「なに?お前、あの彼方と話したの?」
クラス替えと始業式が終わり午前中で学校が終わった俺はいつものメンバーでいつものファミレスでいつもの放課後を過ごしていた。
今日の出来事を話すと柚希ゆずきがまじか…とでと言うように話す。
「何?なんかダメだった?」
その柚希の反応は何だか話してはいけない奴と話したのかというような言い方。
「いや〜お前、彼方の事知らねーの?」
「…何が?」
柚希の勿体ぶる態度に少しイラつく。
「ユズ、海晴は中学違うから知らないよ 一年の時も俺らとずっと一緒にいたんだから」
柚希の隣に座る忠春が柚希を諭す。
柚希と忠春、そして俺の三人は高校で同じクラスになり意気投合、それからずっと三人でつるんでいる。
柚希と忠春は幼稚園時代からの幼なじみで、家も隣同士、小中高もずっと同じらしい。
「あ、そっか そうだったわ 海晴なんか中学から一緒にいた気分でいたわ」
「何言ってんだよ んで、何?真雪がなんかあんの?」
「もう下の名前で呼んでのかよ」
「ユズ…」
短気で口の悪い柚希の世話係は忠春の仕事だ。
「海晴!お前は誰彼構わず話しかけて仲良くなるのは長所だが、相手くらいちゃんと選べ!」
「それをお前が言うのかよ」
クラス替えで皆それぞれグループが出来ておりあまり人見知りのしない俺でも空気を読まずにズカズカと話しかけに行く程の鋼の心は持ち合わせていない。そこでひとりでいた真雪に目がいったのだ。
「海晴は知らないと思うけど、その彼方真雪って俺ら中学同じだったんだ」
忠春が口を開く。
「あまり、良い噂は聞かなくてさ なんて言うんだろうね 中学では誰ともつるまずずっとひとりだったんだ」
「ふーん それの何がダメなわけ?」
「それが…」
言葉に詰まる忠春。
俺は頭にハテナが浮かんだ。
「それが、彼方の幼なじみがすげえ悪かったんだよ」
「悪い?」
忠春に変わって柚希が話を続ける。
「恐喝に喧嘩、オヤジ狩り…それはもうやべえ事ばっかしてたって噂 人殺したって噂もあったな」
「なんだそれ…噂だろ?」
「まあ、さすがに人殺したのはただの噂だと思うけど、ほとんど学校来てなかったからな 本当の所は知らねー」
「そいつはたまに学校に来ては暴れて窓割ったり、教師ボコッたり、喧嘩したり、したい放題で でも彼方の隣にいる時は妙に大人しくて。それが手網握ってる飼い主みたいで何処と無く皆 彼方の事が怖いというか気持ち悪くて誰も近づかなかったんだよ」
「彼方、本人も誰ともつるまなかったしね いつもひとりでいたし近づき難いオーラ放ってたし」
「ふーんよく分かんねーな」
俺はそんな話はどうでも良くて目の前にある大きなパフェにかぶりつく。
このファミレスのパフェは値段はそこまでしないのにクリームたっぷりのフルーツもふんだんに使われ豪華で、毎回は頼まないがたまに頼んでその美味しさに酔いしれる。
「お前まじで聞いてねーだろ」
柚希が俺の食べっぷりをみてため息をつく。
俺にとったら本当か嘘か分からない事なんてどうでも良くて、ましてや真雪、本人の話ではなく真雪の幼なじみの話なんて尚更どうでもよかった。


