「朝倉(あさくら)」


朝のホームルームが終わり、移動教室に向かうために教材の準備をしていると田沼先生が話しかけてきた。

嫌な予感がしながらも、顔を上げる。


「今日の放課後、クラスメイトを代表して学級委員の朝倉が鳴海の家にお線香を上げに行ってくれないか？もちろん俺も今日は会議があって無理なんだが、明日にでも伺おうと思ってるからその前にクラスメイトの朝倉が行ってやる方が鳴海も喜ぶと思うんだ」


私が行ったところで鳴海くんは100%喜ばないことは私が一番よく知っている。

…でも、私の答えは一つしかない。


「わかりました」

「ありがとうな。おまえが一番鳴海と関わってたし、やっぱり朝倉が一番最適だな」


田沼先生に曖昧に笑い返しながら、いつも学級委員だからと何かと鳴海くんのお世話をそっちが押し付けてきていただけでしょと心の中で呟く。


「澪(みお)。先生と何話してたの？」


扉の前で待ってくれていた高めのポニーテールが特徴の、神崎萌華(かんざきもか)が不思議そうに首を傾げてきた。


「鳴海くんの家にクラスメイトを代表してお線香を上げにいくように頼まれただけだよ」