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 うん、駄目だ。
 殺そう。
 精一杯痛めつけてから。

「くっ、急に切れるじゃん!」
「魔力ヤバ!」
「狼狽えるな、こちらは五人いるんだ!」

 五人?
 それがどうした。

()()

 折角だ。
 実験台にしてやる。

 言葉を補助に使った、相手の体を満たす魂力への直接介入。
 どうやら上手くいったみたい。

「ぐっ、身体が勝手、に……!」
「何で、私がこんな格好……!」
「た、立てねぇ……!」

 元エルフ、妖怪、鷲獣人は言葉の通り跪いた。
 プライドの高そうなやつらが纏めていったね。

 竜人と人間は耐えたか。
 じゃあ、こっちからで。

 まずは竜人の魔族。
 一足飛びで近づいて、顔面を掴む。

「ぐっ、離せ!」

 触手やら何やらで反撃しようとしてくるけど、その前に地面に叩きつけて、抵抗しようとした触手は尾で貫き無理矢理引きちぎる。

 手の下で悲鳴が上がるけど、知らない。

「なにすんの!」

 魔人の女が花のようになった下半身から蔓を伸ばしてきた。
 それを掴み、引き寄せながら振り回して、地面に何度も打ち付ける。

 どうにも顔をかばっているようだったから、手元まで引き寄せてから尾を首に巻きつけ、起点にして焼いてやる。
 魔族だけあって頑丈だけど、温度を上げれば問題ない。

「いやぁぁあ!?」

 煩いなぁ。
 耳がキンキンする。
 
 足蹴にしていた竜人の魔族の角を切り取り、魔人の喉に突き刺して抜く。
 よし、静かになった。

 声帯を破壊しただけだ。
 どうせこれくらいじゃ魔族は死なない。

 そろそろ他の三人の相手もしてやろう。
 こっちの二人は纏めてやりに突き刺しておいて、と。
 
 向こうの三人の持つ無数の手足を氷柱で縫い留めて、固定する。

「痛い痛い痛い痛い……!」
「イヤァ!」

 悲鳴を上げたのは、エルフと妖怪。

 煩いなぁ。
 龍は耳も良いんだ。
 あまり騒がないで欲しい。

 コイツラだって吸血鬼の伯爵から侯爵くらいの力はある。
 こんな程度で泣き叫ぶなんて、情けない。

「そういえば、貴女も顔を気にしてたね?」
「ヒッ……」

 妖怪の魔族の顔面を焼き、ついでに気道も焼いて叫べないようにする。
 エルフの喉もやっておくか。

 同じように焼くと、反抗的な目でこちらを睨んできた。

 ああ、そうだ、このエルフ。
 ウィンテさんを犯すみたいなこと言ってた。
 あの気持ち悪いぬめぬめした触手で縛るんだろうか。

「不快。心底不快」

 もう二度と生殖できないようにしてやろう。
 人型はギリギリ保ってるし、股を潰せばいいよね。

「――ッ!」

 元エルフが掠れて声にならない悲鳴を上げる。

 その間にこいつの身体を満たす魂力に干渉して、再生できないようにした。

 あとは、あの鷲獣人か。
 こいつには何が良いかな。
 お調子者っぽい雰囲気は感じるんだけど……。

 よし決めた。
 無言でひたすら尾で殴ろう。

「ガハッ、グフッ、ゴッ。な、ブフッ、んだ急、ニィッ、やめ、グフっ、やめて、アガッ、くれ……!」

 ん、魔竜人が動こうとしてる。
 鬱陶しい。

 槍を捻り、掻きまわす。

「グァアアアアアアッ!」
「アッ、ガッ……」

 あ、魔人も一緒に突き刺したんだった。
 あーあ、失神しちゃったよ。

 でもまあ、もういいかな。
 魔人は失神、と失禁。妖怪は自慢の顔をヤラレて意気消沈。エルフも好きな事が出来なくなって涙目。鷲獣人も心が折れたのか、虚ろな目で殴られ続けてる。
 竜人には大した事はしてないけど、こいつは変な事言ってないし。

「よし、そろそろ解放してあげよう」

 魔族たちの顔に希望が浮かんだ。
 解放ってそういう意味じゃないよ?

 まったく、どこぞの王のように婚姻して終わりなら、私もそんな怒らなかったのに。
 その後はウィンテさん次第だから。

 でもさ、ずっと楽しもうとしてた。
 ウィンテさんの自由を奪って、動けないようにして。

 許せるわけないよね。
 あー、なんかまた腹立ってきた。

 でも解放するっていっちゃったからね。
 こうしよう。

「何発でさよなら、かな?」

 再び青くなった魔族たちに向けて、少し弱めの雷を落とす。

 まず一発。

 流石にこれくらいじゃ、誰も死なないよね。

 二発。

 ふむ、意外と余裕がありそう。
 じゃあ少し強くして。
 
 三発。
 四発。
 五発。

 鷲獣人が瀕死か。
 じゃあ止めの――

「その辺りにしてくれないか」

 この声は……。

「遅かったじゃない」

 右手の方から聞こえた声に、顔も向けず返す。
 敵意は感じられない。

 近づいてくる気配はある。

 じゃあ、六発目。

「……邪魔しないで欲しいんだけど?」
「邪魔せねば彼が死んでしまうのでね」

 結界で防御された。
 酷く輝いた目で魔族たちがゼハマを見る。

 どうせ実験体が減ったら面倒だとか、その程度だろうに。

「で、何の用? さっさとコイツラ殺して、ウィンテさんの家族探しに行きたいんだけど」

 適当な奴から聞き出してからね。

「実験結果を見せてやろう」
「どうでもいい。ウィンテさんの家族はどこ?」

 ん、なんか来た。
 プライベートスレッドに、限定公開の配信のリンク。

 つまり、また私の言葉は無視か。
 
 差出人はどうせコイツじゃないから、気にしないでおく。

「今回の実験もなかなか有意義だった。新薬の効果も申し分ない。思考能力をそのままに大幅な強化を行えた」
「だから興味ないって」

 と言いつつ、話は聞く。
 情報は大事だ。

 配信も開く。
 映し出されたのは、今まさに私の気にしている戦場の様子。
 戦線は中野が幾らか押し込んでおり、北陸側の犠牲者もそれなりに増えているようだった。

 それに、魔族の姿も見える。

「魔族への変化条件も概ね把握した。変化後の能力の傾向も、ある程度は誘導できる」

 カメラの向きが変わる。
 これは、甲府側か。

 こちらもかなり押し込まれている。
 残存兵力でどうにか耐えている状態か。

 こちらにも魔人が多数。
 だけど、北陸側の戦場より攻撃的なやつが多い?

 ……条件が分からないから原因を絞り込むのは難しいね。
 保留。

「面白い結果だろう。色々と手をまわした甲斐があった」
「あっそ。じゃ、殺すよ」

 強めの雷を、六つ。
 ……ちっ。

「止めてくれと言っているだろう」

 殺せたのは一人だけか。
 ゼハマに妨害されて、鷲獣人以外は生き残ってしまった。

 問題は、妨害の仕方。

「やっぱり出来るんだ」
「当然だ」

 魂力の支配による魔法防御。
 なら、遠慮しない。