この街が孤独だと感じる人と、僕は恋がしたい

「天気、気になる?」
 叔父さんに声をかけられて、俺は我に返る。また、外ばかり見ていた。
 ゆったりとした日曜の夕方。もうすぐ暮れる、空は薄曇りだ。
 発端は昼に夏海がサマータイムまで来たことだった。この間の清掃活動当番の日に、俺が楽しく過ごせるように協力すると言った言葉を守ってか、わざわざ誘いに来てくれたのだった。
「澄人! 流れ星見ねえ?」
 ほんとだったらいいとは思っていたけど、社交辞令かとも思っていたので、俺は相当びっくりした。びっくりしすぎてもう少しで、叔父さんが愛するアンティークのカップを落とすところだった。
 ふわふわした明るい髪と、ふわふわした笑顔。それを見ただけで心臓が早くなる。嬉しいのにどうしていいのかわからなくて、思わず二階に逃げたくなった。
 そんな俺の心の中などまったく知らない夏海は、叔父さんにおすすめを聞くと、カウンターでコーヒーを注文した。グアテマラ。
「澄人の叔父さんのお店、カッコいいよな」
 コーヒーにミルクをたっぷりと入れて話し出した夏海によれば、今日は数年に一度の流星群が見られる夜らしい。流星群自体は深夜に近い時間だったので、叔父さんの店の夜の営業を手伝ってからと言って、いったん解散になった。
「気になってるなら、今日は休みでいいよ。降っても晴れても遊んでおいで」
 叔父さんが微笑みながら俺に言う。魅力的な申し出だった。
 正直に言えば、俺の心は、さっきから数時間後に飛んでばっかりだ。
 そもそも俺がこの街に来るまで叔父さんはひとりで仕事をしていたんだし、自分がいなくても大丈夫なのだろうけど。
「でも、やるって言ったことだし」
 俺が言うと、叔父さんは優しい笑顔で俺を見てきた。
「澄人くん。僕はね、君に友達ができたことが嬉しいよ。僕の手伝いはいつでもできる。だけど、友達と一緒に過ごせる日は思ったより多くないものだよ。だからそういう日を大切にしてほしい」
「叔父さん」
 胸がじわっと暖かくなる。普通の雇い主だったらそんなことは言わないだろう。叔父さんは俺に友達がいないことをわかっていて、気にしてくれている。
「えーっと、どこだったかな。よかったら、これも使っておいで」
 叔父さんがガサガサと引き出しを探って、花火の入っている袋を出してきた。
「去年の残りだから、ちゃんと使えるかわからないけど。早いうちに使った方がいいし、あげるよ」
 夏海と花火。
 それを想像すると、胸がときめいた。やりたい。
「……いいの?」
「澄人くん。たまには大人に甘えたり、わがままを言いなよ。まだ高校生なんだから」
 そう言うと、花火が手渡される。俺は自然に微笑んでいた。