今日の<カフェ・サクラ>は、賑やかな声に包まれていた。
　見ると、未香(みか)が男子生徒と楽しく会話をしていた。最初は少しだけ声をかけようかと思ったけど、理沙に諭されて止めることにする。
　カウンター席に座って、さっそく注文をしてみた。
「ねえ、水割り......」
「だめよ、飲むにはまだ早い時間だからね」
　理沙に言われて、わたしは唇を尖らせた。あの表情を見ながら飲みたかったのに。
　仕方ないなと思いつつ、私は頬をついてふたりのようすを静かに眺めることにする。桜の木の下では、未香(みか)はこんなにも無邪気な顔をするんだ。あんなに悲しい顔をしていたのに、良い相手と巡り合ったのを実感したんだろう。
　
　大きな桜の木が彼女らを見下ろしている。その存在は出会いと別れの象徴。
　ふたりが公私ともに良いパートナーのように見えたのは、気のせいではないと思う。
　未来までもずっと、幸せでいてね。