========== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
戸部(神代)チエ・・・京都府警警視。東山署勤務だが、京都市各所に出没する。戸部は亡き母の旧姓、詰まり、通称。
神代宗佑警視正・・・京都府警東山署署長。チエの父。
茂原太助・・・東山署生活安全課警部補。
小雪(嵐山小雪)・・・チエの小学校同級生。舞妓を経て、芸者をしている。
船越栄二・・・東山署副署長。チエを「お嬢」と呼んでいる。
白鳥純一郎・・・チエの許嫁。京都府警勤務の巡査。実は、大前田警視正の息子。母の旧姓を名乗っている。
楠田幸子・・・チエの相棒の巡査。
遊佐圭祐・・・チエの幼なじみ。大学同級生。CATV『きょうとのテレビ』の広報課課長。
大前田弘警視正・・・京都府警警視正。大きな事件では本部長を勤める。白鳥の父。
灘康夫・・・京都府知事。元作家。「康夫ちゃん」のニックネームがある。
金平桂子・・・京都市市長。

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※地域森林計画対象森林の立木を伐採する場合、森林が所在する市町村の長にあらかじめ届出書を提出することが法律で義務づけられています。
※伐採届を提出しない無届伐採:森林法第208条により、100万円以下の罰金が科される場合があります。
伐採及び伐採後の造林に係る森林の状況報告書を提出しない場合:森林法第210条により、30万円以下の罰金が科される場合があります。
他人の森林を無断で伐採した場合(森林窃盗):森林法第197条により、3年以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます。

午後1時。東山署。会議室。
チエのスマホが鳴動する。
「お嬢・・・。」と、茂原が注意しようとしたら、チエはスピーカーをオンにした。
「そやから、大覚寺が、大覚寺の紅葉が切られようとしてるねん。変な男らが。市役所の命令やですて言うて。近くで店出してる人やら坊さんや止めようとしたけど、小競り合いになって、今、昼飯休憩してるらしい。」
「ちゃ・・・署長。芸者ネットワークからの情報です。」
チエが言うと神代は、「副署長。現地に機動隊(機動捜査隊)を派遣要請、茂原が「指揮」して現地に向かえ!!ワシは、知事と市長に報せる。これは悪戯ではすまされへんぞ!!チエ!!ワシが許す!!暴れてこい!!」
皆、数秒考えたが、すぐに行動に移った。
チエは、ミニパトの窓を叩き、「緊急出動や!!」と言って乗り込んだ。
白鳥が白バイに乗って、ミニパトに続いた。
30分後。右京区嵯峨。大覚寺。
機動隊が、連中と攻防を続けている傍ら、チェーンソー持った男が紅葉の木を切ろうとしていた。
「よいしょうっ!!」その男の頭に何故かフライパンが当たった。
男は、川に落ちた。
白鳥の肩車の上からチエがフライパンを投げたのだった。
10分後。機動隊や茂原達を後ろに従えたチエは警察手帳を出して、木を切ろうとした連中を前に言った。
「あなた方を、森林法違反並びに公務執行妨害その他で逮捕します。京都市も京都府も許可を出していません。言い訳無用!!」
男達は、「せんてー」て言ってるでしょ、婦警さんは引っ込んで!!」
「じゃあ、これに『せんてー』を漢字で書いて。」チエは、メモ用紙とボールペンを白鳥から受け取り、差し出した。
「学歴差別か、婦警さん。」「学歴は関係ありません。例え下請けでも自分の仕事の種類を漢字で書けない筈はない。それに、お役所は関知していない。お寺からも依頼はしていない。その他は改めます。「窃盗罪です。森林法第210条により逮捕、後に起訴します。」
作業服を来た男達が、那珂国語と英語で喚きだした。
「日本人じゃ無いから、日本の法律に従わなくていい、という言い分は裁判の時に言って下さいね。外国の方。」と、チエが言った。
「何故?」「何故?語るに落ちたな。日本人ならそんな間抜けな質問はしない。さっさと身分証明書を出す。お名前カードはまだでも、運転してきたんだから、運転免許証は所持いている筈。確認させて貰えますか?それと、そのトラックも盗難車ですよね。お役所が委託する業者は決まっている。一工務店じゃない。おっと、職業差別じゃない。さ、逮捕して引き揚げよう。」と、茂原が指揮した。
「ああ、『婦警さん』は職業差別でセクハラやね。」チエは、そう言い捨てて、住職と近隣の店の従業員、観光客に会釈して、皆に続いた。
大阪府警。捜査一課取調室。
被疑者5人と弁護士を前に、府警本部長の大前田、市長、府知事が座っている。
「本部長。先に発言させて貰っていいかな?」と、府知事の灘が言った。
「どうぞ。」
「君らの出身国がどこかは関係ない。日本にはね、『京都県』って無いのよ。でね、録音に証拠が残っているんだよね。面白いから、大阪の吉本知事にも送っておいたよ。事件片付いたら、名誉毀損で訴えるってさ。」
【京都って、県になれなかった二軍だよ。大阪と同じ。だから、京都県って言うと怒る。どっちの知事もアホだ。】
職員が、市民提供の録音データを再生した。
「スマホで録音されたデータは、すぐに情報共有されたよ。君たちの理論で行くと、自治体名前試験があって、大阪と京都は落ちたのかな?東京と北海道は県より上かな?下かな?」
「通訳の戸部警視によると、取調中、日本人だって言ったり外国人だって言ったり忙しかったみたいけど、外国人だよね。で、他の自治体では、外国人に忖度して何でも無罪不起訴がまかり通っているみたいだけど、ここは京都ですから。日本で一番『いちげんさん』に厳しい自治体ですから。あんたらに遠慮する気はないよ。きっちり裁判して賠償して貰うよ、弁護士さん。あんたは何回法廷に立ったことがあるのかな?まさかペーパー弁護士とかタレント弁護士さんじゃないよね。今ね、テレビでライブしてます。CATVだけどね。職権濫用じゃないよ。第三セクターだから。京都市の市民税も入っているからね。」市長の金平は、微笑んで言った。
弁護士は、法廷でも無いのに「しかるべく」と言って退室した。
弁護士が廊下に出ると、CATVらしきクルーがたむろし、弁護士の知り合いのゴシップ記者がいた。
「無駄だよ、帰った方がいい。自分をレイプした相手を起訴、豚箱に放り込んだ、『暴れん坊小町』だよ、相手は。勝てっこない。金蔓の有島商会に言っておけ。そもそも、親分に言われたからって、大覚寺の側にメガソーラーは無理だ。お前らはもう負けてる、って。」弁護士は、そう言って帰った。記者が後を追った。
柱の陰から、小雪と遊佐が現れた。
CAYVにライブ中継はフェイクである。
だが、今、証拠が出来た。
芸者姿の小雪が胸元のマイクを外し、こう言った。
「芸者ネットワーク、舐めたらあきまへんえ。」
近くにいた、女性警察官が唱和した。
「舐めたらあきまへんえ。」
白鳥と遊佐が吹き出した。
―完―