面接を終えた裕基は、会場を後にして駅へと向かっていた。面接中は緊張したが、事前に整理した内容をきちんと話せたことに少しだけ達成感を覚えていた。これまでの面接では、質問にうまく答えられず悔しい思いをしてきたが、今日は面接官の反応が悪くなかった気がする。
「これで、少しは手応えがあったかな…」
そう自分に言い聞かせながら、駅前の階段に差し掛かった。電車の時間が迫っていることに気づき、急ぎ足で階段を駆け上がる。すると、途中で急に息が上がり、足が重く感じられた。
「はぁ、はぁ…なんだこれ…」
階段を登り切った時には、すでに息が切れてしまい、ハァハァと肩で息をしている。額にはうっすらと汗が滲み、スーツの背中が少しだけ湿っているのを感じた。裕基は息を整えるために手すりに掴まり、深呼吸を繰り返す。
「まさか…こんなに息切れするなんて…」
自分の体力の無さに少しショックを受けた。以前はこんなことで息切れなんてしなかったはずだ。学生時代、部活で走り回っていた頃の自分が嘘のように感じられる。就職活動で忙しくなってからというもの、まともに運動もしていない。気づけば体が鈍ってしまっていたのかもしれない。
周りを見渡すと、同じように階段を上ってきたサラリーマンやOLたちは平然と歩いている。それがまた情けなく、少し肩を落とした。
「このままじゃ、社会人になってもすぐバテそうだな…」
少しだけ自分に嫌気が差し、バッグの中からハンカチを取り出して汗を拭う。ちょうどその時、スマホが震えた。画面を見ると、ひとみからのメッセージが届いていた。
「面接、お疲れ様。どうだった?私は緊張しすぎて何言ってたか覚えてないよ…」
裕基はそのメッセージに少し笑みを浮かべた。ひとみも同じように緊張して、必死で頑張っているんだと感じると、自分だけが大変じゃないと思えた。
「俺も緊張したけど、なんとか話せた気がする。三木さんも頑張ったんだね。階段上がったら息切れして、情けないよ…」
そう返信を送り、少し肩の力を抜く。ほどなくしてひとみからすぐに返信が届いた。
「わかる!私も帰り道の階段で息切れして、体力の衰えを実感したところ…社会人ってみんな体力すごいよね」
裕基はそのメッセージにほっとし、自分だけじゃないことに少し安心した。考えてみれば、普段から運動不足で、体力が落ちるのは当然のことかもしれない。就職活動が終わったら、少しでも体を鍛え直そう。そう思うと、今の自分が少し滑稽で笑えてきた。
「三木さんも同じか。就職活動で体力消耗するよな。でも、終わったら一緒にランニングとかしてみる?」
軽い冗談のつもりで送ったが、すぐにひとみからの返信が届いた。
「それ、いいね!私も体力つけたいし、石川君となら頑張れそう」
裕基はその言葉にドキリとし、スマホを持つ手が少し震えた。ひとみと一緒に運動する自分を想像すると、なぜか緊張してしまう。けれど、その約束がどこか嬉しくて、自然と笑みがこぼれる。
階段を上りきった先のホームには、まだ電車が来ていなかった。人々がベンチに腰を下ろし、次の電車を待っている。裕基もその一人として、少し腰を下ろして呼吸を整える。春の風がホームに吹き抜け、少し冷たいが心地よかった。
「よし、次はもっと体力つけて、こんな情けない姿を見せないようにしよう」
自分にそう言い聞かせ、スマホをポケットにしまった。新しい環境に飛び込むためには、心だけでなく体も鍛え直さなければならない。ひとみと一緒にランニングをする自分を想像しながら、裕基は次の電車が到着するのを待った。
電車がゆっくりと滑り込んできて、ドアが開くと、再び混み合う車内に乗り込む。立ち席だったが、不思議と今日はそれほど苦にならない。昨日よりも、少しだけ強くなれた気がする自分がいた。
