「お菓子くれないならいたずらしちゃうぞ、水無瀬クン」
屋上で昼飯を食べている時、御子柴が突然そんなことを言い出した。
ああ、そうか、ハロウィンか。俺は購買の袋からがさごそと飴を取り出した。
「はい、どうぞ」
「……なんで持ってんの、お菓子。っていうか、のど飴?」
「昨日、寝てる間に乾燥したのかちょっと喉がいがいがしてて。昼飯と一緒に買った」
「のど飴ってお菓子判定?」
「飴なんだからお菓子だろ」
俺は個包装の袋を開けて、その小さな飴をひょいっと口に入れた。すうっとした清涼感が、違和感のある喉に広がって気持ちいい。
「いたずらさせてくれよ……」
不承不承といった様子で、御子柴ものど飴を舐めている。俺は小首を傾げた。
「いつも思うけど、ハロウィンの『いたずら』ってどの程度のいたずらなんだろうな」
「んー、くすぐるとか? やっていい?」
「お菓子やったんだからするな」
破られたのど飴の袋を指差す。すると御子柴はあっと声を上げた。
「俺はお菓子を持っていません」
「あ、そう」
「だからいたずらしてもいいよ」
……そんなぐっと親指を立てられても。
別にいいです、と断ろうとしたが、ふと思い立った。
御子柴に真正面から向き合い、両手をその頬に伸ばす。
「んむ?」
頬を掴まれたり、押しつぶされたり、上下左右に伸ばしたりしてみる。さらに眉間を上下させて、情けない顔風と怒った顔風を繰り返したりもしてみた。その度に御子柴はんむんむ言っている。
ややあって、俺は御子柴から手を離し、呆れ返る。
「……何しても顔面が崩れない……」
変顔というより、イケメンがちょっと変な顔してる程度に留まってしまう。なんだこいつ、面が頑固すぎる。
「いや、普通に変な顔になってただろ?」
鏡で見せてやりたい、と思いつつ、俺はのど飴を噛み砕いた。どうしても最後はもどかしくて噛み砕く癖がある。
納得いかない表情を浮かべていると、御子柴が愉快そうに笑った。
「水無瀬は俺の顔が好きだからな~、惚れた弱味ってやつか」
「……うるさいばか、言ってろ」
それ以上自分が何か変なことを言わないように、俺は次の飴を取り出して口の中に入れた。
屋上で昼飯を食べている時、御子柴が突然そんなことを言い出した。
ああ、そうか、ハロウィンか。俺は購買の袋からがさごそと飴を取り出した。
「はい、どうぞ」
「……なんで持ってんの、お菓子。っていうか、のど飴?」
「昨日、寝てる間に乾燥したのかちょっと喉がいがいがしてて。昼飯と一緒に買った」
「のど飴ってお菓子判定?」
「飴なんだからお菓子だろ」
俺は個包装の袋を開けて、その小さな飴をひょいっと口に入れた。すうっとした清涼感が、違和感のある喉に広がって気持ちいい。
「いたずらさせてくれよ……」
不承不承といった様子で、御子柴ものど飴を舐めている。俺は小首を傾げた。
「いつも思うけど、ハロウィンの『いたずら』ってどの程度のいたずらなんだろうな」
「んー、くすぐるとか? やっていい?」
「お菓子やったんだからするな」
破られたのど飴の袋を指差す。すると御子柴はあっと声を上げた。
「俺はお菓子を持っていません」
「あ、そう」
「だからいたずらしてもいいよ」
……そんなぐっと親指を立てられても。
別にいいです、と断ろうとしたが、ふと思い立った。
御子柴に真正面から向き合い、両手をその頬に伸ばす。
「んむ?」
頬を掴まれたり、押しつぶされたり、上下左右に伸ばしたりしてみる。さらに眉間を上下させて、情けない顔風と怒った顔風を繰り返したりもしてみた。その度に御子柴はんむんむ言っている。
ややあって、俺は御子柴から手を離し、呆れ返る。
「……何しても顔面が崩れない……」
変顔というより、イケメンがちょっと変な顔してる程度に留まってしまう。なんだこいつ、面が頑固すぎる。
「いや、普通に変な顔になってただろ?」
鏡で見せてやりたい、と思いつつ、俺はのど飴を噛み砕いた。どうしても最後はもどかしくて噛み砕く癖がある。
納得いかない表情を浮かべていると、御子柴が愉快そうに笑った。
「水無瀬は俺の顔が好きだからな~、惚れた弱味ってやつか」
「……うるさいばか、言ってろ」
それ以上自分が何か変なことを言わないように、俺は次の飴を取り出して口の中に入れた。



