望月ふとん店に行くと、つまらなそうな顔をしている夏海が店番をしていた。叔父さんから手渡された花火とサンドイッチがあることを伝えると、奥に引っ込んでまた戻ってくる。母親が店番を変わってくれるようだった。
夏海の都合がついてよかった。
夏海のところでバケツを借りて、ふたりでビーチまで坂を下りる。最後の太陽の光が海に反射してきらめいていた。
雨が降るかどうかという日曜日の夕方だから、日中よりは人が少ない。それでもカップルや友達っぽい人たちがちらほらいて、俺たちはできるだけ人の少ないところを探した。
「今年初の花火かも。澄人の叔父さん、気が利くなぁ」
そう言いながら、夏海はスマートフォンで花火に火をつける俺の動画を撮っている。夏海はさっきから、俺の動画ばかり撮っていた。
本音を言うと、レンズを向けられて恥ずかしい。でも、夏海は映画の撮影をしたいのだろう。そう思うと嫌がる気にはなれなかった。少しだけ、はにかんで夏海を見返す。
「いいな、イケメンの笑顔だ」
そう言った夏海の言葉に、ドキリとする。俺は笑って動悸をごまかした。
「なに、言ってるんだか」
「ほんとだよ。澄人、画面映えすっからな。背も高いし、イケメン三倍増し」
冗談っぽい口調でも、褒められたら嬉しい。
とりあえず長身の遺伝子をよこしたことについては、親に感謝してもいい気分だ。電話には出る気にはならないけど。
「あの、さ。もし夏海が映画を撮りたいなら、俺出てもいいけど」
「え?」
夏海がきょとんとした顔をする。突然だっただろうか。
kaiからは繰り返し聞いていたけれど、こっちの夏海は、映画監督になりたいと俺に言ったことはない。俺は慌てて言葉を続けた。
「いや、映画が好きみたいだし、こうやって動画を撮ってるし、夏海は映画を撮りたいのかなって思って。まあ俺はたいして喋れるわけでもないし、俳優って柄じゃないけど」
「えっ全然いいよ! 喋るの嫌なら台詞ない話とかにしてもいいし。撮りたい撮りたい! あのさ、オレほんとは映画を撮って、映画監督になりたいんだ。夢みたいな話なんだけどさ」
知ってる。
嬉しそうに言葉を重ねる夏海の表情を、俺も嬉しい気持ちで見守った。今までの自分だったら、自分から俳優に名乗り出るなんてありえない。
でもそう言ったのは、kaiが出演してくれる人がいないと手紙に書いていたからだ。俺が彼の力になれることなんて、他には思いつかない。
「演技とか、やったことないし、たいして役に立たないと思うけど。でも、応援したいから。期待しすぎるなよ」
「ありがとな!」
夏海が、さっきまで最後の太陽のかけらを受けていた海面のように、きらきらとした笑顔を向けてきた。まぶしい。
目が合うと照れてしまう。
「ほら、夏海も」
照れ隠しに俺が花火を差し出すと、夏海はスマホをズボンのポケットに入れて、渡されたそれを受け取った。
「うーん、青春って感じだなー」
花火を振り回しつつ、夏海が笑った。俺は思わず、そんな夏海に自分のスマホを向ける。
「あ、今オレのこと撮った?」
「さっきのお返し」
夏海がスマホを覗き込むように俺に近づいてきた。
俺はそれを防ぐように、さっさとスマホを自分のシャツの胸ポケットにしまった。夏海の笑顔の写真がほしかったなんて、ばれたら気まずいことこの上ない。
「変な顔じゃないよな?」
そう言ってさらにスマホを覗き込もうとシャツに顔を近づけてきた夏海の髪が、一瞬俺の頬に触れた。くすぐったい。
(う、わーーーー)
このまま、ぎゅっと夏海を抱き寄せたい。
俺はそんな衝動に駆られて空を仰いだ。だめだ、好きな人とって言ったのは自分だ。夏海にはそんなつもりはないのに。
