========== この物語はあくまでもフィクションです =========
 ============== 主な登場人物 ================
 戸部(神代)チエ・・・京都府警警視。東山署勤務だが、京都市各所に出没する。戸部は亡き母の旧姓、詰まり、通称。
 白鳥純一郎・・・チエの許嫁。京都府警勤務の巡査。実は、大前田警視正の息子。母の旧姓を名乗っている。
 神代宗佑警視正・・・京都府警東山署署長。チエの父。
 茂原太助・・・東山署生活安全課警部補。
 中町圭祐・・・下鴨署からの転勤。巡査部長。
 楠田幸子・・・チエの相棒の巡査。

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 ※「あねさんろっかくたこにしきー」
 京都の手まり唄に出てくるのは、京都の碁盤の目の東西に走る通りの名前を暗記できるようになっている(姉小路、三条、六角、蛸薬師、錦小路)。
 六角堂こと頂法寺は、その名が示すように六角通りの近くにある。中京区である。
 六角堂の事件と言えば、、元治元年(1864年)に発生した「蛤御門(はまぐりごもん)の変」があります。尚、六角堂は、本堂が平面六角形であることから呼ばれる通称です。
 尚、「心霊スポット」と呼ばれる「六角堂」は、ここではありません。

 午後4時。ミニパトの中。
 チエは、楠田と警邏で市内をパトロールしていた。
 チエのスマホが鳴動した。
 「チエ。芸者ネットワークから情報や。今日の夜更けに、蛤御門で殺人が行われる、というメモが清水寺にあったそうや。」
 「夜更けって、いつ?」「知らんがな。」
 「知らんがなって・・・ちゃん!ちゃんと教えてよ。」
 「今、応援を向かわせた。六角堂で待ち合わせや。」
 「イケズしたら、あずきバー、やらんぞ。」
 楠田は、首を竦めて六角堂にミニパトを向かわせた。
 午後4時半。中京区。六角堂。
 いた。
 また、外国人New Tuberか。
 6人組のクルーだ。
 チエは、声をかけた。
 "Permission is required for photography"(撮影には許可が必要です)
 "Publishing on the Internet is prohibited even with permission."(許可があってもインターネットへの公開は禁止です。)

 どうやら、勝手に「記録映画」的撮影をする気でいたようだ。
 不自然な着物の着方をしている役者風外国人が2人いた。
 無視して続けようとしたので、チエはグーパンチを見せてから、平手打ちをした。

 彼らは、すごすごとクルマに乗って帰って行った。
 1時間後。照明係を加えたグループがやって来た。
 張り込みをしていた、茂原達は、遠慮無く手錠をかけた。

 英語で何やら喚いていたが、チエがファイティングポーズを取ると、大人しくなった。
 白鳥と楠田と茂原と中町はクスクスと笑った。

 午後9時。神代家。
 「あずきバー。どこにやった?」
 「ここや。」
 「何で、家で鬼ごっこするねん。」「ちゃんが好きやから。」
 「はいはい。夜更け言うのはナア、辺りが薄暗くなったら、夜更けやねん。一番交通事故が起りやすい時間帯。季節によって違う。天気によっても違う。」
 「今夜は『孫悟空』して。」
 神代は、辟易しながらも、チエに読み聞かせをして寝かしつけた。
 幼い時のように。
 ―完―