目を閉じて、「うんうん」と頷いて、「よし」と声を上げる。
大穴のことはアオイさんの中で結論が出たようで、表情はスッキリしている。
「よし。じゃあもう一つ。『同行者』についてはどう?」
編入してから接するようになったマリーさんとセンさんについて話した。
マリーさんは変してすぐに接触してきた人。
勘違いかもしれないが、探るような様子があること。
魔法の使い方が上手く、力を秘めていること。しかし人柄がよく、最初は先入観もあって警戒心があったが、今は友人として接していると。
センさんについてはあまりわからず、飄々としていてこちらの気も抜けてしまう。
こういう警戒心を解く人ほど警戒したほうがいいのか、悩みどころ。
話していて、自分が少し疑心暗鬼になっているのかと疑問を持つ。
「アオイさんは、マリーさんが怪しいと思った点はどこですか」
隣で黙って聞いてくれている人に尋ねる。
私を見つめていた瞳は「んー」と悩ましげな声と共に空を見上げ、発する言葉を整理している。
「……そうだね。何も考えていないようだったからかな」
「……? と、いうのは」
「実技試験のために呼ばれるのを待っている時、保護者らしき人と話も目も交わさずに、じっと前だけを見ていたんだよ」
それは、たしかに異様だ。
緊張していたから、と言われればそれまでだが、それにしても様子としては個性的すぎる。
今のマリーさんからはあまり想像できない。
怪しいというか、異様だ。
「名前が呼ばれても、保護者に一声もなく黙って行ってたのも気になった。意気込みとは言わずとも、眴ぐらいしそうじゃない?」
首を傾け、問うてくる。
マリーさんが緊張してリアクションが少なくなっていたとしても、保護者はそこまででもないだろう。
反応がないだろうとしても、目で追うぐらいはしそうな状況だ。
でも、それもなかった。
「正直、マリーという子については勘違いだったとしても、保護者については断トツで怪しいと思ってるよ」
保護者は学校ではほぼ関わらない。
だがマリーさんを通じて何かしてくるかもしれない。
そういう意味で警戒対象にしたのだと言う。
「今のところは、これと言って何もされてないです」
「それは良かった。友人と思っている時に辛いだろうけど、気をつけてね」
自信満々に『友人』と言えない状況は寂しいけど、受け入れるしかないか……。
今度は私が焚火を見つめ、無言の時間が出来た。
アオイさんは、私から口を開くの待っているように思う。
「センさんの方は、何かありますか」
逃げとも取れるような話題転換をしてしまったと思う。
それでも、アオイさんはいつもと変わらない表情で受け止めてくれた。
「セン、という子については、あまり印象には残ってないかな。特別目立っても目立っていなくもなかったんだと思う」
騒いでもいないし、マリーさんみたく無反応でもなかったと。
それはそれでセンらしくない気もするが、自然な状態だったと言うことか。
「どういう子なら安心して付き合っていける、ってものはないけれど、あまり意識しないでね。楽しんでいいんだから」
火の揺めきを映しながら、柔らかい笑みを向けてくる。
信じる信じないも、私の自由だと言っている。
研究者に召喚された時点で、少なくとも研究者側の人の可能性があるだけで、信じることは難しいと言うのに。
……信用できる人の見極め方ってどうやるんだろうな。
途方に暮れたような気持になっていると、アオイさんは立ち上がり、両手を広げて伸びる。
「ともあれ。ヒスイちゃんが人に興味を持ってくれてよかったよ」
「? どういう意味ですか?」
「魔法の勉強は好きみたいだったけど、人に興味を持たなかったらどうしよう、って心配だったんだ。人と接するのを嫌がるなんてそれこそスグサ様みたいじゃない?」
そういえば、スグサさんは一人で研究に没頭するタイプの様だった。
学校もすでに知っている内容だからって通わなかったぐらいだし。
心配事が消えたような晴れ晴れとした笑顔を見て、釣られて悩み事が消えたような気持になる。
実際は考えなければいけないことだけど、今じゃなくてもいいか。
私も意気込んで立ち上がる。
「アオイさんは明日何をやるんですか?」
「ん? 僕はね、かっこいい所を見せるためのパフォーマーだよ」
詳しくは明日、実際に見せてくれるらしい。
そう言い残し、他の生徒が来る前にと別れを告げた。
―――――……
次の日。遠足二日目。
生徒は一か所に集まり、大人たちが前で揃っている。
大人たちというのは、先生だけではなく、魔術師団とギルドの人も含めている。
制服を着た人たちは魔術師団、服装ばらばらで冒険にでも出れそうな格好はギルドのひととわかりやすい。
今日来ている人たちは、生徒たちからしたら憧れの的のようで、黄色い声や感声が上がっている。
そんな最中。
ヒイラギ先生が寛闊声を上げる。
弛んでいた空気が、
「これから、今日の討伐任務『毒鳥・ピーチ』について説明する」
甘そう。
