(グループ活動なんて、なんの意味があるんだろう。)

 それは英語の授業のひとコマ。

 2人一組でグループになってお互いの性格について話し合い、それについての感想を英語で書くという内容だった。

(ダル。
 こういう時にヒカリが居ないと困るんだよね。)

 マサキの所に行こうとして椅子から立ちあがった私は、目の前に大きな背中と小さな背中を見つけた。

 小さな背中はクズヤ。
 大きな背中はレイカだった。

 レイカは身長が180センチ。  
 縦幅もあるけど横幅もあって、かなり存在感がある。
 ただ、性格は臆病でイジられやすく、いつも教室の隅っこでお弁当を食べている印象だ。

(やだ。この二人も?)

 マサキの机に向かう一角で、レイカとクズヤと私の三人が鉢合わせした。
 
「あ!」

 クズヤが小さく声を出した。
 レイカも私の行動を理解したようで、表情が固まった。

 どうもこの二人と私は、考えていることが一緒のようだ。

(サイアク…!)

 そういえば、今朝アプリで見た十二星座占いで牡羊座は最下位だった。
 クズヤが上目遣いに私を見て引きつった笑いを見せた。
 
「もしかして、田中さんとレイカもマサキと組んでもらうつもりだった?」

 マサキに組んでもらう?

( 違うでしょ。
 私がマサキと組んであげようとしてるんだけど? )

 私はイラッとしながらにこやかに返答した。

「ううん。まだ決めてないよ。 
 誰か居ないかなと思って歩いただけだよ。」

「じゃあ、私と組まない?」

 レイカが間発入れずに提案してきた。

「私も困っていてマサキさんにお願いしようとしてたけど、マサキさんはクズヤさんと仲良いもんね。
 あは、私たちちょうど良かったね。」

「だねぇ…。」

 意外とレイカは自己主張が強めのようだ。

(一軍の私と底辺のアンタと一緒にしないで。)

 腹の底からそう言いたかったけど、もう断れる雰囲気ではない。

(もしかして、マサキのほうから私に声をかけてくれないかな?)

 一縷の望みを込めてマサキを見ると、マサキが目を輝かせてこちらに走ってきた。

 ほらね、ザマァ。

 マサキは満面の笑みを浮かべる私の横を、華麗にスルーして駆け抜けて行った。

「クーちゃん、一緒に組もうよ!」

「もちろん!」

 マサキが選んだのはクズヤだった。

 レイカが私に話しかけてくる言葉が理解できないくらい、私の自尊心が音を立てて崩れていった。

 ♢

 英語でレイカの性格を書くために、私たちはお互いについて質問した。

「私は自分が積極的で自我が強いと思うけど、レイカはどう思う?」

 レイカは「うーん」と少し考えてから、ニッコリと笑った。

「田中さんは、明るいし優しいし素直な人だと思う。」

 思った通りの印象。
 私はレイカのアンサーに満足して、少し気を許すことにした。

「田中さんじゃなくて、名前でいいよ。」

「田中さんを名前で呼べるなんて、ヤバい、嬉しい。
 私も友だちが少ないから嬉しいよ。」

 私も?
 レイカの言い方はいちいち気に障る。

 無自覚なんだろうけど、失礼すぎ。
 だから友達が少ないんだろうな。 

「そうだ、今日の放課後は予定ある?」

 レイカが急に切り出した。

「街にメイク道具を買いに行きたくて。」

 私はレイカと電車で移動する姿を思い浮かべて冷や汗が出た。
 もし、昔の友だちに一軍には見えないレイカと居るところを見られたら…どう思われるかな?

 でも、口から出たのは逆の言葉だった。

「わぁ、楽しみ!」

 私は心の中で自虐ツッコミをした。

 私ってホントに、外面だけは良いオンナ。