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いつも通り目覚まし音で目が覚める私。
昨日の疲れはもう残ってはいなかった。
あのあと、漁師さんが輝をそのまま家につれていってた。
おじいちゃんとおばあちゃんが、崩れたお母さんを立ち上がらせ、私も、その後に続いて家の中へと入って、昨日の騒動は幕を閉じた。
きっと今日も、昨日と変わらない一日が始まるのだろう。
私は、背伸びをして体を伸ばす。
そして、自分の部屋を出て、おばあちゃんの手伝いをするため台所に立った。
ある程度、朝食が出来上がった頃には、6時。
私がお母さんを呼びにいく時間。
私は、重い足を引きずって、お母さんのいるであろう部屋の前までやってきた。
昨日からの今日だ。
まだ機嫌が悪いに決まっている。
でももしかしたら、いつも通りぼーっとしているだけなのかもしれない。
私はぐっと、自分を奮い立たせて、お母さんの部屋の襖をあけた。
だけど、そこには……誰もいなくて。
窓があいていて、そこからはいる風がカーテンを揺らしていただけだった。
なんでいないの?
私は、駆け足でおばあちゃんとおじいちゃんのいる居間へ戻った。
「おばあちゃん、おじいちゃんっ!お母さんがいない!」
私が部屋に入るなりにそういうと、二人とも何かしら作業していた手を止めて私の方を見てくる。
「本当かい?あかりちゃん」
おばあちゃんが、眉間にシワを寄せながら私に近づいてくる。
「うん……」
私が、そう返事をすると、おじいちゃんは手分けして探そうと提案する。
おじいちゃんは住宅街の方を、おばあちゃんは家の周辺を、私は海の方を探すことになった。
玄関を出た瞬間、駆け出すあたしたち3人。
どうにかして、私の登校時間までには間に合わせなければ。
そう思って私は、前だけ向いて走り出す。
朝の風はひんやりとしていて、とても気持ちがよかった。
海の音が聞こえたとき、私は足を止めた。
いた。
砂浜に。
見覚えのある小さな背中が、砂浜にポツンと座り込んでいた。
私は、息を整えてから、何も言わずにお母さんの隣に並んだ。
目の前に広がるキラキラと光る海が私の目に綺麗にうつる。潮風が私たちの髪を乱す。
「"あかり"って名前ね、私がつけたのよ。道しるべみたいに、誰かの前を照らせる子になってほしくて……そんな願いをこめて、あなたにあげた名前なの」
さっきまで、固く口を閉ざしていたお母さんがぽつりと、柔らかい口調で語り出した。
「あのこ……輝くんだっけ?よっぽどあなたのことが大切なのね。あのこと今朝、たまたま会ったのよ。そしたらね、頭下げて言うの。"あいつを愛してやって下さい"って……。あのこね、私の初恋の人に似てるわ」
そういって、お母さんは少しだけ笑みを浮かべた。
私が、お母さんの自然な笑みを見たのはこれが初めてだと思う。
「お母さんね、上京したばかりの頃、色々と失敗しちゃってね。そのときに、真人と……あなたのお父さんと出会ったの。あなたのお父さんは私に一目惚れしてね、結婚してくれるなら、この悲惨な状態をどうにかしてやるって言ったのよ。だから、結婚した。あの人、結果主義者だったから……私も、結局いつのまにか、あの人に染められていたのね。ごめんなさいね……あかり」
そういって、私を見上げてくるお母さんの頬には涙が光っていた。
人は何度も間違える。
その度に学んで立ち上がる。
大丈夫だよね。
もう、同じ間違いはしないよう、私が見守ろう。
ねぇ、お母さん。
これ、聞いてもいいかな?
「私を……生んでよかった?」
私、ここにいてもいい?
お母さんの隣にこれからいてもいいかな?
