22時ごろ投稿されたインスタのリール。
神宮寺の別垢だと思われるそれには、紗英とうちのMasaコーチが抱き合うようなシーンが映し出されていた。
暗がりの部室。音声はなし。妄想をかきたてる禁断の恋?
誤爆風にあげられた短い動画は朝には削除されていたけど、日々アンテナを張ってる部員の目に留まるには十分。
思惑通り、翌日のダンス部はその噂でもちきりだった。
「ヤバくない? 顔が微妙に隠れてたけど、ピンクのシューズ映ってた。あれって……だよね?」
「ってか、最近よく呼ばれてたじゃん。なんかコソコソ怪しいなぁって思ってたんだよ」
紗英とコーチが本当のところどうなのかなんて知らない。
でも私が見た限り、神宮寺の撮ったあの動画は、そんな甘い二人を映したものなんかじゃなかった。
部室のドアは開いてたし、会話はダンスについての質問。そんな中で紗英がうっかり躓いて、コーチが彼女の下敷きになっただけだ。床に散乱している部員の私物のせいで、あの場所は転びやすい。フルで観れば面白みのない状況だって分かる。
それを神宮寺はうまく切り取って、スキャンダラスな匂いのする動画に見せかけた。
一定の成果はあったみたい?
昨日一瞬だけ盛り上がった私と神宮寺の恋愛疑惑から、より鮮烈な方に標的は移動したようだった。
冷やかしの目とヒソヒソ声で私の集中も途切れる中、紗英は体育室の隅で一人黙々と課題曲を踊っていた。
いくら天然な彼女でもこの噂を知らないはずはないし、多少は精神的ダメージを与えられたんじゃって期待したのに。
乱れた動きをするわけでもなく、相変わらず表現を重視した美しいダンスは健在。その堂々たる輝きに陰りは微塵も見られない。
気になるでしょ? モヤモヤするでしょ? 焦るし不安だし、オーディションに影響するかもって怖くてたまらないはずじゃん。
それなのにどうして、そんなふうに生き生きと踊っていられるの?
私は絶望した。
紗英がくすんでいく姿を渇望したのに、むしろどんどん色褪せていってるのは私の方だった。
生き甲斐だったはずのダンスが、なんかもう、ぜんぜん楽しくない――。
*
部活が終わって、昇降口を出る。藍色の空には銀色のキレイな月。頭上で煌めくそれを睨みつけて歩くくらい、私は今、猛烈にイライラしていた。唯一のものを失ったような焦燥感で息苦しくてたまらない。
数メートル先――校門の前、長い手足を持て余すように神宮寺が立っているのが見えた。
私を待っていたのか目が合うと甘ったるく笑んで、犬みたいにこっちに駆け寄ってくる。今日のことを褒められたいオーラ全開なのが、よけいに私の神経を逆撫でする。
「お疲れ様です。えっと……りりあ先輩、駅まで一緒に帰りませんか?」
何でまだ距離をつめて来ようとするんだろう。私とどうにかなりたいとでも思ってるわけ? この大事な時期に?
