「君たち全員がMBAの資格を取って卒業することを誇りに思う」
直角教授の最後の講義が始まった。
「この2年間で君たちは多くのことを学んだ。そしてディスカッションを通じて自分と異なる見方や意見があることを学んだ」
教授は教室の中を歩き始めた。
「知識はそれだけではなんの役にも立たない。知識を生かすためには化学反応が必要だ。多様性という化学反応だ。自分が持つ知識、考え、見方、意見に固執するのではなく、異なる知識、考え、見方、意見を認めることが重要だ」
教授は立ち止まって、我々に目を向けた。
「融合するのだ!」
叫ぶように言って、その先を続けた。
「異なるものを融合しようとすれば必ず摩擦が起きる。しかし、その摩擦を避けてはいけない。摩擦こそが化学反応なのだ」
教壇に戻ってきた教授は黒板に二つの文字を書いた。
同質と異質。
そして、同質の文字の上に×を書いた。
「同質の人間同士で固まってはいけない。同質の集団には化学反応が起こらない。だから何も新しいものが生まれない」
そして、異質の文字を〇で囲んだ。
「君たちは経営職、上級管理職として仕事をしていくことになる。マネジメントだ。会社には、組織には、色々なタイプの社員がいる。十人十色、百人百色、千人千色だ。つまり、君たちは異質の集団を率いていくことになる」
異質の文字の上にもう一つ〇を書いた。
「会社が、組織が、最大限の力を発揮するためには自らの殻を破って変化し続けることが必須の条件になる」
そして教授は新たな言葉を黒板に書いた。
『異質の融合を促すマネジメント!』
振り返った教授は満面の笑みを浮かべたあと、腹に響くような声を発した。
「君たちには無限の可能性がある。高い創造性がある。自分を信じなさい。そして自分らしくありなさい。一生に一度の人生を自分らしく生きなさい」



