========== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
戸部(神代)チエ・・・京都府警警視。東山署勤務だが、京都市各所に出没する。戸部は亡き母の旧姓、詰まり、通称。
神代宗佑警視正・・・京都府警東山署署長。チエの父。
船越栄二・・・東山署副署長。チエを「お嬢」と呼んでいる。
茂原太助・・・東山署生活安全課警部補。
中町巡査・・・茂原の交代要員だったが、そのまま勤務している巡査。
楠田巡査・・・チエの相棒。
畑山紅葉(もみじ)・・・副署長の娘。巡査。亡くなった夫の姓のまま、復職。
遊佐圭祐・・・チエの幼なじみ。大学同級生。CATV『きょうとのテレビ』課長。
=====================================
『五山送り火脅迫事件』から2日後。
午前10時。東山署。会議室。
チエは、慌ただしく楠田を連れて出て行った。
数分後。弓矢警部がやってきた。
「済みません、会議が長引いて・・・。」
「はい、弓矢警部。お嬢から預かってまっせ。」と、船越副署長が箱と中身を弓矢に渡した。
「お。ドイツ製ですか。俺の剛毛でも大丈夫かな。あ、警視は義理堅いなあ。」
「大分、感謝してましたよ。誰かさんと違って。」と、紅葉がお茶を用意しながら言った。
「いやあ、助かったのは、こっちですよ。流石、暴れん坊小町、鞍馬の子天狗・・・違った、鞍馬の牛若丸。一人で十人相手にするなんて、四課にもいないですよ。あ。誰かさんって、誰です?」
「弓矢さんは、別動隊やったけど、実は、五カ所は守り切れんかも、って、流石のお嬢も考えて、他府県の応援要請をして、派遣してくれたのが、奈良県警が2人、兵庫県県警が2人、滋賀県警が4人。どっか抜けてません?」
「大阪府警ですか。」
「そう。本部長付の小柳警視正が反対したんです。東京から来たから、関西のことよう知らんのですよ。『五山送り火』は、単なるたき火と違います。弓矢さんなら分かりますよね?」と、紅葉が口を出した。
「はい、分かりますよ。そうか。警視には、『渡りに船』やったな。でも、ケチやなあ。例え一人でも体裁繕えるのに。少ないって言われても言い訳ぐらい出来るのに。マスコミに知られたら、叩かれますよ。『そんなことやからグリコの犯人逃がした』って。」
「弓矢さん、ご存じなんですか、『グリコ・森永事件』。」と船越が尋ねた。
「オヤジの時代ですね。定年前だったかな?当時、オヤジは長野県警に行ってました。よく言ってましたね。あ、長居しました。大事に使わせて貰います。」と、船越の前で電気カミソリを箱にしまい、帰って行った。」
「紅葉、タイプか。」
「もう、お父さん、公私混同。弓矢さんのタイプは『暴れん坊小町』かな?売約済みやけど。」
「小柳君も反省はしとるけどなあ。しこりは残るからな。チエは、あれでもナイーブやねん。毎晩、小雪ちゃんと電話してたわ。」と、署長はしみじみ言った。
午前11時。CATV「きょうとのテレビ」。食堂。
「遊佐君、ありがとうな。仕事で、送り火見られへんかったけど、助かった。」
「一番儲かる番組やからな。チエちゃん。お昼、ここで食べて行く?素麺旨いで。」
「うん、そうする。楠田、食べてからパトロールな。」
「はい、先輩。」
テーブルに着くと、チエが「遊佐君、楠田はどう?嫁に。」と遊佐に言った。
「困らせんといてよ、チエちゃん。」
「ウチは・・・。」楠田が俯いた。
遊佐は、名刺にメールアドレスをサラサラっと書いて、楠田に渡した。
「お互い、時間取りにくいけどな。チエちゃんに逆らうと、後恐いし。」
町田が、声を殺して笑った。
「町ヤン、今、笑った?」「いえ、別に。」
午後7時。神代家。
「弓矢警部がな、感謝してたで。」「そう。」
「風呂上がりに、杏月バーたべよな。」「うん。」
チエの扱いは一番よく知っている神代だった。