結局こいつの策略は、紗英を心理的に揺さぶることが出来なかった。これ以上、関わる必要もない。
立ち止まるのさえ煩わしくて黙って横を通り過ぎる。
「ちょっ……待って下さい! 何で?」
無視されたのが心外だったのか、神宮寺はムキになって私の前に回り込み、進路を塞いだ。
「どいてよ」
「あ~、昨日の今日でそれはなくないすか? 無理なら無理って、ちゃんと言って下さい。だって俺と先輩は……」
私たちが何だっていうんだろう。もともと気安く会話するような仲じゃなかった。
あのシューズの一件で不本意にも繋がったとはいえ、脅されて、服従して、怯えながら苛立って。睨んで、怒って、軽蔑しながらも期待して。
関係はより形容しがたいものとなった。私たちの間に生まれたものなんて何もない。
神宮寺といると『完璧なりりあ』の仮面がどんどん剥がれていくの。私が望むのはただ、初期化。
「もう二度と絡んでこないで」
冷たく突き放すと、神宮寺はひどく傷ついたカオをした。肩を丸めて下唇をギュッと噛み、こちらに伸ばしかけてきた手は何かを諦めたように空を舞う。
その姿に胸が一瞬ズキンと痛んだ。
彼が私に抱く感情が何なのかなんて知らないし、興味もない。こんな最低な男、どうだってイイと思っていたはずなのに……。
冷たい夜風が頬をなでて長い髪をさらう中、私は逃げるようにその場を後にした。
*
もう、気分は最悪だ。
練習する気もおきないし、ご飯もお風呂もキャンセルしてただただ布団に潜りこみたい。
そんなふうに心がグチャグチャにかき乱されている私に、その夜、追い打ちをかけるような出来事が起こった。
「ねぇ、りりあ。今回のオーディション、あなた大丈夫なの?」
帰宅してすぐのリビングルーム。
私がただいまを告げるや否や、キッチンにいたママがわざわざ料理を中断して歩み寄ってくる。
「大丈夫って、何が?」
部活リュックを乱暴に床に投げて、目も見ずにわざと聞き返した。明らかに不機嫌な態度をとってみせたのに、ママは娘の異変には気づかない。
「菜々美ちゃんのママからさっきラインが来たんだけど、今回の課題曲、りりあよりも上手く踊れる子がいるんだって?」
紗英の存在がバレたんだ。胃がキリキリする。
「去年の大会に、そんな目立つ子いたかしら?」
「……あのね。最近、急成長してる子がいるの」
怪訝そうな顔で首を傾げるママに、私はおずおずと説明する。声が乾く。
「アイソレとか基礎はぜんぜんなんだけど、リズム取りとか表現力がずば抜けてて」
「ふ~ん、何年くらいやってる子なの?」
「……部活でダンスを始めたって言ってたから、まだ二年くらいかな」
「あら、なんだ。そうなの?」
案の定、ママはパッと表情を明るくした。
「だったら心配ないわね。りりあは十年以上も頑張ってるんだから」
「……」
ダンスをやったことのないママは知らない。自信につながるはずの十年っていう経験が、私の重荷となって逆に足を引っ張っている現実を。
ママは昔から一番の応援者。特にダンスに関しては時間もお金も惜しみなく使ってくれて、すごく感謝してる。だから期待に応えたいっていつも思ってた。
でもね、ダンスは年数だけじゃ勝てないの。どんなに長く努力しても越えられない壁があるの。私は今、それにぶち当たってる。
限界は自分で決めちゃいけないって知ってても、弱音を吐かずにはいられないんだ。
「ママ、ごめんね……。次のオーディション、センターは無理かもしれない」
泣き言は言うまいとずっと気持ちを抑えこんできた。でも口にしたら我慢できなくなって、咳をきったようにボロボロと涙がこぼれ落ちる。
私なら大丈夫、もっと頑張れる、やってやる。そんなダンスへの前向きな気持ちは、いつからかライバルを蹴落としたいに変わってしまった。どす黒い感情を常に腹に抱えて、周囲を傷つけることに躊躇いがなくなって。
もうぜんぜん『完璧で理想のりりあ』なんかじゃない。こんな最低な自分じゃ、ステージの中央に立つなんてあり得ないの。
「りりあ……?」
恥ずかしげもなく泣きじゃくる私を、ママはどんな気持ちで見つめてたんだろう。
安心したい。許されたい。重すぎる期待から解放されたい。
