エピローグ

「潤、行こう」
 潤は晃と共に駅で春野を見送った。

 晃と歩いてマンションに戻っている。いつの間にか冬本番で風が冷たい。
「コンビニで飲み物買おう」
「寒いから温かいやつがいいな」

 コンビニに入ると温かい飲料コーナーで紅茶が目についた。潤がCMしている紅茶だ。晃と微笑み合ってそれを手に取った。
 晃と出会って潤の人生は大きく変わった。苦しかった時期もある。でも分かり合えて、隣で支え合う相手になっている。
 晃も潤と会って大きく変わっている。

 隣を見上げて、優しい気持ちが潤を満たした。手の中のペットボトルの温かさが心まで染みこむようだ。
(きっと幸せってこんな感じを言うのかな)
 そんな事を考えて、くすぐったくなり潤の頬が緩んだ。途端に吹き抜ける冬風に「さむっ」と震える。

「ほら、潤」
 そっと肩を抱き寄せられて、潤の頬に温かいペットボトルが添えられる。

「もっと温めて!」
 ふざけて潤から抱きついて声を出して笑った。

「潤。ほら、危ないって」
 晃も楽しそうに笑う。

「だから、寒いんだ」
 抱き着いてもびくともしない晃に安心感がある。晃は、もう大丈夫だ。

「コウ、帰ったら連弾しよう」
「いいね。エチュードでいい?」
「もちろん」
 微笑み合って一緒に歩く。二人で手をつなぎ、これからもずっと、一緒に。
    <完>