土埃舞うグラウンド。生暖かい風が春を感じさせる。燦々と降り注ぐ陽の光に照らされて、風に靡く髪がキラキラと輝く。天使の輪が付いてるんじゃないかって錯覚するほど神々しくて、目を奪われた。生まれて初めて人を綺麗だと思った瞬間だった。

 憧れと呼ぶには簡単すぎて、もっと複雑な言い方は馬鹿な頭じゃ思い付かない。

 あまりに遠い存在だと、はっきりと分かる。青春の色に包まれた彼のようになれたら、少しは息をしやすくなるのかな。……なんて、叶いもしないことを考えて、結局諦めるばかり。

 俺だけに笑いかけてくれないだろうか。なんて、子どもじみたそんな独占欲も彼の前では無に等しい。だって、俺は彼にとっての何者でもないのだから。

 あの柔らかな光に照らされたら、きっと、俺は灰になって消えてしまうんだ。太陽の化身かってぐらい、キラキラが似合う彼はあまりにも眩しすぎる。暗闇が似合う俺なんかは近付けない。遠くから見ているだけでいい。

 一日一回、たった数分だって構わない。彼を見ている時間が俺の大切な思い出になるから。だから、青春とは程遠い高校生活の一ページを、ほんの少しだけ青色に染めてくれないだろうか。