「……ええ、もちろんよ」
そういって、お母さんはくしゃっとした笑顔で笑ってくれた。
さあ、帰ろうか。
まだ、一日はこれから。
前を向いて歩こう。
ほら、今涙を脱ぐって……。
いつも通り目覚まし音で目が覚める私。
昨日の疲れはもう残ってはいなかった。
あのあと、漁師さんが輝をそのまま家につれていってた。
おじいちゃんとおばあちゃんが、崩れたお母さんを立ち上がらせ、私も、その後に続いて家の中へと入って、昨日の騒動は幕を閉じた。
きっと今日も、昨日と変わらない一日が始まるのだろう。
私は、背伸びをして体を伸ばす。
そして、自分の部屋を出て、おばあちゃんの手伝いをするため台所に立った。
ある程度、朝食が出来上がった頃には、6時。
私がお母さんを呼びにいく時間。
私は、重い足を引きずって、お母さんのいるであろう部屋の前までやってきた。
昨日からの今日だ。
まだ機嫌が悪いに決まっている。
でももしかしたら、いつも通りぼーっとしているだけなのかもしれない。
私はぐっと、自分を奮い立たせて、お母さんの部屋の襖をあけた。
だけど、そこには……誰もいなくて。
窓があいていて、そこからはいる風がカーテンを揺らしていただけだった。
なんでいないの?
私は、駆け足でおばあちゃんとおじいちゃんのいる居間へ戻った。
「おばあちゃん、おじいちゃんっ!お母さんがいない!」
私が部屋に入るなりにそういうと、二人とも何かしら作業していた手を止めて私の方を見てくる。
「本当かい?あかりちゃん」
おばあちゃんが、眉間にシワを寄せながら私に近づいてくる。
「うん……」
私が、そう返事をすると、おじいちゃんは手分けして探そうと提案する。
おじいちゃんは住宅街の方を、おばあちゃんは家の周辺を、私は海の方を探すことになった。
玄関を出た瞬間、駆け出すあたしたち3人。
どうにかして、私の登校時間までには間に合わせなければ。
そう思って私は、前だけ向いて走り出す。
朝の風はひんやりとしていて、とても気持ちがよかった。
海の音が聞こえたとき、私は足を止めた。
いた。
砂浜に。
見覚えのある小さな背中が、砂浜にポツンと座り込んでいた。
私は、息を整えてから、何も言わずにお母さんの隣に並んだ。
目の前に広がるキラキラと光る海が私の目に綺麗にうつる。潮風が私たちの髪を乱す。
「"あかり"って名前ね、私がつけたのよ。道しるべみたいに、誰かの前を照らせる子になってほしくて……そんな願いをこめて、あなたにあげた名前なの」
さっきまで、固く口を閉ざしていたお母さんがぽつりと、柔らかい口調で語り出した。
「あのこ……輝くんだっけ?よっぽどあなたのことが大切なのね。あのこと今朝、たまたま会ったのよ。そしたらね、頭下げて言うの。"あいつを愛してやって下さい"って……。あのこね、私の初恋の人に似てるわ」
そういって、お母さんは少しだけ笑みを浮かべた。
私が、お母さんの自然な笑みを見たのはこれが初めてだと思う。
「お母さんね、上京したばかりの頃、色々と失敗しちゃってね。そのときに、真人と……あなたのお父さんと出会ったの。あなたのお父さんは私に一目惚れしてね、結婚してくれるなら、この悲惨な状態をどうにかしてやるって言ったのよ。だから、結婚した。あの人、結果主義者だったから……私も、結局いつのまにか、あの人に染められていたのね。ごめんなさいね……あかり」
そういって、私を見上げてくるお母さんの頬には涙が光っていた。
人は何度も間違える。
その度に学んで立ち上がる。
大丈夫だよね。
もう、同じ間違いはしないよう、私が見守ろう。
ねぇ、お母さん。
これ、聞いてもいいかな?
「私を……生んでよかった?」
私、ここにいてもいい?
お母さんの隣にこれからいてもいいかな?
「……ええ、もちろんよ」
そういって、お母さんはくしゃっとした笑顔で笑ってくれた。
さあ、帰ろうか。
まだ、一日はこれから。
前を向いて歩こう。
ほら、今涙を脱ぐって……。



