桜の季節が近づく頃。

私は幼馴染の伊織(いおり)の部屋で集まってゲームをしていた。

「ヘックション!」

沙月(さつき)、大丈夫?」

「やばい、誰か私のこと(うわさ)してるわ」

「絶対ただの花粉症だろ」

「いやこれは私のこと好きなイケメンが、私のために花束買ってるわ」

私は鼻をかみながら、そう言った。

「ハックション!」

「伊織も花粉症?」

「いや、俺は美人の可愛い先輩が俺のことを噂してる」

「そんなわけあるか!」

「でも、私もイケメンに告白されたいー!」

「え?つまり俺に告白されたいってこと?」

「どんだけ自分の顔に自信あんの!?」

そんな話をしている内に、私はゲームで伊織に負けそうだった。

「ちょっと伊織ストップ!」

「ゲームにストップはありません」

「ケチっ!」

「ケチじゃないわ!」

私は結局、伊織にゲームで負けた。

「じゃあ、沙月罰ゲームな」

「えー」

「明日、俺に弁当作って」

「めんど!」

「はっきり言うな!」

「ていうか、私料理下手だよ?」

「知ってる」

「卵焼き、殻入るよ?」

「それは抜いて?」

私はゲーム機を置いて、床に寝転んだ。

「じゃあ、何作って欲しい?」

「ハンバーグ」

「生焼けでもいい?」

「腹壊すわ! ていうか腹壊すどころじゃないだろ!」

伊織も床に寝転がる。

「じゃあ、伊織と一緒なら作る」

「それ、沙月の罰ゲームにならなくね?」

「えー」

「分かったよ」

「やったー!伊織、おかず担当ね!私、お米炊く!」

「割合おかしいだろ」

伊織があくびをしている。

「俺、そろそろ寝るわ」

「そっか、じゃあ私帰るねー」

「おっけ」

「じゃあ、明日何時集合?お弁当作るなら、6時位?」

「了解」

私は隣の自分の家に帰った。


翌日。

「なんで起こしてくれないの!?」

「こっちのセリフだわ!」

現在時刻7時半。

「昨日、お母さんにお弁当自分で作るって言ったから、私お昼ないよ!?」

「俺も」

「どうするの?」

「購買」

「言うと思った」

「大丈夫。俺、購買のおばちゃんと仲良いから」

「何も大丈夫じゃないわ!」

私と伊織は学校に猛ダッシュで向かった。

「ま、間に合った・・・」

「俺、もうお腹空いた」

「大丈夫?」

「無理かも・・・」

「そっか。今までありがとう!」

「もっと俺のこと大事にしよ!?」

「あはは」

「何も笑い事じゃないわ!」

私たちは席に着いた。

ちなみに席も隣同士である。

「沙月」

「ん?」

「俺、沙月の弁当、結構まじで食べたかったかも」

「卵焼き、殻入りが好きなの?」

「違うわ!」

伊織がため息をついている。

「沙月、イケメンが好きなら俺じゃダメなの?」

「え?イケメンじゃないじゃん」

「そこは今忘れて!?」

「大事なとこだよ!?」

「イケメン好きすぎだろ・・・」

「違うよ?」

「え?」

「私の好みは、イケメンじゃなくて軽口を叩ける人ってこと!」

「俺じゃん」

「イケメンじゃないの認めるんだ?」

「もうそこはどうでもいいわ!」

「いや私、伊織大好きだけど、イケメンだったらもっと好き」

「うるさいわ!」

「うそだよ。伊織ならなんでも好き」

伊織が頭を抱えている。

「俺、沙月の沼にハマってる気がする」

「えへへ、私可愛いもんね」

「・・・・」

「ツッコんで!?」

「いや、事実だし」

「・・・・。私も伊織の沼にハマってるわ」

「ざまぁ」

「うるさいわ!」

「なぁ、明日こそ一緒に弁当作らね?」

「いいよ。卵焼き、殻入りだけど」

「どんだけ卵焼きに殻入るんだよ!」

「90%くらいかなぁ」

「可能性高すぎだろ・・・」

「でも、明日は入らないよ?」

「なんで?」




「伊織が見ててくれるから」




「もう俺、沙月の沼ハマっててもいいわ」




大好きな君と明日も一緒に過ごそう?




fin.