青い空。白い雲。緑の大地。紺色のジャージ。
ここはフローレンタム国・リーオン。
スグサさんに話した通りの高原で、春のぽかぽか陽気の中での遠足だ。
と言っても、ここまで転移で飛んできたので『遠くまで足を使って』移動してはいない。
魔法らしさが前面に出た移動方法だ。
「ナオー、そっちあるー?」
「……少し奥に見えるよ」
「じゃあそっち行こう! ヒスイ! マリーもこっちだよー!」
高原の中の、森の中。
遠足の一環である、ギルドの任務を熟すべく、薬草を探しているところ。
学校からの移動がないと思ったら、高原から森、森から薬草の場所までの移動時間が必要だったわけだ。
今探している薬草は、日陰にしかできないもの。
だから森の奥の方まで探しに来ており、ようやく見つけられた。
三人ずつで探していたのに、ナオさんの言葉を聞いて一人駆けていくライラさんをマリーさんと追う。
ナオさんもシオンも、センも追い越して、うさぎの様にぴょんぴょん跳ねて行ってしまう。
「あはは、ライラっちは元気だなあ」
「そんなこと言ってないで、俺らも追うぞ」
「はいよーシオン様」
センは、私やマリーさんと同じ編入生。
黒っぽいけどやや赤みのある襟足の長い髪と、オレンジ色の瞳を持つ。
ちょっと飄々とした男の子。
今回六人グループを組むのに、「入れてー」と猫のように寄ってきた。
呼び名こそシオンに『様』を付けているが、話し方はほとんどみんな一緒に軽いというか緩いというかなので、本当に分け隔てなく接している。
シオンはそれを気に入っているようだ。
私的にはゆるキャラ的立ち位置。
「はーやくー!」
「そちらにありますかー?」
「少しだけどあるよー!」
マリーさんも、グループを組むうえで「一緒にいいですか?」と声をかけてきてくれた。
ライラさんの授業中のトラブルのこともあって、クラスメイトはあまり近寄ってこなかった。
そんな中でもマリーさんは変わりなく接してくれた少ない一人。
ちなみにセンは「そんなこともあったなあ」って感じだった。
「あ、本当だ」
「これで間違いありませんわね」
「でもこれだけじゃあ少なくなーい? ナオっち、俺らは他を探してみないー?」
「え、う、うん」
「あたしも行くー!」
「迷子になるなよ。特にライラ!」
「大丈夫だもーん!」
双子とゆるキャラは別の場所を探しに行って、編入生二人と王子様は草を毟る。
品質も大事なので、丁寧にとるために無言で作業をする。
いくつか取って慣れてきたところで、口が緩んでいく。
「シオン様はこちらに来たことはあるのですか?」
「あるにはあるが、小さい時だ。記憶にも残っていない」
「まあ、ではほとんど初めてなんですね。ヒスイさんはいかがですか」
「私も初めてです」
マリーさんも「シオン様」と呼ぶ。
センのような分け隔てのないものではなく、完全に堅苦しい呼び方だ。
マリーさんは貴族だししょうがない面もある、と私は思うけれど。
シオンとしては外してほしいらしい。
だが、マリーさんの「うふふ」ではぐらかされ、諦めたようだ。
うふふ強い。
「さて、ここはもういいか」
「そうですね」
「三人はどこまで行かれたのでしょう」
三人が向かって行った方を見るが、戻ってくる様子はない。
それほど奥まで行ってしまったのか、別の方向に行ってしまったのか。
この場で立っていても仕方がないのだが、待ち合わせも何も決めていなかったのが悩み。
進むか、待つか、戻るか。
「どうしましょうかね」
二人を見るが、二人とも悩んでいるようで、返答はこなかった。
慣れない場所の、さらには森の中。
迷子になる可能性は高い。
魔法が使えるので遭難なんてことはないと思うが、一つの懸念事項がある。
「進んでみよう」
シオンの一言で、方針は決まる。
ただ当てもなく進むのはよくないということで、三人が進んでいった方向に、三人と別れてから経過した時間の半分だけ進んでみることに。
作業時間がおよそ五分ほどなので、二分半は進む。
それでも合流できなかったら、大人しく戻って先生に報告する。
「一列に。俺が先頭を行く。ヒスイは真ん中。マリーが後ろを頼む」
王子様が先頭でいいのかと一瞬悩んだが、先に進んでしまったのでその通りにする。
周囲を警戒し、三人を探す。
奥に進む足取りは重いけれど、ゆっくりしていては二分半なんてすぐ経ってしまう。
少しずつでも進むたびに暗くなっていく森に、やや恐怖を覚える。
ここでの懸念は、もう一つの任務。
本当ならばクラス全員で、明日挑むはずだった討伐系の依頼。
すでにこの森に生息する魔物を討伐するという、珍しくはない任務ではあるのだが。
場所が悪い。
森。
ライラさんを含む三人。
