お昼ご飯は、さっき採った果実でいくつか作ってみる。
 歩いてただけだし、重くなくて丁度いいかな?

「とりあえず、一個は丸焼き?」

『焼きリンゴか。いいね』
『確実に美味いやつ』
『私もお昼ご飯作らないと』

 串、は用意しなくていいか。
 尻尾に刺して、魔法の火で焼こう。

『わいるど』
『尻尾にそんな使い方が……』
『べんりですね』

 なんか呆れられてる気がする。
 気のせいって事にしておこう。

 ん-、他は何がいいかな?
 ジュース?

 まあジュースで。

 空中に保持されるように上剥きに力を加えて、ひたすら細かく。
 水分はそれなりにあるから、果汁百パーでいいかな。

 で、交換したコップに入れてっと。

「よし、ジュース。お味は……、さっき齧った時と一緒だね。でも思ったよりはサラサラになったかな」

『まあそうだろうな』
『魔法の使い方が器用すぎて参考にならん。俺らはミキサー使おうな。。。』
『果実ジュース飲みたい』

 さて、他は何がいいかな?
 ん-。

 って果実を眺めながら悩んでたら、リスナーさん達が察してくれたみたい。

『ジャム』
『パイ』
『カレーの隠し味』
『天ぷら』
『凍らせてみよう』
『天ぷら?』

「ジャムかー。有りだね。パイは生地がなー。帰ったらで。カレーは昨日食べたから却下」

 で、天ぷら。
 天ぷらかー。

「フルーツの天ぷら、聞いたことはあるね。めちゃ甘くなるんだっけ」

『そうそう。意外とうまい』
『あるのか・・・』
『ほー。旧時代なら試してた』
『てかこの実の名前どうするよ』

 とりあえずジャムと天ぷらは作ろうかな。
 一個半をジャム、残りの半分を天ぷらにする。

 とりあえず水、薄力粉、卵を交換して、全部冷やしておく。
 で、果実二個をスライス。
 ジャムにする分はさらに細かくして、新しく交換した鍋へ。

 ふむ、名前ね。

「名前かー。案募集」

『りんごとみかんでリンミ』
『近江姫』
『迷宮りんご』

 鍋に果実と同じ量の砂糖をぶち込んで弱火にかけてっと。
 これは時々かき混ぜる程度で基本放置かな。

 あ、丸焼きはそろそろ良さそう。

「丸焼きが出来たね。じゃあ実食」

 ん、焼きリンゴだ。
 甘味が強い焼きリンゴ。

 美味しい。
 美味しいけど、感動は薄い。

『美味そう』
『こんがり。バターのせたい。あとシナモン』
『りんごとみかん? ミリンだろ』
『はちみつも』
『ミリンは別の調味料だな』
『ハロさんが見つけたし、ハロリン』

「あ、シナモンとバターはありだね。普通に焼きリンゴだったから。かなり甘いからはちみつはクドくなると思う」

 という訳で追加。
 からの再加熱。

「ん、合うね」

 人間だった頃の私だったらこれでお腹いっぱいだけど、今ならまだいける。

 名前の案は、大体出そろったかな?
 夜墨がリストにしてくれたのでそっちで確認。
 有能従者です。

「名前の案、けっこう出たねー。近江姫はどっちかというと品種? ミリン、は見なかったことにして」

『見なかったことにされた・・・』
『どんまい』
『ハロさん酷い!』
『しくしく』

 知らない知らない。
 私ワルクナイ。

 なんて言いながら空いた尻尾でジャムをかき混ぜつつ、天ぷらの用意。
 尻尾の力加減はもうばっちりだよ。

「リンミ、リミ、メイリン、迷子林檎……これ言った人タイムアウトかな?」

『なんで!?』
『草』
『自業自得かな』
『どんまい』
『ハロちゃんの鬼! 悪魔! ドラゴン!』

「冗談冗談。ドラゴンは違いない」

 ん-、どれがいいかな?
 ハロリンは、なんか恥ずかしいので無し。
 私の名前が絡んでるのは全部却下でいいや。

「じゃあ、リンミで。分かりやすいし」

『よし選ばれた!』
『ん、了解』
『次こそ!』

 ん、油の温度はそろそろいいかな。
 衣をつけたリンミのスライスを投入!

 じゅわわーって音が食欲をそそるね。

「天ぷらの方も結構甘い匂いだね」

『うわ、腹減ってきた』
『ASMRだ』
『いいなー、天ぷら』
『キス天と舞茸天くいてー。あとナス』
『いいな。誰か、日本酒! それかビール!』

 定期的に飯テロする迷宮攻略配信はこちらです、はい。

 なんて言ってる間にジャムがいい感じなので、一旦強火で沸騰させ、ビンに詰めていく。
 ミカンっぽくもあるのでレモン果汁は無し。
 煮沸消毒はしてないけど、交換したてなので大丈夫でしょ。

 これで天ぷらを食べてる間に粗熱もとれるはず?

 よし、天ぷらもいいね。
 余熱でけっこう火が通るから、ちょっと早めに上げるよ。

「はい、完成。……これ、何で食べたらいいんだろ?」

『天つゆ、じゃないな』
『お塩?』
『そのままでも!』
『リンゴっぽいならシナモンもありじゃね?』

 ふむ。
 天つゆじゃないのは分かるな。

「じゃあ、そのままと塩と、シナモンパウダーで」

 まずはそのままから、いただきまーす。

 ふむ、触感はサクっからのしっとり。
 衣と果肉だね。

「あま! 超甘い。あれ、砂糖なんか入れてないのにな?」

 思った倍は甘い。
 これ、ジャムの砂糖の量失敗したかな?

 まあ、食べてみれば分かるか。
 じゃあ次はお塩。

 ん、塩味がいい感じ。
 角のある味の塩にしたけど、正解だね。
 味のバランスが良くなった。

「そのままよりは塩だね。角のあるやつ」

 で、最後にシナモンパウダー。

「あー、ありだね。焼きリンゴのよりは少し粉っぽい。これはこれで美味しいかな。私としては塩の方が好き」

『ハロさん、日本酒好きそうだしなぁ』
『塩か』
『龍って日本酒とか好きなイメージ』
『酒のみ配信待ってる』

 おかしい。
 酒好きそうってコメントの方がリンミの味に関するやつより多い。

 いやまあ、好きだけど、日本酒。
 この体になってからは特に。

「酒のみ配信は、一応考えておくよ。それより今は検証」

『忘れてた』
『そうだった』
『忘れてたって、ちょっと言い出しっぺ』
『とか言いつつ私も忘れてた』
『だって美味そうなんだもん』

 リスナー諸君?
 
 だが許そう。
 美味しいは正義だから。

「今大体、三十分くらい経ったかな?」

 配信時間を見て確認。
 うん、それくらい。

「まだそのままだね。洞窟型の壁は一時間くらいで戻ったっけ」

『うん、それくらい』
『まだ戻らないか』
『切り倒した方もまだ変化なしだな。放置した壁の破片は三十分で消えたのに』

 そういえばそうだね。
 ふむふむ。
 これはこのまま残る可能性がある?

 だったら助かるんだけどなー。

「まあ、ジャムがある程度冷めるまで時間があるし、のんびり待ってみようか」

 粗熱が取れた段階で味見して、魔法での冷却に切り替えるつもりだけど、一時間以上はかかる見込み。
 その間に変化あるかな?