獅子道くんにこの思いが伝わるまで、何度だって言ってやる。こんなにも繋ぎ止めたいと思ったのは初めてなんだ。今、ここで手放してしまったら、絶対に後悔する。
俺は、こんな狭い保健室の蛍光灯の下じゃなく、広い空の下で陽の光を浴びたその金髪が一番に煌めくところを見たいんだ。
決意を固めている俺の心を知らず、怯えたようにあたふたとしながら、獅子道くんは更に言い訳を紡ごうとする。何と言い訳しようが、俺の心はそう簡単には変わらないから、全部無駄だっていうのに。
「ま、周りが、」
「第三者はどうだっていいです。獅子道くんと俺の問題でしょう? 外野に獅子道くんと俺の仲について何を言われようが、関係ないので」
「関係あるよ……。蒼人くんはサッカー部のエースなんやで? あん中で一番キラキラしとって、みんなから憧れられる存在やのに……。こんな俺なんかと絡んどったら、そのキラキラを奪ってまう。俺はそれが嫌なんよ」
「キラキラ……、が何なのかはよく分かんないですけど、俺のこと、過大評価してません? 俺、そんなに手放しで褒めてもらえるほど、聖人じゃないですよ」
「…………」
「先に宣言しておきますけど、これ以上何されたって、何言われたって、俺が諦めることはないですよ。もう決めたんで」
獅子道くんが俺の何を見てそう言っているのかは分からないけれど、あまりに買いかぶりすぎだ。真面目にサッカーには向き合っているけれど、長所なんてそれぐらいだ。人付き合いは苦手だし、時々どうしようもなくやるせない瞬間だってある。こうやって気兼ねなく話せる相手なんて片手で足りるぐらいしか存在していないし、クラスの人気者には程遠い。
獅子道くんはまるで俺のことを少女漫画のヒーローみたいに言うけれど、そんな大層なものには残念ながらなれそうにない。獅子道くんの中で美化されすぎている気がして、少し笑ってしまう。逃げられれば逃げられるほど追いかけたくなる、ただのめんどくさい男ですよ。なんて、さすがにそんな宣言はしないけれど。
「……蒼人くんがこんなに頑固や思わんかった」
「それは俺もですね。まさかこんなに諦めの悪い一面があるとは思ってもいませんでした」
「はぁ……、もうしゃあないなぁ。負けや、負け。蒼人くんの粘り勝ちにしたる」
「ほんとに?」
「ふふ、ほんまあかんで? 蒼人くんは先輩の言うこと聞かん、悪い子やなぁ」
布団の中から出てきて、ベッドの背もたれに寄りかかった獅子道くんが、不意に零した笑みに目を奪われる。何だろう、先輩の男相手に抱くはずのない、このイケない感情は。閉ざされていたはずの扉をこじ開けられたような感覚に戸惑いを隠せない。くそ、何だこれ。ぐしゃりと前髪を乱して、ちょっと伸びたそれで火照った顔が少しでも見えなくなればいいとバレないように囁かな抵抗を試みる。



