「…行っちゃった」
海晴は走って店を出て行ってしまった。隣に座る柚希をチラッと横目で見る。柚希は海晴が出て行った方向を眺めていた。
「…なに」
「ぁ…いや」
ユズを横目で見ていた事がバレてしまっていた。
「…あー、たくもう」
そう言って背伸びをするユズ。海晴との会話でユズはどう思ったのだろう。
「…ユズ」
「海晴が好きならいいんだよ、好きなら」
ユズはコップを片手で持ちジンジャエールを飲み干した。
「俺は別に彼方の事が嫌いとかじゃない、海晴が心配なだけだ」
「…うん、そうだね」
「この前の祭りで悪いやつじゃないってのは分かったし」
「…うん」
「…けどな、なんか心配なんだよ」
ユズの心配という気持ちは何となく分かる。何が心配なんだと聞かれたら何かは分からない。
分からない…けど。
「ユズの心配も分かる…けど何かあったら俺らがいるじゃんね」
そう言って笑うとユズも「そうだな」と言って笑った。外野の俺らが出来るのはそっと見守ること…ただそれだけだ。