俺はこれ以上彼の体のことを考えずにすむように、慌てて花火のことを考えた。
夏海の都合がついてよかった。
夏海のところでバケツを借りて、ふたりでビーチまで坂を下りる。最後の太陽の光が海に反射してきらめいていた。
雨が降るかどうかという日曜日の夕方だから、日中よりは人が少ない。それでもカップルや友達っぽい人たちがちらほらいて、俺たちはできるだけ人の少ないところを探した。
「今年初の花火かも。澄人の叔父さん、気が利くなぁ」
そう言いながら、夏海はスマートフォンで花火に火をつける俺の動画を撮っている。夏海はさっきから、俺の動画ばかり撮っていた。
本音を言うと、レンズを向けられて恥ずかしい。でも、夏海は映画の撮影をしたいのだろう。そう思うと嫌がる気にはなれなかった。少しだけ、はにかんで夏海を見返す。
「いいな、イケメンの笑顔だ」
そう言った夏海の言葉に、ドキリとする。俺は笑って動悸をごまかした。
「なに、言ってるんだか」
「ほんとだよ。澄人、画面映えすっからな。背も高いし、イケメン三倍増し」
冗談っぽい口調でも、褒められたら嬉しい。
とりあえず長身の遺伝子をよこしたことについては、親に感謝してもいい気分だ。電話には出る気にはならないけど。
「あの、さ。もし夏海が映画を撮りたいなら、俺出てもいいけど」
「え?」
夏海がきょとんとした顔をする。突然だっただろうか。
kaiからは繰り返し聞いていたけれど、こっちの夏海は、映画監督になりたいと俺に言ったことはない。俺は慌てて言葉を続けた。
「いや、映画が好きみたいだし、こうやって動画を撮ってるし、夏海は映画を撮りたいのかなって思って。まあ俺はたいして喋れるわけでもないし、俳優って柄じゃないけど」
「えっ全然いいよ! 喋るの嫌なら台詞ない話とかにしてもいいし。撮りたい撮りたい! あのさ、オレほんとは映画を撮って、映画監督になりたいんだ。夢みたいな話なんだけどさ」
知ってる。
嬉しそうに言葉を重ねる夏海の表情を、俺も嬉しい気持ちで見守った。今までの自分だったら、自分から俳優に名乗り出るなんてありえない。
でもそう言ったのは、kaiが出演してくれる人がいないと手紙に書いていたからだ。俺が彼の力になれることなんて、他には思いつかない。
「演技とか、やったことないし、たいして役に立たないと思うけど。でも、応援したいから。期待しすぎるなよ」
「ありがとな!」
夏海が、さっきまで最後の太陽のかけらを受けていた海面のように、きらきらとした笑顔を向けてきた。まぶしい。
目が合うと照れてしまう。
「ほら、夏海も」
照れ隠しに俺が花火を差し出すと、夏海はスマホをズボンのポケットに入れて、渡されたそれを受け取った。
「うーん、青春って感じだなー」
花火を振り回しつつ、夏海が笑った。俺は思わず、そんな夏海に自分のスマホを向ける。
「あ、今オレのこと撮った?」
「さっきのお返し」
夏海がスマホを覗き込むように俺に近づいてきた。
俺はそれを防ぐように、さっさとスマホを自分のシャツの胸ポケットにしまった。夏海の笑顔の写真がほしかったなんて、ばれたら気まずいことこの上ない。
「変な顔じゃないよな?」
そう言ってさらにスマホを覗き込もうとシャツに顔を近づけてきた夏海の髪が、一瞬俺の頬に触れた。くすぐったい。
(う、わーーーー)
このまま、ぎゅっと夏海を抱き寄せたい。
俺はそんな衝動に駆られて空を仰いだ。だめだ、好きな人とって言ったのは自分だ。夏海にはそんなつもりはないのに。
俺はこれ以上彼の体のことを考えずにすむように、慌てて花火のことを考えた。
