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あれから、数週間後。
今までより、だいぶ心が軽くなっているような気がする。
相変わらず家のなかは窮屈で辛く思うことが多いけど、安心して居られる一人部屋で時々泣くようになった。
気持ちを溜め込みすぎず、泣いて消化していく。私は思ったより泣き虫だったようだ。
あと、よく笑えるようになったかもしれない。
楽しいと思えれば自然と笑顔になれて、莉紗に「紗奈なんか変わった?」と言われるようになった。
それほど、今まで心がいっぱいいっぱいでできていなかったことが多かった。
気付けなかったことがありすぎたのだ。
泣いたり、笑ったりすることってこんなに大事だなんて知らなかった。
笑ったりすると心が楽になれるって一度失って気づけた。
今が一番人間らしいかもしれない。
優真くんとは公園で話したりするようになった。
あの日、泣いている姿を見られて今更だけど、少し恥ずかしく思う。
あれが好きで、これが苦手だったり嫌いだったりとしょうもないと片付けられてしまうようなことを話して笑い合っていた。
気楽に居られて、居心地が良かった。互いに弱いブブを知ってしまったからかもしれない。
気づけば当たり前になって、今日も公園へ行く。
今なら公園のあの名前のとおり元気でいられているから。
空は雲ひとつなく、太陽が強い光を発していた。
「紗奈さんは、なんで自分は生きているんだろうって思ったことはある?」
優真くんは一足先に公園へ来ていてベンチに座るとそっと質問してきた。
「何度もあるよ。生きている意味があるのかなって」
「俺もある。なんで無意識に答えのない問を探してしまうのだろうな」
優真くんも私も無限に広がる空眺めながらぽつりこぼすように言った。
なんでだろう。私にも分からなかった。
ただ自然とそう思っていたから。
「もしかしたら、生きている理由が欲しかったのかもしれない。運命のような使命的なものがあったとすれば少しだけ辛い気持ちが軽くなるような気がするから」
「確かにそうかも知れない。けど、俺はもっとこう、なんて言ったらいいかな。生きづらい世界で窮屈な日々を送っていると日常がつまらなく感じて自分が生きているように思えないからっだったりするかもしれない」
そう考えうこともできるのかとびっくりする。
誰かと話したりしないと違う意見のようなものを見つけられないと思った。
「生きるって難しいね。答えはわからないけど、さっき言ったことと似たようなものが無数に存在ような気がする」
「確かに。変わらないようで変わっていく毎日をなんとか頑張っていると生きていることが疲れてくるから」
人生はなるようにしかならないことの方がきっと多い。
子どもの私たちじゃあ、まだまだ未熟で感じていないだけの部分があるのかもしれない。大人になったら別のことで悩んだり苦しだりするだろう。
「優真くんと私の生きる目標みたいなもの作るとしたらなにかな?」
「うんん......自分らしく、無理をしすぎず、休めるときは休めかな」
「シンプルだね」
思わず笑ってしまった。
「それがいいんじゃん、わかりやすいだろ。目標はこれでいい?」
「うん!」
休めるときは休めか.......精神的に不安定になると忘れてしまうことだと思った。
できるだけ、毎日目標を達成できたらと思う。
「そう言えば、なんで自分が経験したことと同じような状況になっているからってこんな私を諦めずに話しかけてくれたの?」
ずっと不思議に思ったことを聞いてみた。
「それは、将来後悔するようなことをしたくなかったし、辛い思いをしている人を助けたいって思うからに決まっているだろう」
ためらいなくストレートに言ってくれていた。
よく見ると優真くんの耳が赤く染まっていた。そんなところが可愛く思える。
「優真くん、耳が赤いよ」
「うるせぇ」
私は優真くんのことがいつの間にか好きになってしまったのかもしれない。
「紗奈さん、いや紗奈とこれからは呼ぼうかな。好きだ!」
突然なことでびっくりしてしまう。
これは現実なのだろうか。
「私も、優真くんのことが――」
「ことが?」
時間を一旦置いてみる。
「好き」
これからどうなっていくのか分からない。
終わりのない暗闇が続いて辛くなるかもしれない。
また死にたいと思うかもしれない。
毎日、一喜一憂して、たまには休んだりしてなんとかやっていくしかないのだ。
でも、君となら頑張って生きていけるような気がした。



