マリーと話をした土曜が終わると、日曜になる。
 この日は寮を出ずにエリーゼのぬいぐるみ作りと魔法科の方の勉強をして過ごした。
 ランディに魔法科の教科書を見せてもらったが、昔勉強した内容だったし、以外と覚えていたのでこれなら何とかなりそうだった。

 そして、休みも終わり、月曜になると、朝食を食べ、錬金術科の教室に向かう。
 すると、既に他の生徒と共にアメリアがいつものど真ん中最前列に座っていたので隣に座った。

「おはよう」
「おはようございます。また1週間が始まりましたね。今週も頑張っていきましょう」
「うん。そうだね」
「時にウィル。先週もらったエリーゼさんのぬいぐるみなんですけど……」

 ん?

「どうかしたの?」
「土曜の夜にマリーさんから市場の方の雑貨屋に卸したと聞きました」
「そうだね。10種あるんだよ。エリーゼ達が並んでいて可愛いよ」

 なお、まるでエリーゼの子供達のようだねって言ったら怒られた。

「それはさぞ可愛らしいと思います。そう思って、昨日、雑貨屋に行ってきましたが、売り切れてましたわ」

 え? 早い……

「そんなに人気だったのかな?」
「可愛かったですからね。私も部屋のデスクに並べようかと思ってました」
「じゃあ、あげるよ」

 空間魔法からエリーゼ達9匹を並べていく。

「まあ、可愛い! いいんですの?」
「うん、せっかくだしね。寮の人にも勧めておいてよ」
「なるほど。営業ですか。わかりましたわ」

 アメリアは頷くと、空間魔法でエリーゼ達を収納していく。

「そうなると、また卸しに行かないとな……」
「店長さんとお話をし、ウィルの友人ですって言ったらできたら今週のどこかで持ってきてほしいって伝言を頼まれましたわ」

 あ、そうなんだ。

「わかった。持っていくよ」
「それがいいですわ」

 アメリアが頷くと、ダニエル先生が入ってきた。

「おはようございます!」
「はい、おはよう。約1名は相変わらず元気だな」

 ホントにね。

「さて、今週も授業をするが、先週行ったように特別実習が始まる。昨日が締切だったが、皆、チームを組めたようで良かった。ちなみにだが、チームの変更はいつでも受付けているからその時はちゃんと事務に申請するんだぞ」

 え? いいの?

「先生、そういうのもありなんですか?」

 いつものようにアメリアが聞く。

「その辺りも自由だ。それでは特別実習について軽く説明する。この特別実習についてだが、実はやらなくても問題ない」

 ん?

「はい?」

 アメリアが首を傾げた。

「特別実習では各チームに課題が出され、それをチームでこなしていくことになるが、別に達成できなくてもやらなくても本来の成績には関係ない。すなわち、特別実習を一切行わなくても卒業は可能だ」

 じゃあ、誰もやらないのでは?

「先生、意味がわかりません」
「まあ、聞け。この特別実習は陛下より提案があったものだ」

 この言葉に少しざわつく。

「どういうことでしょう? まったく聞いておりませんが?」

 僕も聞いてない。

「これまで各学校では座学や実習といった授業を行ってきた。だが、それが実際の実務に即しているかというとそうでもない」

 まあ、それはね……

「そこでそういった実践的な課題を出していこうとなったのが、特別実習だ。とはいえ、いきなり始まったことだし、これをカリキュラムに取り込んで成績を出すのは危険と判断したのでまずはお試しでやってみようとなったのだ。だから成績には加味しない」

 よくわからないもので落第なんて納得できないからだな。

「それでは積極的に行わない生徒が多いのでは? 正直、わたくしもそれに時間を当てるなら苦手な座学に時間を当てたいです」

 ごもっとも。

「そうだな。先生はお前のその苦手を克服しようとする姿勢は大変良いと思う。しかし、もちろんだが、この実習を行うメリットはある。まずは先ほど言ったように実際の実務に即した課題を出すので単純にお前達のスキルアップに繋がる。また、これは1人ではなく、チームでやるため、お互いで協力していくことは必ずや自分の成長に繋がるだろう」

 まあ、それは否定しないが……

「それだけですの?」
「いや、まだある。特別実習の成績が良い者は陛下並びに魔法学校からお墨付きがもらえるわけだな。要は特別実習で大変良い成績を収めた生徒ですという陛下のサインが入った推薦状を魔法学校が発行するんだ」

 それ、すごいのでは?
 どこの人事が陛下のサインが入った推薦状を持つ人間を不採用にするんだよ。

「それは一番成績の良い生徒ですか?」
「いや、基準に達していれば誰にでも出す。もちろん、推薦文が多少変わると思うがな」

 ほー……

「わかりました」
「よろしい。そういうわけで本日より、特別実習が始まる。それぞれ昼休みでも放課後でも構わないので事務に行き、課題を受け取るように。また、特別実習は実習の時間を使っても良いこととするが、特別実習ばかりにかまけて、肝心の授業を怠り、試験で良くない成績を取るという本末転倒なことがないように注意すること。あくまでも優先すべきは通常の授業だ。その辺りもチームでよく相談すること」

 チームを変えてもいいっていう理由はこれだな。
 どうしても成績に差が出るから足並みを揃えるのが難しくなるからだろう。

「……どうします?」

 アメリアが小声で聞いてくる。

「……放課後に寮の前に集まって事務に行こう。ランディには昼休みに伝えておく」
「……わかりましたわ。わたくしもマリーさんに伝えておきます」

 アメリアが頷くと、授業が始まったので先生の言う通り、そちらに集中することにした。