ライラさんの属性は火。
ここはフローレンタム国・リーオン。
スグサさんに話した通りの高原で、春のぽかぽか陽気の中での遠足だ。
と言っても、ここまで転移で飛んできたので『遠くまで足を使って』移動してはいない。
魔法らしさが前面に出た移動方法だ。
「ナオー、そっちあるー?」
「……少し奥に見えるよ」
「じゃあそっち行こう! ヒスイ! マリーもこっちだよー!」
高原の中の、森の中。
遠足の一環である、ギルドの任務を熟すべく、薬草を探しているところ。
学校からの移動がないと思ったら、高原から森、森から薬草の場所までの移動時間が必要だったわけだ。
今探している薬草は、日陰にしかできないもの。
だから森の奥の方まで探しに来ており、ようやく見つけられた。
三人ずつで探していたのに、ナオさんの言葉を聞いて一人駆けていくライラさんをマリーさんと追う。
ナオさんもシオンも、センも追い越して、うさぎの様にぴょんぴょん跳ねて行ってしまう。
「あはは、ライラっちは元気だなあ」
「そんなこと言ってないで、俺らも追うぞ」
「はいよーシオン様」
センは、私やマリーさんと同じ編入生。
黒っぽいけどやや赤みのある襟足の長い髪と、オレンジ色の瞳を持つ。
ちょっと飄々とした男の子。
今回六人グループを組むのに、「入れてー」と猫のように寄ってきた。
呼び名こそシオンに『様』を付けているが、話し方はほとんどみんな一緒に軽いというか緩いというかなので、本当に分け隔てなく接している。
シオンはそれを気に入っているようだ。
私的にはゆるキャラ的立ち位置。
「はーやくー!」
「そちらにありますかー?」
「少しだけどあるよー!」
マリーさんも、グループを組むうえで「一緒にいいですか?」と声をかけてきてくれた。
ライラさんの授業中のトラブルのこともあって、クラスメイトはあまり近寄ってこなかった。
そんな中でもマリーさんは変わりなく接してくれた少ない一人。
ちなみにセンは「そんなこともあったなあ」って感じだった。
「あ、本当だ」
「これで間違いありませんわね」
「でもこれだけじゃあ少なくなーい? ナオっち、俺らは他を探してみないー?」
「え、う、うん」
「あたしも行くー!」
「迷子になるなよ。特にライラ!」
「大丈夫だもーん!」
双子とゆるキャラは別の場所を探しに行って、編入生二人と王子様は草を毟る。
品質も大事なので、丁寧にとるために無言で作業をする。
いくつか取って慣れてきたところで、口が緩んでいく。
「シオン様はこちらに来たことはあるのですか?」
「あるにはあるが、小さい時だ。記憶にも残っていない」
「まあ、ではほとんど初めてなんですね。ヒスイさんはいかがですか」
「私も初めてです」
マリーさんも「シオン様」と呼ぶ。
センのような分け隔てのないものではなく、完全に堅苦しい呼び方だ。
マリーさんは貴族だししょうがない面もある、と私は思うけれど。
シオンとしては外してほしいらしい。
だが、マリーさんの「うふふ」ではぐらかされ、諦めたようだ。
うふふ強い。
「さて、ここはもういいか」
「そうですね」
「三人はどこまで行かれたのでしょう」
三人が向かって行った方を見るが、戻ってくる様子はない。
それほど奥まで行ってしまったのか、別の方向に行ってしまったのか。
この場で立っていても仕方がないのだが、待ち合わせも何も決めていなかったのが悩み。
進むか、待つか、戻るか。
「どうしましょうかね」
二人を見るが、二人とも悩んでいるようで、返答はこなかった。
慣れない場所の、さらには森の中。
迷子になる可能性は高い。
魔法が使えるので遭難なんてことはないと思うが、一つの懸念事項がある。
「進んでみよう」
シオンの一言で、方針は決まる。
ただ当てもなく進むのはよくないということで、三人が進んでいった方向に、三人と別れてから経過した時間の半分だけ進んでみることに。
作業時間がおよそ五分ほどなので、二分半は進む。
それでも合流できなかったら、大人しく戻って先生に報告する。
「一列に。俺が先頭を行く。ヒスイは真ん中。マリーが後ろを頼む」
王子様が先頭でいいのかと一瞬悩んだが、先に進んでしまったのでその通りにする。
周囲を警戒し、三人を探す。
奥に進む足取りは重いけれど、ゆっくりしていては二分半なんてすぐ経ってしまう。
少しずつでも進むたびに暗くなっていく森に、やや恐怖を覚える。
ここでの懸念は、もう一つの任務。
本当ならばクラス全員で、明日挑むはずだった討伐系の依頼。
すでにこの森に生息する魔物を討伐するという、珍しくはない任務ではあるのだが。
場所が悪い。
森。
ライラさんを含む三人。
ライラさんの属性は火。



