具体的な相談をするために、東京美容支援開発の本社に再び出向いた。対応してくれたのは、前回と同じ営業部主任だった。検討事項をまとめた紙を渡して、説明をすると、すぐさま返事が返ってきた。

「ネット予約システムは月額5,000円で、クラウド型の会計システムは月額1万円で使用できます」

「ということは、毎月15,000円ですか……」

 夢丘の口からため息のような声が漏れた。損益計算が更に厳しくなることへの落胆のようだった。確かに、毎月の利益が15,000円減るのだから無理もないが、それでも導入によって夢丘の負担が減ることを考えると、適正な投資のように思われた。

「人を雇うことを考えたら安いもんだと思うよ。それに、困った時には東京美容支援開発さんがバックアップしてくれるのだから、安心して使えるしね」

「まあ、そうですけど……」

 まだ不安そうな表情が続いたが、ここで話を止めるわけにはいかない。次の質問に移った。

「賃料の件なのですが、当初3カ月間だけ月額10万円にしていただくことは可能でしょうか?」

「う~ん、どうでしょう。交渉はしてみますが、現時点ではなんとも言えないですね」

 過去にそういう交渉はしたことがないので、まったくわからないという。わからないことをこれ以上話し合っても仕方がないので、次の確認に移ることにした。

「契約にあたって付帯事項というのはありますか?」

 これにはすぐに返事が返ってきた。

「色々ありますが、特に重視されているのは、〈お客様とトラブルを起こさない〉ということです。それでも、万が一、トラブルが発生した場合は、責任を持って迅速に解決してもらいたい、ということになります」

 店のスペースを貸しているため、トラブルがあると店のイメージが傷つくことになるので、もしそれが続くようだと、契約を解除すると共に、損害賠償を請求することになるという。

「わかりました。それについては、お店にご迷惑をおかけしないように充分に注意を払って接客をしていきます」

 答えたのは夢丘だった。さっきまでの不安そうな表情は消えていた。それを見て安心したので、その他の確認事項に話を移した。その結果、
 ・契約における保証人は高彩がなること、
 ・保健所への美容所登録をおこなうこと
 ・個人事業として開業届を提出すること
 ・事業用の銀行口座を解説すること
 などを確認して、オーナーとの交渉を進めてもらうことにした。