そう願って初めて漏らした弱音は、ママの心には1ミリも届かなかった。
「だったら別に辞めてもいいのよ」
穏やかに微笑むママは、そんな残酷な言葉を口にする。
「え……何でそうなるの?」
「だってもう上を目指せないってことでしょ? だったら中途半端に部活を続けるのは、りりあが辛いと思うから」
「中途半端って……」
「時間ももったいないし、このまま受験にシフトして新たな目標でも作ったら? ダンスは大学に入ってからも再開できるし」
「……」
これは慰めの言葉なんだろうか。
違う。そんな提案が欲しいわけじゃない。ただもっと、今の私に寄り添って欲しいだけなの。
センターじゃなくてもいいよって、みんなと楽しんで大好きなダンスを頑張ってねって。プレッシャーを軽くして欲しかっただけなのに……。
ああ、やっぱりダメなんだね。”完璧なりりあ”じゃないと、ママにとっても価値はないんだ。
「……辛いって思うのは私じゃなくて、ママの方じゃん」
「え?」
「私がどれだけ夏の大会のために頑張ってるか、出られるのを楽しみにしてるか知ってるくせに。センターじゃなきゃ観る価値もないの?」
「ママは別にそういうつもりじゃ……」
「そう言ってるのと同じじゃん!」
どうやっても分かり合えない怒りと悲しみで、高ぶった感情のまま泣き叫んだ。
ママは呆れた顔をして、はぁと小さくため息をつく。
「どうしたのよ、急に。りりあらしくないわよ」
ほら、やっぱりママは私の表の顔しか見てない。感情ぐちゃぐちゃにして無様に泣き叫ぶのも私なんだよ? ライバルに負けるのが怖くて蹴落とそうと画策する汚いのも私なの。
もうダメだ。これ以上、ママの”理想の娘”ではいられそうにない。
「ママのせいでダンスが純粋に楽しめないの! ママのせいでこうなったの! 上とか下とか歴とか立ち位置とか、もうそんなのどうだっていい! ママの価値観を押しつけないでよ‼」
何度も飲みこんできた言葉を、ここぞとばかりに喚き散らす。
そして全部吐き出して、やっと気づいたの。
焦りと妬みで真っ黒になりながら笑顔の仮面をはりつけて踊るより、心から楽しんで踊りたい。
そうすればステージのどこに立ったとしても、センター級に輝くんじゃないかって。
神宮寺の別垢だと思われるそれには、紗英とうちのMasaコーチが抱き合うようなシーンが映し出されていた。
暗がりの部室。音声はなし。妄想をかきたてる禁断の恋?
誤爆風にあげられた短い動画は朝には削除されていたけど、日々アンテナを張ってる部員の目に留まるには十分。
思惑通り、翌日のダンス部はその噂でもちきりだった。
「ヤバくない? 顔が微妙に隠れてたけど、ピンクのシューズ映ってた。あれって……だよね?」
「ってか、最近よく呼ばれてたじゃん。なんかコソコソ怪しいなぁって思ってたんだよ」
紗英とコーチが本当のところどうなのかなんて知らない。
でも私が見た限り、神宮寺の撮ったあの動画は、そんな甘い二人を映したものなんかじゃなかった。
部室のドアは開いてたし、会話はダンスについての質問。そんな中で紗英がうっかり躓いて、コーチが彼女の下敷きになっただけだ。床に散乱している部員の私物のせいで、あの場所は転びやすい。フルで観れば面白みのない状況だって分かる。
それを神宮寺はうまく切り取って、スキャンダラスな匂いのする動画に見せかけた。
一定の成果はあったみたい?
昨日一瞬だけ盛り上がった私と神宮寺の恋愛疑惑から、より鮮烈な方に標的は移動したようだった。
冷やかしの目とヒソヒソ声で私の集中も途切れる中、紗英は体育室の隅で一人黙々と課題曲を踊っていた。
いくら天然な彼女でもこの噂を知らないはずはないし、多少は精神的ダメージを与えられたんじゃって期待したのに。
乱れた動きをするわけでもなく、相変わらず表現を重視した美しいダンスは健在。その堂々たる輝きに陰りは微塵も見られない。
気になるでしょ? モヤモヤするでしょ? 焦るし不安だし、オーディションに影響するかもって怖くてたまらないはずじゃん。
それなのにどうして、そんなふうに生き生きと踊っていられるの?
