「だから────“親友”なんだね」
「うん。少なくとも俺はそう思ってる」
莉久のことだから、きっと彼も同じだろう。
西垣くんを簡単に見放したり諦めたりしない。
「だから、謝りにいこうとしたんだ。あの夜、直接言わなきゃと思って、あいつの家に行こうとしてたんだけど」
「……もしかして、そのときに莉久を見つけた?」
はっと思い至って尋ねると、果たして首肯が返ってくる。
USBメモリを回収したあと、その足で莉久の家へ行こうとした。
恐らく目撃証言というのはこのタイミングなのだろう。
だから、自宅と反対方向へ向かう西垣くんの姿が目撃されていたんだ。
その道中で、倒れている莉久を発見して通報した。
そういうことなら辻褄が合う。
事件後、打って変わって真面目で方正になったのは、莉久との間でそんなやり取りがあったからだったのかもしれない。
こうなったからこそ、いっそう彼に言われたことが響いて心を入れ替えた。
莉久が目を覚ましたとき、がっかりさせないように。
「じゃあ、藤井さんとのことは? 西垣くんが会いたがってたみたいなこと聞いたけど」
「それは……紗良ちゃんに免許証のこと聞いたから」
彼はどこか言いづらそうに答える。
「どういうこと?」
「実は、俺もちょうど免許証なくしてて。もしかしたら、藤井さんが回収したやつが俺のかもって思ったから」
「そうだったんだ……。じゃあバイクに乗らなくなってたのも、本当はそれが理由なんだね」
「うん……乗れなかったんだよ」
“免許不携帯”という違反そのものより、それが露呈してからの追及を恐れたんじゃないだろうか。
下手に捕まると、莉久の事件との関連を見出して詮索されかねない。
疑われたくない、という気持ちがずっと根底にあったから、悪目立ちするような行動を控えていたのだろう。
ふらふらと遊び歩いていた彼が、それこそ落とすか忘れるかで紛失した免許証を、莉久が拾っている可能性は確かにあった。
それが藤井さんの手に渡ったことで、彼女に追い詰められるか脅されるかという事態を危惧した西垣くんは、だから藤井さんに直接、免許証のことを確かめようとしたんだ。
だけど、彼女が回収した免許証は西垣くんのものではなかったはず。
彼が真相を突き止めるべく躍起になっていたのは“莉久のため”という思いと、自分自身の潔白を証明するためという理由があったのだろう。
「でも、誓って俺じゃないから。莉久を襲ったのも、藤井さんが庇ってる相手も」
「……そうだね、西垣くんはちがう。わたしは信じるよ」
迷いなく頷いてみせると、彼は一瞬、呆気に取られたようだった。
信じるにしてもわたしがここまで潔いとは思わなかったみたい。


