雪が溶ける頃に



「じゃあ、ベッドどこでもいいから」
「…はい」

がらんと空いた3つあるベットの内、一番端の窓際に潜る。
窓が少しだけ空いていて夏の香りが漂ってくる。

彼方(おちかた)くん、私今から職員会議があるからちょっと保健室空けるわね 扉の前には不在の札貼っておくから誰も来ないとは思うけど」
「…分かりました」


先生はベッドのカーテン越しにそう言って保健室から出ていった。
シーンと静かになった部屋で窓の隙間から入ってくる風が頬を掠めた。
保健室のふわふわの布団からは家の布団とは違う匂いがして、窓の隙間から入る心地いい風と暖かい太陽の光が相まって居心地がよく今にも眠ってしまいそうだった。


『俺が朱雨(しゅう)を殺した』


自分で発した言葉が頭をよぎった。
梶野(かじの)くんは俺があんな事言ったのに今まで通り接してくれている。俺の事怖くないと言った。


『お前そんな事するやつじゃねーだろ』


まだ数ヶ月しか関わっていないのに、どうしてそう言い切れたのだろう。
そして…


『俺と朱雨(しゅう)は付き合ってた』


そう言ったのに、俺が倒れそうになった時躊躇せず抱き止めてくれた。
普通、人殺しでおまけに同性愛者って警戒する人物だろ…。なのに…何も変わらない。
抱きとめられた時に感じた梶野(かじの)くんの大きな身体。ガシッとした腕に大きな手…。
男の俺を意図も簡単に抱えられた時、梶野(かじの)くんの匂いがふんわりと風に乗って香った。
その時確かに自分の体温が上がったのが分かった。熱のせいなのか…それとも…
そんな事を思いながら俺は意識を手放した。




















ミーンミンミンミン

蝉が躊躇なく鳴く頃。

ブーンと音が鳴る扇風機。


額にはじんわりとした汗。


『…朱雨(しゅう)?』


声を掛けても反応しない恋人。

狭い部屋の中で、ただひたらすらに音だけが響いた。