私は絶望した。
紗英がくすんでいく姿を渇望したのに、むしろどんどん色褪せていってるのは私の方だった。
生き甲斐だったはずのダンスが、なんかもう、ぜんぜん楽しくない――。
*
部活が終わって、昇降口を出る。藍色の空には銀色のキレイな月。頭上で煌めくそれを睨みつけて歩くくらい、私は今、猛烈にイライラしていた。唯一のものを失ったような焦燥感で息苦しくてたまらない。
数メートル先――校門の前、長い手足を持て余すように神宮寺が立っているのが見えた。
私を待っていたのか目が合うと甘ったるく笑んで、犬みたいにこっちに駆け寄ってくる。今日のことを褒められたいオーラ全開なのが、よけいに私の神経を逆撫でする。
「お疲れ様です。えっと……りりあ先輩、駅まで一緒に帰りませんか?」
何でまだ距離をつめて来ようとするんだろう。私とどうにかなりたいとでも思ってるわけ? この大事な時期に?
結局こいつの策略は、紗英を心理的に揺さぶることが出来なかった。これ以上、関わる必要もない。
立ち止まるのさえ煩わしくて黙って横を通り過ぎる。
「ちょっ……待って下さい! 何で?」
無視されたのが心外だったのか、神宮寺はムキになって私の前に回り込み、進路を塞いだ。
「どいてよ」
「あ~、昨日の今日でそれはなくないすか? 無理なら無理って、ちゃんと言って下さい。だって俺と先輩は……」
私たちが何だっていうんだろう。もともと気安く会話するような仲じゃなかった。
あのシューズの一件で不本意にも繋がったとはいえ、脅されて、服従して、怯えながら苛立って。睨んで、怒って、軽蔑しながらも期待して。
関係はより形容しがたいものとなった。私たちの間に生まれたものなんて何もない。
神宮寺といると『完璧なりりあ』の仮面がどんどん剥がれていくの。私が望むのはただ、初期化。
「もう二度と絡んでこないで」
冷たく突き放すと、神宮寺はひどく傷ついたカオをした。肩を丸めて下唇をギュッと噛み、こちらに伸ばしかけてきた手は何かを諦めたように空を舞う。
その姿に胸が一瞬ズキンと痛んだ。
彼が私に抱く感情が何なのかなんて知らないし、興味もない。こんな最低な男、どうだってイイと思っていたはずなのに……。
冷たい夜風が頬をなでて長い髪をさらう中、私は逃げるようにその場を後にした。
*
もう、気分は最悪だ。
練習する気もおきないし、ご飯もお風呂もキャンセルしてただただ布団に潜りこみたい。
そんなふうに心がグチャグチャにかき乱されている私に、その夜、追い打ちをかけるような出来事が起こった。
「ねぇ、りりあ。今回のオーディション、あなた大丈夫なの?」
帰宅してすぐのリビングルーム。
私がただいまを告げるや否や、キッチンにいたママがわざわざ料理を中断して歩み寄ってくる。
「大丈夫って、何が?」
部活リュックを乱暴に床に投げて、目も見ずにわざと聞き返した。明らかに不機嫌な態度をとってみせたのに、ママは娘の異変には気づかない。
「菜々美ちゃんのママからさっきラインが来たんだけど、今回の課題曲、りりあよりも上手く踊れる子がいるんだって?」
紗英の存在がバレたんだ。胃がキリキリする。
「去年の大会に、そんな目立つ子いたかしら?」
「……あのね。最近、急成長してる子がいるの」
怪訝そうな顔で首を傾げるママに、私はおずおずと説明する。声が乾く。
「アイソレとか基礎はぜんぜんなんだけど、リズム取りとか表現力がずば抜けてて」
「ふ~ん、何年くらいやってる子なの?」
「……部活でダンスを始めたって言ってたから、まだ二年くらいかな」
「あら、なんだ。そうなの?」
案の定、ママはパッと表情を明るくした。
