「じゃあ全員揃ったところで」
テーブルの真ん中にいる中国くんが手をパンッと合わせる。
「いただきます!」
辛いものが大好きな『タイくん』が鍋の中を覗き込む。
「カレーですか。美味しそうですね。タイ()ではแกงไตปลา(ゲーンタイプラー)という海老(えび)のカレーが有名ですよ」
「菜羽が提案してくれたんだ」
コップを並べてくれた韓国くんも何だか嬉しそうだ。
「さーてみんな、カレーは僕がよそってあげるからね♡」
ロシアくんが立ち上がって、カレーの鍋をお玉でぐるぐるかき混ぜる。
まずはフランスくんがお皿を渡す。
「これ、何カレー?」
「菜羽ちゃんの素晴らしい提案だよ」
「菜羽、おめーが紹介しろある」
ロシアくんと中国くんに促がされ、私はギクッとする。
「、、、闇カレーです」
「闇、、、ですか」
少し日本くんの声が低く聞こえる。
「えーっと、、、スーパーでどの具材を買うのか喧嘩になって、カレーなら煮込んじゃえば何とかなるかなって、、、」
私の申し訳ない言い訳にみんなごくりと喉を鳴らす。
「ってことは、中に中国、イタリア、ロシアの特産品が入ってるのか。イタリアはパスタ、、、とか?」
「パスタをカレーに入れる訳ないじゃん」
「待て、その包丁を置け。一旦話し合おう」
イギリスくんに包丁を向けるイタリアくん。
「中国なんか何入れたのか想像つかないんですけど!?」
「ロシアはウォッカ、、、は違うか。買えなくて落ち込んでたし」
「、、、菜羽さん」
「はい」
「今すぐインドくんとイギリスくんに謝りましょう」
笑顔なのに日本くんが怒ってる。声のトーンで分かる。
「スターゲージパイみたいに変な物は入れてないですよ!?」
「菜羽!?変な物とはなんだ、変な物とは!あれだって伝統料理なんだからな」
「それで何でニシンをぶっ刺すんだよ、、、」
引いたような目をするフランスくん。
「菜羽!このゲーム面白いから一緒にやろーぜ」
先に食べ終わっていた韓国くんがコントローラー片手にソファに座っている。
あ、韓国くんから後光が射して見える。
急いでカレーを食べて、食の言い合いをしているみんなから逃げるようにソファに行く。
「韓国くんはゲーム得意なの?」
「得意中の得意説出てる〜!」
それから三十分程、韓国くんと一緒にゲームした。趣味はネトゲとドラマ鑑賞らしい。韓国ドラマは普通に百話くらい超えるということを聞いた。
「あとキムチも好きだな〜」
曰く、韓国の天気予報では十一月から十二月にかけて、キムチ漬けに適した時期を知らせるキムジャン前線が発表されるほど、冬の一大行事とのこと。
それからタイくんも交えて辛い物の話をした。私は辛い物は全然食べられないので、聞くだけ。
韓国くんはキムチを、タイくんはソムタムという名前のサラダをお互いに勧めていた。