―完―
============== 主な登場人物 ================
戸部(神代)チエ・・・京都府警警視。東山署勤務だが、京都市各所に出没する。戸部は亡き母の旧姓、詰まり、通称。
神代宗佑警視正・・・京都府警東山署署長。チエの父。
船越栄二・・・東山署副署長。チエを「お嬢」と呼んでいる。
茂原太助・・・東山署生活安全課警部補。
中町巡査・・・茂原の交代要員だったが、そのまま勤務している巡査。
楠田巡査・・・チエの相棒。
畑山紅葉(もみじ)・・・副署長の娘。巡査。亡くなった夫の姓のまま、復職。
遊佐圭祐・・・チエの幼なじみ。大学同級生。CATV『きょうとのテレビ』課長。
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『五山送り火脅迫事件』から2日後。
午前10時。東山署。会議室。
チエは、慌ただしく楠田を連れて出て行った。
数分後。弓矢警部がやってきた。
「済みません、会議が長引いて・・・。」
「はい、弓矢警部。お嬢から預かってまっせ。」と、船越副署長が箱と中身を弓矢に渡した。
「お。ドイツ製ですか。俺の剛毛でも大丈夫かな。あ、警視は義理堅いなあ。」
「大分、感謝してましたよ。誰かさんと違って。」と、紅葉がお茶を用意しながら言った。
「いやあ、助かったのは、こっちですよ。流石、暴れん坊小町、鞍馬の子天狗・・・違った、鞍馬の牛若丸。一人で十人相手にするなんて、四課にもいないですよ。あ。誰かさんって、誰です?」
「弓矢さんは、別動隊やったけど、実は、五カ所は守り切れんかも、って、流石のお嬢も考えて、他府県の応援要請をして、派遣してくれたのが、奈良県警が2人、兵庫県県警が2人、滋賀県警が4人。どっか抜けてません?」
「大阪府警ですか。」
「そう。本部長付の小柳警視正が反対したんです。東京から来たから、関西のことよう知らんのですよ。『五山送り火』は、単なるたき火と違います。弓矢さんなら分かりますよね?」と、紅葉が口を出した。
「はい、分かりますよ。そうか。警視には、『渡りに船』やったな。でも、ケチやなあ。例え一人でも体裁繕えるのに。少ないって言われても言い訳ぐらい出来るのに。マスコミに知られたら、叩かれますよ。『そんなことやからグリコの犯人逃がした』って。」
「弓矢さん、ご存じなんですか、『グリコ・森永事件』。」と船越が尋ねた。
「オヤジの時代ですね。定年前だったかな?当時、オヤジは長野県警に行ってました。よく言ってましたね。あ、長居しました。大事に使わせて貰います。」と、船越の前で電気カミソリを箱にしまい、帰って行った。」
「紅葉、タイプか。」
「もう、お父さん、公私混同。弓矢さんのタイプは『暴れん坊小町』かな?売約済みやけど。」
「小柳君も反省はしとるけどなあ。しこりは残るからな。チエは、あれでもナイーブやねん。毎晩、小雪ちゃんと電話してたわ。」と、署長はしみじみ言った。
午前11時。CATV「きょうとのテレビ」。食堂。
「遊佐君、ありがとうな。仕事で、送り火見られへんかったけど、助かった。」
「一番儲かる番組やからな。チエちゃん。お昼、ここで食べて行く?素麺旨いで。」
「うん、そうする。楠田、食べてからパトロールな。」
「はい、先輩。」
テーブルに着くと、チエが「遊佐君、楠田はどう?嫁に。」と遊佐に言った。
「困らせんといてよ、チエちゃん。」
「ウチは・・・。」楠田が俯いた。
遊佐は、名刺にメールアドレスをサラサラっと書いて、楠田に渡した。
「お互い、時間取りにくいけどな。チエちゃんに逆らうと、後恐いし。」
町田が、声を殺して笑った。
「町ヤン、今、笑った?」「いえ、別に。」
午後7時。神代家。
「弓矢警部がな、感謝してたで。」「そう。」
「風呂上がりに、杏月バーたべよな。」「うん。」
チエの扱いは一番よく知っている神代だった。
―完―


