輝は私の隣で一言も口を挟まずに、じっとしていた。


「……じゃ、お前がここにいるのは海のおかげだな」


そういって、輝はいつの間にか笑っていて、私の方を見てくる。


「そういうこと……」

「じゃあ、あかりは海に感謝しろよ?お前死んでたら、俺とお前出会ってねぇし、お前友達0人で人生終わってたぞ?」


輝はニヒヒと隣で相変わらず笑う。

輝は、なんていえばいいんだろう。
能天気と言った方がいいのだろうか。


「ほんと、輝って変わってるよ」


そういって、思わずクスクスっと笑ってしまった。


「あ、笑った」

「え…?」



あれ……私、笑えてる。
……ちゃんと笑えてる。

輝は私の方を見て笑顔を向け続ける。

その笑顔はキラキラと輝いていて、海みたいだって思った。

私を優しく包み込んでくれて、ただただ傍にいてくれる、海みたいだと思った。

この目の前の海みたいだと思った。


「さて、戻るか。ばあちゃんたち心配してるだろうしな」


そういって、輝がゆっくりと立ち上がった。
私もゆっくりと立ち上がる。

そして、輝と歩く夜道は、なんだか心が温かかった。

儚い星たちが、優しく私たちを包み込んでくれているような気がした。

この温かい気持ちの正体を私が知ることは、もう少し先になる。