その日の夜、裕基はバイト終わりにどうしてもラーメンが食べたくなった。寒さが増してきたこの季節、温かいものが恋しい。近所の人気ラーメン店「龍風軒」に足を運ぶと、店内は湯気とスープの香りが充満していた。
「寒い中歩いてきた甲斐があったな…」
カウンター席に座り、注文したのは店一番人気の「味噌バターコーンラーメン」。熱々のスープにバターがとろりと溶け、香ばしい味噌の匂いが食欲をそそる。少し混んでいたが、ようやく順番が回ってきた。
「お待たせしました、味噌バターコーンラーメンです!」
湯気が立ち昇り、バターがキラキラと表面を照らす。裕基は箸を取り、一口目のスープをすする準備をした。しかし、その瞬間——
「ふわっ」
メガネが一気に曇った。
「うわっ…見えない!」
咄嗟にメガネを外し、服の袖で拭き取る。スープの熱気が直接レンズに当たったせいで、完全に視界が白くなってしまった。
「やっぱり、こうなるか…」
再びメガネをかけ直し、今度は少し顔を引きながら麺をすする。だが、またもや湯気が直撃し、レンズが曇る。
「ちょっとしたトラップだな…」
メガネをかけたまま食べようとするが、どうにも湯気に勝てない。結局、メガネを外して食べることにした。視界が少しぼやけているが、熱々のスープが体をじんわりと温めてくれる。
「こういう時、コンタクトの方が良かったかな…」
メガネを置きながら、ふとスマホを取り出し、ひとみにメッセージを送る。
「ラーメン食べに来たら、湯気でメガネが曇ってさ、全然見えない。」
すぐに返信が来た。
「それ、あるある!ラーメン屋さんって湯気すごいもんね。メガネかけてるとめっちゃ曇るよね。」
「そうなんだよ。食べるたびにメガネ外さないといけないから、落ち着かなくてさ。」
「私の友達もメガネでよくラーメン行くけど、曇り止めスプレー使ってるみたいだよ。」
「そんなのがあるのか…使ったことないけど、便利そうだな。」
「うん、シュッとするだけで曇りづらくなるから、冬には重宝するって言ってた。」
「今度試してみるよ。今日はこのまま食べるしかないけど。」
「ラーメン美味しそう!食べ終わったら感想教えてね。」
「了解、ありがとう。」
メガネを横に置き、少しずつラーメンを食べ進める。スープのコクがしっかりしていて、バターの濃厚さが絶妙だ。コーンの甘さがアクセントになり、疲れた体にじんわりと染みわたっていく。
「うん、これはうまい…」
ふと、隣の席に座っていたサラリーマンもメガネを外して食べているのを見かけた。どうやら同じように曇りとの戦いを繰り広げているようだ。
「やっぱり、みんな同じなんだな…」
気を取り直して、麺をすすり、スープを飲み干す。体がぽかぽかしてきて、寒さも吹き飛んだ気がした。
「やっぱり寒い日はこれだな。」
食べ終わり、店を出ると、冷たい風が顔に当たって少し身震いする。温まった体に急に冷気が染みるが、心地よさも感じた。スマホを取り出し、ひとみに報告する。
「食べ終わったよ。めっちゃ美味しかったけど、やっぱりメガネ曇りっぱなしで大変だった。」
「お疲れさま!でも、美味しくて良かったね!」
「うん、次は曇り止めスプレー買っておこうかな。」
「そうだね!冬のラーメンは曇りとの戦いだからね。」
「三木さんも今度一緒に食べに行こうよ。おすすめのお店もあるし。」
「いいね!私もラーメン大好きだから楽しみ!」
そのやり取りが自然と心を温めてくれる。ラーメンの温かさとひとみの優しさが重なり、冷たい夜風も気にならなくなった。
「今日はこれで良かったかもな…」
少しずつ歩き出し、空を見上げる。星がちらちらと見えて、街の喧騒が心地よい音として耳に届く。些細なトラブルも、ひとみと共有すれば楽しい思い出になる。それがどれだけありがたいことかを噛みしめながら、家路を急いだ。
「次は、曇り止め対策して挑もう。」