車窓から見える景色は、もうすぐ訪れる初夏を思わせるように明るく、青空が広がっている。裕基はその景色を眺めながら、これから訪れる未来に少しだけ期待を抱いていた。
終
「これで、少しは手応えがあったかな…」
そう自分に言い聞かせながら、駅前の階段に差し掛かった。電車の時間が迫っていることに気づき、急ぎ足で階段を駆け上がる。すると、途中で急に息が上がり、足が重く感じられた。
「はぁ、はぁ…なんだこれ…」
階段を登り切った時には、すでに息が切れてしまい、ハァハァと肩で息をしている。額にはうっすらと汗が滲み、スーツの背中が少しだけ湿っているのを感じた。裕基は息を整えるために手すりに掴まり、深呼吸を繰り返す。
「まさか…こんなに息切れするなんて…」
自分の体力の無さに少しショックを受けた。以前はこんなことで息切れなんてしなかったはずだ。学生時代、部活で走り回っていた頃の自分が嘘のように感じられる。就職活動で忙しくなってからというもの、まともに運動もしていない。気づけば体が鈍ってしまっていたのかもしれない。
周りを見渡すと、同じように階段を上ってきたサラリーマンやOLたちは平然と歩いている。それがまた情けなく、少し肩を落とした。
「このままじゃ、社会人になってもすぐバテそうだな…」
少しだけ自分に嫌気が差し、バッグの中からハンカチを取り出して汗を拭う。ちょうどその時、スマホが震えた。画面を見ると、ひとみからのメッセージが届いていた。
「面接、お疲れ様。どうだった?私は緊張しすぎて何言ってたか覚えてないよ…」
裕基はそのメッセージに少し笑みを浮かべた。ひとみも同じように緊張して、必死で頑張っているんだと感じると、自分だけが大変じゃないと思えた。
「俺も緊張したけど、なんとか話せた気がする。三木さんも頑張ったんだね。階段上がったら息切れして、情けないよ…」
そう返信を送り、少し肩の力を抜く。ほどなくしてひとみからすぐに返信が届いた。
「わかる!私も帰り道の階段で息切れして、体力の衰えを実感したところ…社会人ってみんな体力すごいよね」
裕基はそのメッセージにほっとし、自分だけじゃないことに少し安心した。考えてみれば、普段から運動不足で、体力が落ちるのは当然のことかもしれない。就職活動が終わったら、少しでも体を鍛え直そう。そう思うと、今の自分が少し滑稽で笑えてきた。
「三木さんも同じか。就職活動で体力消耗するよな。でも、終わったら一緒にランニングとかしてみる?」
軽い冗談のつもりで送ったが、すぐにひとみからの返信が届いた。
「それ、いいね!私も体力つけたいし、石川君となら頑張れそう」
裕基はその言葉にドキリとし、スマホを持つ手が少し震えた。ひとみと一緒に運動する自分を想像すると、なぜか緊張してしまう。けれど、その約束がどこか嬉しくて、自然と笑みがこぼれる。
階段を上りきった先のホームには、まだ電車が来ていなかった。人々がベンチに腰を下ろし、次の電車を待っている。裕基もその一人として、少し腰を下ろして呼吸を整える。春の風がホームに吹き抜け、少し冷たいが心地よかった。
「よし、次はもっと体力つけて、こんな情けない姿を見せないようにしよう」
自分にそう言い聞かせ、スマホをポケットにしまった。新しい環境に飛び込むためには、心だけでなく体も鍛え直さなければならない。ひとみと一緒にランニングをする自分を想像しながら、裕基は次の電車が到着するのを待った。
電車がゆっくりと滑り込んできて、ドアが開くと、再び混み合う車内に乗り込む。立ち席だったが、不思議と今日はそれほど苦にならない。昨日よりも、少しだけ強くなれた気がする自分がいた。
車窓から見える景色は、もうすぐ訪れる初夏を思わせるように明るく、青空が広がっている。裕基はその景色を眺めながら、これから訪れる未来に少しだけ期待を抱いていた。
終



