どういうことだ?

 スマホを置いたあとも、社長の言った意味が頭の中にスーッと入ってこなかった。わけもわからないまま、スマホを見つめるしかなかった。

 10分ほどして、また電話がかかってきた。また社長かと思って恐る恐る通話をONにすると、違っていた。人事部長からだった。

「社長が明日から来てくれと言っておりますが、可能でしょうか?」

「えっ、どういうことでしょうか?」

 「あっ、まだきちんとお話ししていなかったですね。申し訳ありません。高彩さんを採用することになりましたので、明日、来社いただきたいのですが」

「採用? 明日? えっ⁉」

 話の展開についていけなかった。脳細胞は理解という機能を放棄しているようだった。

「すみません。もう少しわかりやすくご説明いただけないでしょうか」

「あっ、そうですよね。ごめんなさい。社長が直接指示を出したいと申しておりますので、明日の朝9時に会社に来ていただきたいのですが」

「あ、はい」

「せっかちなもので申し訳ありません」

「いえ、とんでもございません。お申し付けの件、承りました。ところで、入社についてですが、」

 そこで初めて具体的な話になった。ポジションと年収についてだ。役職は経営企画室長で、年俸は1,000万円だという。
 聞いた途端、唖然とした。また喉が詰まったようになって、声が出なくなった。それでもなんとか礼を言って電話を終えたが、その後は雇用契約の内容を信じられない思いで何度も呟き続けた。