翌日、食堂で朝食を食べると、ランディと共に校舎に向かった。
そして、教室の前で別れ、中に入る。
すると、他のクラスメイトはいつものように僕よりも早く来ていたのだが、アメリアも先に来ており、いつもの一番前のど真ん中の席に座っていた。
いつものように窓際の席に行こうと思い、アメリアの前を横切る。
「おはようございます!」
「お、おはよー……」
急に挨拶が来たものだからびっくりして足が止まってしまった。
「どうしましたか?」
アメリアが首を横に傾げる。
「あ、いや……と、隣、いいかな?」
「ええ。どうぞ」
アメリアがにっこり微笑んだので隣に腰かけた。
「今日は早いね?」
「寮生活にも慣れてきましたしね。少し早めに寝ることにしたんですの」
僕は昨日も0時を超えていたね。
「あ、あのさ……アメリアは特別実習のチームを決めた?」
「それがまだですの。付き合いのある魔法科の友人達に誘われはしましたが、どうしようかと……わたくしは錬金術科ですし、魔法科の中に入っても良いものかと悩んでしまいます」
はたして、錬金術科のクラスメイト諸君はアメリアを入れてくれるだろうか?
アメリアが悪い人ではないことは皆、わかっているだろうが、大貴族のル・メールということ考えると、気が引けるのも確かだ。
あ、僕は論外ね。
「良かったらチームを組まない?」
「ウィリアムさんとですか?」
「うん。僕と魔法科のランディとマリーアンジュさん。知ってる?」
「ランディさんは存じ上げませんが、マリーアンジュさんは知っていますわ。昨日、食堂でお隣でしたので軽くお話をしました」
おー、マリー。
そっちでも動いてくれたのか。
「そのマリー。アメリアが入ってくれると、マリーも嬉しいだろうし、僕達も心強いかなーと……」
「ふーむ……」
アメリアが悩みだした。
どうやら即否定っていうことではなさそうだ。
「ダメ?」
「ダメと言うこともありませんが、わたくし達はライバルでしょう?」
君が一方的に言ってるだけね。
「アメリア、ライバルというのは争うだけじゃないわ。時に協力し、共に高め合うのがライバルよ」
エリーゼが言ってたように援護射撃をしてくれる。
「なるほど……」
この子、本当に素直だな……
もしかして、こんな感じで悪い意見を取り入れてしまって闇落ちするのかもしれない。
「僕はさ、家を出て、貴族じゃなくなったけど、それでも国や人々のための役に立つ仕事をしたいと思っている。一緒に頑張ろうよ」
便乗しとこ。
「ウィリアムさん……とても立派ですわ!」
声が大きいよ……
「そ、そうかな?」
「本来、貴族はそうでなくてはなりません! 実に素晴らしいお考えです! わたくし、感銘を受けました!」
ものすごく心配になる子だ……
「一緒に頑張ろう」
「平民と他国の貴族もいるし、知見を広めるのも大事よ?」
「その通りですわ! 他に考えられないような気がします!」
う、うん。
「じゃあ、4人でチームを組むということで……」
「わかりました。時にランディさんとはどういう御方でしょうか?」
知らないって言ってたね。
まあ、貴族でもないし、科も寮も違うランディは知らないか。
「あ、それでね、チームを申請する前に顔合わせをしようってことになってるんだよ」
「良いと思います。いつですか?」
えーっと?
「今日の放課後とか?」
「ふむふむ。わたくしは空いておりますわ」
「じゃあ、他の2人にも声をかけておくね」
「よろしくお願いします」
アメリアはそう言って、何故かエリーゼを撫でる。
握手の場面じゃないのかね?
アメリアの勧誘に成功すると、先生がやってきたので座学の授業が始まった。
この日も予習したとおりだったし、そこまで難しい内容ではなかったので特に詰まることはなかったが、隣のアメリアは首を傾げていた。
これはどうにかしないとなと思いながら授業を受け続け、午前中の座学が終わったので寮に戻り、ランディと昼食を食べる。
「アメリアはどうだった?」
ランディが早速、聞いてくる。
「了承してもらえたよ」
「おー、さすがはウィル」
何がさすがなの?
「どうも。それで放課後に顔合わせをしたいんだけど、大丈夫かな?」
「俺はいいぞ。多分、大丈夫だと思うが、マリーにも声をかけておいてやろう」
「お願い」
魔法科は午後から特別訓練施設の奥で実習だろうし、会いに行けない。
まあ、行けても魔法科は怖いんだけど。
「場所はどこにする?」
「放課後だし、どっかの教室でいいんじゃない? 先生に聞いてみるよ」
「わかった。じゃあ、寮の前に集合でいいな?」
それがわかりやすいか。
「うん、それで」
「了解」
その後、昼食を食べ終えると、それぞれ午後の授業のために実習室に向かう。
錬金術科ではこの日もダニエル先生が魔力コントロールを教えていたが、もうその生徒も半分くらいになっており、もう半分の生徒はポーション作成に入っていた。
僕はアメリアと同じテーブルでポーションを作っていたのだが、そろそろギザギザ草が切れそうなことに気が付いた。
「先生、採取に行ってもいいでしょうか?」
「いいぞ。気を付けてな」
先生からの許可を得られたのでエリーゼを抱える。
「あ、ウィリアムさん、わたくしも行きます」
アメリアが立ち上がった。
「アメリアも切れそうなの?」
「まだ大丈夫ですが、土日もやろうかと思っているので補充しておきたいんです」
なるほど。
アメリアって本当に努力家なんだな。
「じゃあ、一緒に行こうか。品質の良し悪しの見極め方や採取の仕方が書いてある本があるから貸すよ」
「ありがとうございます」
僕達は実習室を出ると、特別訓練施設に向かった。
