ランディがジスランが倒した(?)ウルフの皮を剥いでくれ、すべての討伐課題を終えた。
 そして、僕が回復ポーションを作り、アメリアが毛皮のなめしを行っていたのだが、回復ポーションは残りわずかだったので僕の方が先に終わった。
 残っているのは毛皮のなめしなため、別に寮や実習室でもできるのだが、せっかく外に出たということで僕とマリーでランディに空間魔法と身体の汚れを取る魔法を教えていく。

「こんな感じか?」

 ランディが魔法を使うと、汚れている服が綺麗になった。

「そうそう。そんな感じ」
「あなた、器用よね」

 そんなに難しい魔法じゃないとはいえ、早い。

「次は空間魔法を教えてくれ」
「ご飯を食べたらね」
「アメリア、昼食にしましょう」
「そうですわね」

 僕達は魔物も出ないのどかな風景を眺めながら昼食の弁当を食べる。

「本当にピクニックになったね」
「せめて冒険って言いましょうよ」

 マリーが苦笑いを浮かべた。

「じゃあ、冒険だ。アメリア、毛皮の方はどう?」
「ウィルが作った分を合わせて、5枚を終えました。夕方までには終わりますわ」

 本当に今日中で終わりそうだ。

「特別実習がこんなに早く終わったのは良いね」
「まあ、難易度がそこまで高くない課題でしたからね」

 確かにね。

「多分、少しずつ難易度が上がるんじゃない? 最初だし、お試しって感じがする」
「あと、不正の有無の確認だろうな」

 そうかもしれない。

「チームは引き続き、この4人でいい?」

 ちょっと不安なので確認。

「問題ないでしょ」
「わたくしもこの4人で良いと思います」
「解散したいって言ったら絶望した顔になるくせに」

 しないよ。
 多分……

 僕達は昼食を食べ終えると、午後からも毛皮のなめしと魔法のレクチャーをしていく。
 そして、3時過ぎくらいになると、ランディも空間魔法を使えるようになった。

「うーん……なんかそんなに量が入らない気がするな」
「それは慣れだね」
「うん。誰しもがそうよ。徐々に慣らしていって、収納量を増やしていくの。ただ魔力量で上限もあるけどね」

 地味にMPが無限の僕はその上限がないんだよな……
 それだけでチートだったりする。

「なるほどな。暇があったら練習しとくわ。アメリア、そっちはどうだ?」

 ランディがアメリアに聞く。

「え? あ、すみません。終わってますわ」

 終わってたのか……

「どれどれ」

 アメリアがなめした毛皮を見ていくが、どれもさらさらふわふわであり、暖かそうだ。

「全部Eランクよ。問題ないわ」

 ずっと見ていたエリーゼが教えてくれる。

「そっか。じゃあ、これで討伐課題も納品課題もできたね。事務に行く?」
「時間もあるし、そうしましょうよ」
「そうすっか」
「良いと思いますわ」

 僕達は帰ることにし、片付けをすると、歩いていく。
 そして、門を抜け、さらに歩くと、学校に戻ってきた。

「土曜なのに結構人がいたね」

 朝はまったく見かけなかったが、帰りはすれ違ったり、採取している生徒を見かけた。

「1年もいたが、ほとんどが先輩方だな。自主練なり何なりだろ」

 あ、先輩だったか。
 授業中に見かけないからわからなかった。

「自主練って大事なんだろうね」
「当たり前だな。まあ、お前が一番やってるけどな」

 そうかもなーと思いながら歩いていき、事務にやってきた。
 すると、学園長がいたので受付に向かう。

「こんにちは」
「こんにちは。チームの4人でどうしたの? 質問か何か?」
「特別実習の課題が終わりましたので報告に来ました」
「え? もう終わったの? まだ1週間も経ってないけど……」

 確かに経ってないな……

「皆で協力して頑張りました」
「そう? じゃあ、提出をお願い」

 学園長がそう言ったので僕がポーションを出していき、アメリアが毛皮を出す。
 さらにはランディがウルフの牙を出し、マリーがスライムの核を出した。

「ちょっと待ってね。確認するから」

 学園長が一つ一つを手に取り、確認していく。

「他のチームでもう終わっているところはありますか?」
「さすがにないわよ。ちなみにだけど、あなた達は素材を買わなかったの?」
「学ばないといけないので自分達で集めようと思いました」

 そう答えると、3人も頷いた。

「そう、それは良いことね。さて、すべて確認しました。確かに課題はできているわ」

 やったね。

「良かったです」
「課題の数やランクも規定に届いているし、時間も早い。素晴らしいわね」

 時間も得点になるのか……

「ありがとうございます」
「この調子で頑張ってね。あと、通常の授業をちゃんとするように」
「わかってます」
「よろしい。では、報酬を払うわ」

 ん?

「報酬ですか?」
「当たり前でしょ。この討伐証明を冒険者ギルドに持っていったらお金が出るわ。もちろん、ポーションや毛皮もお店で売れる」

 そうかもしれないが、学校からお金が出るという発想がなかった。

「いいんですか?」
「ええ。実践的でしょ? 素材や討伐証明をお金で買っている生徒もいる。中には毛皮を買った生徒もいるわ。この課題はどれだけ儲けを出したのかというのも得点になるのよ。さすがにないと思うけど、Aランクのポーションや毛皮を持ってきたらさらに加算されるわ」

 それはつまり……

「討伐証明もですか?」
「ええ。スライムを50匹以上、ウルフを10匹以上倒したらそれだけ加算される。ただし、時間との兼ね合いね。もちろん、通常授業のこともあるわ。その辺りを見極め、自分達なりのベストを出してちょうだい」

 そういうことか……
 思ったより、深い実習だな、これ……

「わかりました」
「はい。では、報酬」

 学園長はそう言って、金貨12枚を置く。

「4人だし、一人金貨3枚でいい?」

 後ろの3人に確認すると、皆が頷いたので金貨3枚を渡していった。

「そこで揉めない辺りも良いチームだと思うわ」

 揉めるところは揉めるんだろうな……

「揉めないようにしたいと思います。では、これで失礼します」
「次の特別実習は中間試験の後だから頑張ってねー」

 学園長に見送られ、外に出た。
 そして、皆が足を止め、顔を見合わせる。

「なんか考えさせられる実習だったね」
「そうね。別にあれ以上納めても良かったわけよ」
「そうだな……」
「とはいえ、わたくしはそこまでできませんわ。勉強があります」

 そうなんだよね。
 アメリアに限ったことじゃない。

「今後は最初にそういった相談をしてからになるね」
「ええ。それが良いと思う」
「とはいえ、その前に中間試験だな。頼むぞ、ウィル」

 ランディが僕の肩に手を置く。

「ありがとう、ウィル」

 マリーも空いている肩に手を置いた。

「アメリア、せっかくチームになったんだし、中間試験に向けて皆で勉強会をしない? 僕、自慢じゃないけど、勉強は得意なんだよ」
「勉強会ですか? いいんですの? 間違いなく、わたくしが足を引っ張りますわよ?」

 落第されたら困るんだよー。

「チームじゃないか。一緒に頑張って、また一緒に特別実習を受けようよ」
「さすがはわたくしの宿命のライバルですわ。ぜひ、お願い致します」

 まだライバル設定が生きてたの?

「じゃあ、そうしよう」

 僕達は勉強会を開くことを決めると、寮に戻り、解散した。