私だけ緊張がゆるんでしまったと思う。
大穴のことはアオイさんの中で結論が出たようで、表情はスッキリしている。
「よし。じゃあもう一つ。『同行者』についてはどう?」
編入してから接するようになったマリーさんとセンさんについて話した。
マリーさんは変してすぐに接触してきた人。
勘違いかもしれないが、探るような様子があること。
魔法の使い方が上手く、力を秘めていること。しかし人柄がよく、最初は先入観もあって警戒心があったが、今は友人として接していると。
センさんについてはあまりわからず、飄々としていてこちらの気も抜けてしまう。
こういう警戒心を解く人ほど警戒したほうがいいのか、悩みどころ。
話していて、自分が少し疑心暗鬼になっているのかと疑問を持つ。
「アオイさんは、マリーさんが怪しいと思った点はどこですか」
隣で黙って聞いてくれている人に尋ねる。
私を見つめていた瞳は「んー」と悩ましげな声と共に空を見上げ、発する言葉を整理している。
「……そうだね。何も考えていないようだったからかな」
「……? と、いうのは」
「実技試験のために呼ばれるのを待っている時、保護者らしき人と話も目も交わさずに、じっと前だけを見ていたんだよ」
それは、たしかに異様だ。
緊張していたから、と言われればそれまでだが、それにしても様子としては個性的すぎる。
今のマリーさんからはあまり想像できない。
怪しいというか、異様だ。
「名前が呼ばれても、保護者に一声もなく黙って行ってたのも気になった。意気込みとは言わずとも、眴ぐらいしそうじゃない?」
首を傾け、問うてくる。
マリーさんが緊張してリアクションが少なくなっていたとしても、保護者はそこまででもないだろう。
反応がないだろうとしても、目で追うぐらいはしそうな状況だ。
でも、それもなかった。
「正直、マリーという子については勘違いだったとしても、保護者については断トツで怪しいと思ってるよ」
保護者は学校ではほぼ関わらない。
だがマリーさんを通じて何かしてくるかもしれない。
そういう意味で警戒対象にしたのだと言う。
「今のところは、これと言って何もされてないです」
「それは良かった。友人と思っている時に辛いだろうけど、気をつけてね」
自信満々に『友人』と言えない状況は寂しいけど、受け入れるしかないか……。
今度は私が焚火を見つめ、無言の時間が出来た。
アオイさんは、私から口を開くの待っているように思う。
「センさんの方は、何かありますか」
逃げとも取れるような話題転換をしてしまったと思う。
それでも、アオイさんはいつもと変わらない表情で受け止めてくれた。
「セン、という子については、あまり印象には残ってないかな。特別目立っても目立っていなくもなかったんだと思う」
騒いでもいないし、マリーさんみたく無反応でもなかったと。
それはそれでセンらしくない気もするが、自然な状態だったと言うことか。
「どういう子なら安心して付き合っていける、ってものはないけれど、あまり意識しないでね。楽しんでいいんだから」
火の揺めきを映しながら、柔らかい笑みを向けてくる。
信じる信じないも、私の自由だと言っている。
研究者に召喚された時点で、少なくとも研究者側の人の可能性があるだけで、信じることは難しいと言うのに。
……信用できる人の見極め方ってどうやるんだろうな。
途方に暮れたような気持になっていると、アオイさんは立ち上がり、両手を広げて伸びる。
「ともあれ。ヒスイちゃんが人に興味を持ってくれてよかったよ」
「? どういう意味ですか?」
「魔法の勉強は好きみたいだったけど、人に興味を持たなかったらどうしよう、って心配だったんだ。人と接するのを嫌がるなんてそれこそスグサ様みたいじゃない?」
そういえば、スグサさんは一人で研究に没頭するタイプの様だった。
学校もすでに知っている内容だからって通わなかったぐらいだし。
心配事が消えたような晴れ晴れとした笑顔を見て、釣られて悩み事が消えたような気持になる。
実際は考えなければいけないことだけど、今じゃなくてもいいか。
私も意気込んで立ち上がる。
「アオイさんは明日何をやるんですか?」
「ん? 僕はね、かっこいい所を見せるためのパフォーマーだよ」
詳しくは明日、実際に見せてくれるらしい。
そう言い残し、他の生徒が来る前にと別れを告げた。
―――――……
次の日。遠足二日目。
生徒は一か所に集まり、大人たちが前で揃っている。
大人たちというのは、先生だけではなく、魔術師団とギルドの人も含めている。
制服を着た人たちは魔術師団、服装ばらばらで冒険にでも出れそうな格好はギルドのひととわかりやすい。
今日来ている人たちは、生徒たちからしたら憧れの的のようで、黄色い声や感声が上がっている。
そんな最中。
ヒイラギ先生が寛闊声を上げる。
弛んでいた空気が、
「これから、今日の討伐任務『毒鳥・ピーチ』について説明する」
甘そう。
私だけ緊張がゆるんでしまったと思う。



