとした酸味が好きなんだよな。

「もう1個いる?」
「うん。てか竜輝も食えって。俺だけ食うのも申し訳ないし」
「いいの?」

 俺が首を縦に振ると、竜輝は新しくみかんの皮を剝き始めた。