「だったら心配ないわね。りりあは十年以上も頑張ってるんだから」
「……」
ダンスをやったことのないママは知らない。自信につながるはずの十年っていう経験が、私の重荷となって逆に足を引っ張っている現実を。
ママは昔から一番の応援者。特にダンスに関しては時間もお金も惜しみなく使ってくれて、すごく感謝してる。だから期待に応えたいっていつも思ってた。
でもね、ダンスは年数だけじゃ勝てないの。どんなに長く努力しても越えられない壁があるの。私は今、それにぶち当たってる。
限界は自分で決めちゃいけないって知ってても、弱音を吐かずにはいられないんだ。
「ママ、ごめんね……。次のオーディション、センターは無理かもしれない」
泣き言は言うまいとずっと気持ちを抑えこんできた。でも口にしたら我慢できなくなって、咳をきったようにボロボロと涙がこぼれ落ちる。
私なら大丈夫、もっと頑張れる、やってやる。そんなダンスへの前向きな気持ちは、いつからかライバルを蹴落としたいに変わってしまった。どす黒い感情を常に腹に抱えて、周囲を傷つけることに躊躇いがなくなって。
もうぜんぜん『完璧で理想のりりあ』なんかじゃない。こんな最低な自分じゃ、ステージの中央に立つなんてあり得ないの。
「りりあ……?」
恥ずかしげもなく泣きじゃくる私を、ママはどんな気持ちで見つめてたんだろう。
安心したい。許されたい。重すぎる期待から解放されたい。
そう願って初めて漏らした弱音は、ママの心には1ミリも届かなかった。
「だったら別に辞めてもいいのよ」
穏やかに微笑むママは、そんな残酷な言葉を口にする。
「え……何でそうなるの?」
「だってもう上を目指せないってことでしょ? だったら中途半端に部活を続けるのは、りりあが辛いと思うから」
「中途半端って……」
「時間ももったいないし、このまま受験にシフトして新たな目標でも作ったら? ダンスは大学に入ってからも再開できるし」
「……」
これは慰めの言葉なんだろうか。
違う。そんな提案が欲しいわけじゃない。ただもっと、今の私に寄り添って欲しいだけなの。
センターじゃなくてもいいよって、みんなと楽しんで大好きなダンスを頑張ってねって。プレッシャーを軽くして欲しかっただけなのに……。
ああ、やっぱりダメなんだね。”完璧なりりあ”じゃないと、ママにとっても価値はないんだ。
「……辛いって思うのは私じゃなくて、ママの方じゃん」
「え?」
「私がどれだけ夏の大会のために頑張ってるか、出られるのを楽しみにしてるか知ってるくせに。センターじゃなきゃ観る価値もないの?」
「ママは別にそういうつもりじゃ……」
「そう言ってるのと同じじゃん!」
どうやっても分かり合えない怒りと悲しみで、高ぶった感情のまま泣き叫んだ。
ママは呆れた顔をして、はぁと小さくため息をつく。
「どうしたのよ、急に。りりあらしくないわよ」
ほら、やっぱりママは私の表の顔しか見てない。感情ぐちゃぐちゃにして無様に泣き叫ぶのも私なんだよ? ライバルに負けるのが怖くて蹴落とそうと画策する汚いのも私なの。
もうダメだ。これ以上、ママの”理想の娘”ではいられそうにない。
「ママのせいでダンスが純粋に楽しめないの! ママのせいでこうなったの! 上とか下とか歴とか立ち位置とか、もうそんなのどうだっていい! ママの価値観を押しつけないでよ‼」
何度も飲みこんできた言葉を、ここぞとばかりに喚き散らす。
そして全部吐き出して、やっと気づいたの。
焦りと妬みで真っ黒になりながら笑顔の仮面をはりつけて踊るより、心から楽しんで踊りたい。
そうすればステージのどこに立ったとしても、センター級に輝くんじゃないかって。



