4人で屋台のご飯を囲む。
俺は目の前で繰り広げられる光景をただ眺めていた。
「真雪、ほらこれも」
「いや、いいよもう」
彼方くんに構う海晴の姿は何処と無く楽しそうで二人の仲が垣間見えた。俺は焼きそばに手をつけほうばる。
チラッと横を見るとユズはぼーっと彼方くんと海晴を見ていた。
その見つめる瞳が何だか今まで見たことの無い目をしていた。
「…ユズ?手止まってる 食べないの?」
「ぁ…いや 食べる食べる」
そのユズの姿に少し違和感を覚えつつ今何時かとポケットの中の携帯に手を伸ばし時間を確認する。時刻は19:59と表示された。
「あ!もうすぐだよ!」
俺の言葉に他三人は何が?という表情をする。
「花火!花火だよ!20時から!」
「…花火」
「あー!忘れてた!」
「完全に忘れてた」
その瞬間ドォーンと音共に綺麗な華が夜空に浮かぶ。
「「おおおおお」」
俺と海晴は大きな歓声を上げる。
「………」
無言で見る彼方くんの表情は目がキラキラ輝いていて実年齢より少し幼く写った。
夜空に浮かぶ大きな花火。
夏が来たんだと実感する。
大人も子どもも空に目を奪われる。
夜空に咲く綺麗な花。本当に綺麗だ。
それから数十分俺たちは花火をしっかり目に焼き付けた。
「じゃっ、俺ら向こうだから」
俺は海晴と彼方くんに手を振る。ユズと駅に向かう為ふたりとはここでお別れ。
「じゃあまた月曜日な」
海晴の言葉に頷き手を振る。
駅とは真反対のふたりは俺たちに背を向け歩き出す。その背中を見送り、俺の少し前を歩くいつも以上に大人しいユズに目を向ける。
「どうしたの?」
「何が?」
「何がって…なんか大人しい」
「大人しいって…お前」
ユズは頭をガシガシとかき、言いにくそうな口を開いた。
「…彼方って、さ…」
「うん?」
「なんか思ってたのとは違ったわ」
「違った?」
そしてユズは進めていた足を止めた。
「どうしてもさ、中学の頃の印象があったから海晴に何かするんじゃないかって思ってたんだけど…」
「だけど?」
「今日 彼方と少し話してさ…ただなんと言うか悪いやつじゃないなって思った」
「そうだね、俺も思ったよ」
「お前も?」
「うん、『なんだ〜、人付き合いが不器用なだけで悪いやつじゃないじゃん』って」
そう言って笑うとユズも困ったように笑った。
「何となく海晴が彼方を構いたくなる気持ち分かった あれは色んな意味でほっとけないわ」
「?」
そのユズの言葉はいまいち共感する事が出来なかったが何か吹っ切れた顔をしたユズの顔を見て安堵した自分がいた。


