「僕と? 魔法科の友達と組まないの?」
「さっきも言ったろ。まだマウント合戦だし、打ち解ける段階じゃないんだ。その中でも話す奴とかはいるが、一番仲が良いのは誰かって言われたらお前だし」

 そうなんだ……

「錬金術科だけどいいの?」
「そこだよ。特別実習の内容がよくわからないし、勉強もできて、ポーションも作れる使い魔持ちの元魔法使いはそういうのに強いと思うんだよ」

 あ、そういう打算もあるわけだ。

「ふーん……」
「あと、俺がお前と組まないとお前が誰と組むんだと考えた時にちょっと気持ちが暗くなった」

 その感情が嫉妬ではないことははっきりわかっている。

「正直ね、いまだにランディ以外とまともにしゃべってない。僕がそこまで社交的でないこともあるけど、それ以上に目が合わないんだよね」

 寮でもクラスでも……

「アシュクロフトの評判がなー。話せば真面目な奴ってわかるんだが……」

 その挽回ができるほどのコミュ力がないのが僕だ。

「まあ、それは覚悟の上で来てるよ。王都やアルゼリーの町の学校だったらもっとだと思うし」

 この町は南の辺境の町だからまだマシだろう。

「まあな……それで俺と組むか? どうする?」
「エリーゼ、組んだ方が良いかな?」

 一応、確認してみる。

「あんた……誘われる側になった途端に大きく出たわね。誘いにきたんでしょうが」

 うん……

「ランディ、組もうか」
「ああ。それで最低でもあと1人。5人までだから2、3人いけるがどうする?」

 そうなんだよなー……

「僕、錬金術科で組んでくれそうな人がいない」
「魔法科には何人かいるが……やれそうか?」
「向こう次第、かな……」

 嫌われているというか、避けられてる側だからどうしようもない。

「無理だな、これ……」
「無理でしょうね。そもそもウィルは若干、人間不信なのよ」
「そうなのか?」
「ちょーっと色々あってね。人間関係の距離感に迷っている多感の時期なのよ」

 僕、思春期ですかね?
 そう聞こえるんだけど……

「そうか……そうなると、一人しか浮かばんな」
「私もそれ。ウィルが唯一、自分から積極的に話しかける子」

 え? 2人は思いついてるの?

「誰?」
「「マリー」」

 あー……

「まあ、そうかも……他国の子だし、そんなにアシュクロフトの評判を気にしてなさそうだしね」

 恩もある。

「マリーが組んでくれたら3人になるから人数には足りるぞ」
「まあねー……でも、組んでくれるかな? 女子だよ?」

 女子は女子で組みそうな気がする。

「それは聞いてみるしかないな」
「聞いてみてよ」
「は? いや、お前が聞けよ」

 え?

「なんで? 同じクラスなんでしょ?」
「お前の知り合いだろ。クラスメイトだけど、俺はお前に紹介されたんだぞ」

 一昨日の入学式の前に3人で話したけど、あれは紹介と言うのかな?

「ウィル、あんたが誘うの」

 そ、そうなんだ。

「わかった……しかし、どうやって誘おう? 女子寮には行けないし、魔法科のクラスに行くのも気が引けるんだよなー」

 ちょっと怖いもん。

「俺がウィルが話があるって通しておいてやるよ」

 いや、その際に誘えばいいのでは?

「じゃあ、お願い。もし、頷いてくれたら3人でいい?」
「俺はな。向こうが友人を入れたいと言ったらわからんぞ。俺達みたいにもう組んでいるかもしれないし」

 それはそうだな。

「もし、その場合はどうすればいいかな?」
「お前が決めろ。俺は人数内なら問題ない」

 あ、問題は僕なのか。

「わかった。とにかく、聞いてみるよ」
「じゃあ、それで。よし、飯に行こうぜ」
「そうだね」

 僕達は1階の食堂に行き、夕食を食べた。
 そして、部屋に戻ると、昨日と同じようにポーションを作っていく。

「それはEランクね」

 一つできると、エリーゼが品質を教えてくれる。

「素材が良いと、安定してEランクを作れるよ」

 品質の悪いギザギザ草だとFランクだ。

「早くDランク以上を作れるようになると良いわね」
「そうだね」

 この日も0時までポーションを作っていき、就寝した。

 翌日。
 朝から教室に行き、授業を受けると、午後からは実習となったので採取を行った。
 そして、十分なギザギザ草を採取し終えたので実習室に戻ると、ポーションを作っていく。

「うーん、エリーゼさん、どうでしょうか?」

 対面で同じようにポーションを作っているアメリアがエリーゼに聞く。

「Fランク」
「そうですか……中々、Eランクを作れませんね」

 どうでもいいけど、ウチの子が鑑定員になってるな。

「素材も良くないし、あんたは錬金術ができるようになったばかりでしょ。ちゃんとしたポーションができるだけでもすごいわよ」
「そうですかね?」
「そうよ。あんたは魔法も優秀なんでしょうし、上手に作れてるわ。あとは経験。作って作って、作りまくることね」

 ウチの子が教師みたいになっている……
 まあ、ダニエル先生が他の生徒の魔力コントロールの指導に集中しているからだろうけど。

「そうします。時にウィリアムさん」
「…………え? 僕?」

 アメリアは僕をはっきりと見ている。

「はい」

 あ、僕か。
 エリーゼと話してたから完全に油断していた。

「何?」
「特別実習で組む相手はどうされました?」
「とりあえず、寮で正面の部屋の魔法科のランディと組むことにした。あと、向こうがどうかはわからないけど、同じく魔法科のマリーを誘おうということになってる」
「マリー? リット王国からの留学生のマリーアンジュさんですか?」

 知ってるの?

「そうそう。縁があって知り合いなんだよ」
「……ここで友人って言えないのね」

 友人かどうか微妙なんだもん。

「なるほど……マリーアンジュさんですか」
「まだ話をしてないけど、わかんないけどね。アメリアはどうなの?」
「考え中です。しかし、魔法科という線もありますか……」

 この子、真面目だからなー。
 すごい悩みそうだ。

「特別実習がどんなのかわからないからね。あまり考え込まない方が良いよ」

 気付いたらもう皆、誰かと組んでいるということになりえるし。

「うーん……」

 聞いてないね……