またひとつ、小さな教訓を胸に、少しずつ前進していく。温まった体と心が、明日へのエネルギーになっている気がして、自然と足取りが軽くなった。
終
「寒い中歩いてきた甲斐があったな…」
カウンター席に座り、注文したのは店一番人気の「味噌バターコーンラーメン」。熱々のスープにバターがとろりと溶け、香ばしい味噌の匂いが食欲をそそる。少し混んでいたが、ようやく順番が回ってきた。
「お待たせしました、味噌バターコーンラーメンです!」
湯気が立ち昇り、バターがキラキラと表面を照らす。裕基は箸を取り、一口目のスープをすする準備をした。しかし、その瞬間——
「ふわっ」
メガネが一気に曇った。
「うわっ…見えない!」
咄嗟にメガネを外し、服の袖で拭き取る。スープの熱気が直接レンズに当たったせいで、完全に視界が白くなってしまった。
「やっぱり、こうなるか…」
再びメガネをかけ直し、今度は少し顔を引きながら麺をすする。だが、またもや湯気が直撃し、レンズが曇る。
「ちょっとしたトラップだな…」
メガネをかけたまま食べようとするが、どうにも湯気に勝てない。結局、メガネを外して食べることにした。視界が少しぼやけているが、熱々のスープが体をじんわりと温めてくれる。
「こういう時、コンタクトの方が良かったかな…」
メガネを置きながら、ふとスマホを取り出し、ひとみにメッセージを送る。
「ラーメン食べに来たら、湯気でメガネが曇ってさ、全然見えない。」
すぐに返信が来た。
「それ、あるある!ラーメン屋さんって湯気すごいもんね。メガネかけてるとめっちゃ曇るよね。」
「そうなんだよ。食べるたびにメガネ外さないといけないから、落ち着かなくてさ。」
「私の友達もメガネでよくラーメン行くけど、曇り止めスプレー使ってるみたいだよ。」
「そんなのがあるのか…使ったことないけど、便利そうだな。」
「うん、シュッとするだけで曇りづらくなるから、冬には重宝するって言ってた。」
「今度試してみるよ。今日はこのまま食べるしかないけど。」
「ラーメン美味しそう!食べ終わったら感想教えてね。」
「了解、ありがとう。」
メガネを横に置き、少しずつラーメンを食べ進める。スープのコクがしっかりしていて、バターの濃厚さが絶妙だ。コーンの甘さがアクセントになり、疲れた体にじんわりと染みわたっていく。
「うん、これはうまい…」
ふと、隣の席に座っていたサラリーマンもメガネを外して食べているのを見かけた。どうやら同じように曇りとの戦いを繰り広げているようだ。
「やっぱり、みんな同じなんだな…」
気を取り直して、麺をすすり、スープを飲み干す。体がぽかぽかしてきて、寒さも吹き飛んだ気がした。
「やっぱり寒い日はこれだな。」
食べ終わり、店を出ると、冷たい風が顔に当たって少し身震いする。温まった体に急に冷気が染みるが、心地よさも感じた。スマホを取り出し、ひとみに報告する。
「食べ終わったよ。めっちゃ美味しかったけど、やっぱりメガネ曇りっぱなしで大変だった。」
「お疲れさま!でも、美味しくて良かったね!」
「うん、次は曇り止めスプレー買っておこうかな。」
「そうだね!冬のラーメンは曇りとの戦いだからね。」
「三木さんも今度一緒に食べに行こうよ。おすすめのお店もあるし。」
「いいね!私もラーメン大好きだから楽しみ!」
そのやり取りが自然と心を温めてくれる。ラーメンの温かさとひとみの優しさが重なり、冷たい夜風も気にならなくなった。
「今日はこれで良かったかもな…」
少しずつ歩き出し、空を見上げる。星がちらちらと見えて、街の喧騒が心地よい音として耳に届く。些細なトラブルも、ひとみと共有すれば楽しい思い出になる。それがどれだけありがたいことかを噛みしめながら、家路を急いだ。
「次は、曇り止め対策して挑もう。」
またひとつ、小さな教訓を胸に、少しずつ前進していく。温まった体と心が、明日へのエネルギーになっている気がして、自然と足取りが軽くなった。
終



