「ん? れんくんなんかいった?」

 首を少しだけ傾けながら尋ねて来る。まあこれくらいは本人に言ってもいいかな。

「成長したなって」
「まあね。中2くらいからガッて身長伸び始めてきたから」
「成長期ってやつ?」
「そうだと思う。……れんくんより背が高くなっちゃったね」

 おいおい自慢か~? とおちょくってやろうとしたけど、竜輝の目元がちょっと寂しそうだったのでやめておいた。170センチの俺より背が高くなったなんてそれこそサッカーだと有利なんだろうから、もっと誇ればいいのに。
 俺自身竜輝に身長負けたくない! って思うほどの負けず嫌いではないんだから。

「れんくんもなんかおとなっぽくなったね」
「そうかあ?」

 間延びした声で返事をする。俺が大人っぽくなった、ねえ……。

「前よりもかっこよくなったと思って」
「そう?」

 まあ竜輝に褒められるのは悪い気分ではないので、素直にサンキューなと受け取っておこう。

「惚れ直したよ」
「惚れ直したって?」

 惚れ直したって……なんかちょっと言葉のチョイスちがくね? もっとこうなんかあるだろ?

「……鈍いなあ」

 何か竜輝が言ったような気がしたけど、聞き取れなかった。まあ、なんていった? と聞き返すのも野暮だしこれ以上はやめておこう。
 そうこうしている間にバスは西洋寺前の停留所に停車し、バスを降りてからは50メートルくらい先にある学校へ徒歩で移動した。