◇ ◇ ◇

 体育祭も終わり、また騒がしい日常が戻ってきた。

「蓮也! りゅうくんが迎えに来たわよ!」

 リビングで朝飯を食っていると、玄関から戻ってきた母親の後ろに竜輝が顔を覗かせている。わっと目を輝かせている姿は小型犬みたいだ。

「れんくんおはよ〜!」
「おっす、おはよ」
「朝飯? ナゲット美味しそう!」
「これ弁当の残り〜」

 朝から俺の側で笑顔を見せている竜輝。母親の目の前なのもお構いなく、俺の頬に頬をくっつけてくる。

「もう、うっとおしいなぁ」

 これじゃ朝飯食えねえよ。でももっとされたい。

「でも好きでしょ?」

 にやりと挑戦的に笑う竜輝の目元には、可愛らしさとは真逆の色気が漂っているように見えた。これはかなわない。

「ああ、そりゃあな。だってお前だから」

 俺がご飯をかき込む様子を、竜輝はにまにまと満足そうに笑いながら見つめている。

(このワンコみてえな人気者を独占できるなんて、幸せ者だな俺は)

 うっとおしいけど、一緒にいたくて好きなのは変わらない。それがコイツ。