よく見たら竜輝は紙袋を持っていた。食べきれなかった分は持ち帰るつもりのようである。

「なあ、忍達と一緒にいなくていいのか?」

 わざわざ俺を優先しなくても……。

「うん。今はれんくんと一緒がいい」
「そっか」

 俺がいいのか。……なんだかちょっとだけ優越感に浸れる気がする。
 来たバスに乗り込んで一番後ろの座席に座る。俺が向かって左の窓際の席に座ると、当然の如く竜輝は俺の隣に座って来た。

「はあ、疲れた……」

 絞り出すように竜輝が息を吐き出すと、なんと俺の左肩に顔を乗せてきたではないか。

「へっ?! ちょ、おい!」

 勿論頭の重みはあるんだけど気にならないと言うか、彼の顔や首から漂う汗のにおいが今朝の爽やかな香りのままで、なんというか……馨しい。いや、馨しいで合ってるのかは自信がないけど思いついた言葉がそれだった。

「おい、竜輝?」

 彼の腕を小突いたりゆすったりするけど反応しない。しかも完全に目閉じてるじゃねえか。
 おいおい嘘だろ……? 

「お~い、りゅうき、起きとけって~」
「ん~」

 言葉にならないうめき声に近い声が漏れるだけで、起きる様子はみられない。