長短は、気が長い長さんと気短な短七二人の男のお噺だ。二人は、気性は真逆だがなぜか気の合う、子ども頃からの遊び友達だ。
 ある日、長さんが短七の家へやって来て、饅頭を食べたり、煙草をのんだりしていたら……という噺。
 聴けば聴くほど、のめり込まされる。
 長さんの、のんびりした語り口。短七の、きっぷの良い早口。
 短七が出した饅頭を、長さんがもぐもぐやる。その食べるのの遅いのに、短七がいらいらして、饅頭を奪い取り自分でパクリといく。
 長さんが煙草を吸おうと、煙管に火をつけようとするが中々つかない。短七が、馬鹿野郎と言って、煙管のつけ方を指南する。
 落ちは、短七が何度目か煙草を吸った時の火の玉が袖口からすぽっと中に入ってしまう。長さんが短七に尋ねる。

 「これで短七つぁんは、気が短いから、人に物を教わったりするのは嫌えだろうね」
 「ああ、大嫌えだ」
 「あたしが、教えても、怒るかい?」
 「おめえと俺とは子供のころからの友達だ。悪いとこがあったら教えてくれ。怒らねえから」
 「ほんとに、怒らないかい? そんなら、言うけどね、さっき、短七つぁんが何度も煙草を威勢よくポンとはたいたろう」

 長さんがポンと手を叩く。

 「その一つが煙草盆の中に入らないで、左の袖口にすぽっと入っちまいやがって……煙がモクモク出て来て、だいぶ燃え出したようだよ。ことによったら、そりゃあ、消したほうが……」
 「ああー!ことによらなくたっていいんだよ!何だって早く教えねえんだ!見ろ、こんなに焼けっ焦がしの穴が出来たじゃねえか、馬鹿野郎!」
 「ほおら見ねえ、そんなに怒るじゃあねえか。だから教えねえほうがよかった」

 噺はそこで終わった。
 ふっと息をついて、十二が深呼吸する。面白かった。
 のんびりした長さんのセリフは、聞いていて印象に残り覚えやすそうだった。
 短七の気が短いのはちょっと怖いくらいだったが、何となく、この二人、気が合うんだなあと、見聞きしていて思った。

 (性格が合うから仲がいいって話じゃないんだな。性格が違うから、お互いを好きになるってこともあるんだ)

 そう言うことって、現実でもある。と思いながら、じんわりと余韻に浸っていると、雨水が声をかけてきた。

 「どうだ?これを覚えるんだ。半月くらいやるから、やってみて」

 十二は、目を輝かせてうなずいた。雨水が続ける。

 「うん。部活の最中は俺が教える。動画をシェアするから、家に帰ってもそれを見て覚えてくれ。覚え方は、書いても声に出して暗唱しても、自分のやりやすい方でいい」
 「やってみます」
 「よし、頑張れ。じゃあ、個室に行こう。ここでは気が散る」
 「えっ!?」

 十二は声を上げた。マンツーマンでやるとは思わなかった。

 「頑張ってなー」
 「いってらっしゃい」

 福々とパーリィの二人が手を振る。十二は雨水のあとについて、個室へと連れられていった。