雪が溶ける頃に




真雪(まゆき)、おはよ」


次の日、俺は普通に真雪(まゆき)に挨拶をした。ただ普通に…いつも通りに。


「……おはよ」

真雪(まゆき)は少し驚いたような顔をして目をパチクリ瞬きをする。まるで話かけられないだろうと思っていた人に話しかけられたみたいな。
俺は構わず隣の席に腰をかけ、カバンの中の教科書を机の引き出しに入れる。
隣から視線を感じつつ、チラッと真雪(まゆき)の方へと視線を移す。バチっと目が合った。


「…なに?」
「…いや、もう話しかけてこないかと思って」
「は?なんでそうなるんだよ!」
「…いやだって、俺…」
「ん?」
「同性愛者だし、彼氏殺してるし…」
「…おまっここで…」
「…怖くないの?」

真雪(まゆき)の瞳は真っ直ぐだった。
今までに見たことがないような真っ直ぐした瞳だった。
だから俺もはっきり言った。

「その殺したって表現はよくわかんねーけど、お前の事怖くねーよ」


俺がそう言うと真雪(まゆき)は遠慮気味に少し笑った。その顔を見て俺は何だか少し安心した。何に安心したのかは分からない。けど何処か安心したんだ。

「てか殺人は怖えーけど、お前そんな事するやつじゃねーだろ?だとすれば同性愛者?それの何が怖いの?え?」
「…いや、いいよ、もう。」
「え?なになに?どういうこと?」

出会って数ヶ月 真雪(まゆき)が初めて自然に笑った。
その笑顔を見て少し…少しだけドキッとした自分がいた。