4月の朝。晴れ晴れとした空から、太陽の光が優しく窓へと差し込んでいる。早速スズメと思われる鳥達が、一軒家の並ぶ住宅街でけたたましく鳴き始めていた。

 満開の桜が散りはじめている頃合いのこの時期は、特に鳥の鳴き声が目立つかも……とまだ夢見心地な脳みそで考えながら目を開けた。

「ふわぁ……もう朝かよ」

 俺、桜井蓮也(さくらいれんや)はモノトーンを基調とした自室のベッドの上で目を覚ました。昨日は友人と夜遅くまでオンラインゲームに取り組んでいたせいか、まだ眠たい。

「れんやーー! 朝ごはん出来てるわよ〜!」
「はいはいおかん、今行くから〜」

 高校3年になったばかりの俺の部屋には、プリントや参考書などがあちこちに散らかっている。そろそろ片付けないとまたおかんにグチグチ言われるな……と頭を掻きながら制服に着替えた。
 重い足取りのまま階段を降りると、マッシュルームカットの小柄な母親がエプロンを巻いて、キッチンでせわしなく動いているのが見える。

「はよーー」
「蓮也、先顔洗ってきなさい。ちゃんと髪も梳いて」
「あいあい」

 ピンポーン

 いきなりインターホンが鳴る音が聞こえたもんだから、ギャグマンガみたいに肩をびくつかせてしまった。なんだよこんな時間に。おかんが通販で化粧品でも頼んでたのか?

「誰かしらねえ……お母さんが出るから、アンタは顔洗ってきなさい」
「うん~」

 俺が洗面台へとたどり着いた瞬間、まあっ! と母親が大きな声を上げたのが聞こえてきた。