アメリアのポーション作成を眺めていると、ダニエル先生が教壇に戻る。

「さて、時間だし、本日の授業は以上だ。明日も今日と同様に午前中に座学をし、午後から実習となる。基本的にはこの流れで進んでいくが、本校には特別実習というものがある。これは今年から始まったことなので事前に配った資料には書いてないため説明しよう」

 そういえば、前にそんなことを言ってたね。

「特別実習というのは簡単に説明すると、チームを組み、課題に挑戦してもらうということだ」

 チーム……

「先生、チームと言いますと?」

 やっぱりアメリアが質問する。

「具体的な人数は決まっていないが、3名から5名だ。それで先生達がそのチームを見て、課題を決めることになる」

 班でやる合同実習か。
 専門学校の時にやったな。

「チーム分けはどうされるんですの?」
「お前達が自由に決めてくれ。魔法科の生徒と合同になるし、別に誰でもいいから3名から5名の間で適当に組んでくれ。決まったら事務室に行って申請すればいい」

 ん?

「あの……学校側で決めるんじゃないんでしょうか」

 大事なことなので手を上げて確認する。

「その案もあったんだが、正直、お前らって、貴族やら平民やらとめんどくさい。しかも、他国まで入ってくる。好きな奴と組みなさい」

 僕と組んでくれる人、いる?
 ああ……これが体育で好きなやつと組めっていうやつか……

「魔法科でもいいんでしょうか?」

 ランディ、ランディ、ランディ……

「誰でもいいぞ。次の日曜までに決めてくれ。特別実習は来週からになるからな。では、解散」

 ダニエル先生は一方的のそう言って帰ってしまった。
 生徒達はお互いの顔を見渡したりしているし、アメリアは腕を組んで、首を傾げている。

「帰ろうか」
「そうね」

 エリーゼを抱えると、実習室を出て、階段を降りていく。

「予想外なことになっちゃった」
「チームでの合同実習とはねー……」

 クラスメイトとこの距離間のままでいこうと思っていたのだが、そうはいかなくなってしまった。

「最低でも3人……エリーゼを頭数に入れたらダメかな?」
「私は生徒じゃないしね」

 だよね……

「もしこのままメンバーを集められなかった場合はどうなるかな?」
「そりゃ空いているチームに入れられるんじゃない?」

 僕もそう思う。

「好きで集まった3人とか4人の中に評判が良くない僕が入るの? いじめられるとは言わないけど、ものすごい腫れ物扱いになるのが目に見えてる」
「私も見えてる。そこで挽回できるほどあんたにコミュニケーション能力がないのもわかっている」

 僕だって話しかけられたり、用がある場合は話を返せるけど、積極的に声をかけるのができないことに気が付いている。

「前世でも友達がいたけど、地味にこっちから話しかけてない気がする……」
「まあ、そういうタイプの子もいるわよ。それでどうするの?」
「とりあえず、ランディを探ってみる」

 とはいえ、ランディはコミュニケーション強者だ。
 もしかしたらもう組んでいるかもしれない。

「探るって……普通に聞けば?」
「悪い。もうクラスの奴と組むことになったわって言われたらよそよそしく返す自信がある。『あ、そうだよね……うん、じゃあ、僕もクラスの子と組もうかな……』」
「よそよそしいというか、痛々しい……」

 友達いないもんね。
 だって、寮という共同生活をしているのにランディとしかしゃべってないんだもん。
 次点が初日にちょっと話したジスラン。

「ね?」
「わかったわ……じゃあ、ランディの部屋に行ってみましょう」
「うん」

 僕達はちょっと急いで校舎を出て、寮に戻る。
 そして、自分の部屋に戻る前に正面のランディの部屋の扉をノックした。

「ランディー、いるー?」
『んー?』

 部屋の中からが聞こえてくると、すぐに扉が開き、ランディが顔を出す。

「あ、やっぱり帰ってたんだね」
「今日の実習は早めに終わったからな」

 マリーと一緒か。

「ちょっと話があるんだけどいいかな……」
「手をもじもじさせながら上目遣いになるなよ。お前さんが女子だったら勘違いするだろ」

 男子だからセーフ。

「いや、ちょっと聞きたいことがあるんだよ」
「まあ、入れよ。どうせ飯までには時間があるしな」

 ランディが勧めてくれたので部屋の中に入ると、ランディがベッドに腰かけたのでデスクの椅子を引き、座った。

「今日の実習はどうだった?」
「いやー、魔法を使ってみる実習だったけど、やっぱりマウント合戦だったな。おかげで一人倒れた」

 え!?

「大丈夫なの、それ?
「ただ魔力切れだ。無理して中級魔法を使おうとしたんだと。オリアンヌ先生曰く、毎年のことらしいし、そういうのも勉強だってよ」

 魔法科はバチバチしてるなー。

「ランディは大丈夫だったの?」
「そもそもそんな大層な魔法は使えねーよ」
「そっかー。マリーは? 特別訓練施設で採取してたら帰ってきたマリーに会ったけど」
「あー、最初だったからな。あいつは涼しい顔で魔法を放って終わりだ。すごかったのはジスランだな。口だけじゃないわ」

 さすがはグランジュ家ってところかな?

「ふーん……あのさ、特別実習のことは聞いた?」
「あー、実習前に聞いたな。今年から始まるカリキュラムだってな。最初に説明しとけって思うよな」

 うん。
 本当にうん。

「チームだってね。どういう実習なんだろうね?」
「さあ? 今年からだから先輩に聞いても意味ないし……なあ、俺と組もうぜ」

 ラ、ランディ君……!