道中、二人の後ろをついて歩く。
二人は何か話しているようだが、ちょっと歩くのに精一杯で理解までは難しい。
なんか懐かしいな、聞こえてるのにわからないなんて。
足が止まる。
前が止まったから。
「じゃあ、後は頼んだ」
「はい。必要なものがあればご連絡ください」
「わかった。じゃあヒスイ、行くぞ」
「? はい」
なぜか、ロタエさんは海の方に。
カエ様と私は別方向に進む。
二人が何お話をしたのかわからず、とりあえず、カエ様について行く。
後ろを歩いていたつもりが、カエ様は自然と隣に並ぶ。
そして何を思ったか、腕をとられた。
「……あの?」
「なんだ?」
「……なんでしょう?」
まぎれもなくがっしりと左腕の二の腕を捕まれています。
少し見上げた先にある美麗なお顔は至って真剣で、ふざけているわけではないのが一目でわかる。
だからこそ、聞き返されて困った。
私、何かしたかな。
考えて、歩いて、考えて、歩いて、考えるが、わからない。
あゆみは止めない物の、わからな過ぎて言葉が出てこない。
それを察したのか、ぽつりと呟いた。
「離しはしないぞ」
「……なぜ?」
「倒れないようにだ」
え……?
「……まさか、気付いてないのか?」
えぇ?
双方びっくりして、ついに足が止まった。
いつの間にか賑わう町中に入ってきて、邪魔そうに見られながらも足は棒。
捕まれた腕はそのままに、反対の手で頭を抱えた。
下向いて、上向いて、首を捻って。一人逡巡している。
私以外の目は怪しいものを見る目になっている。
手が離れて、その顔は呆れ顔。
「……いや、いい。一先ず行こう」
何があったのか。
聞く暇もなく、足をっすめるカエ様に連れられる私。
この道のりに心覚えがあったため、とりあえず何も言わずについて行く。
寄り道もなくついたそこは、前日から泊っている宿だった。
受付を通し、カギを受け取って部屋に入る。
カエ様は躊躇いもせず私とロタエさんが使っている部屋に入った。
「どっち使ってた?」
「えと、手前を」
「よし」
連れられるまま、手前のベッドの足の方に座らされる。
カエ様が目の前に片膝を立てて座り、いつもは見上げる顔が、見下げる形でより近くにある。
跪かれ、金髪の隙間から見える黄緑色の上目遣いの瞳に、自分が写っているのがわかる。
手を伸ばされる。
伸ばされた手は、私の頬に触れた。
剣を使っているからか、掌はマメができているようで少し硬い。
努力の証。男の人らしい掌が頬を包み、長い指が耳まで届いている。
全体的にひんやりしていて、気持ちよくて、目を閉じた。
あ、なんか目頭が熱い。
「……っ」
ぴくり、と手が震えた。
それでも一度閉じた瞼同士は離れがたいようで、私の頬と一緒だった。
ぼーっとする。
眠い。寝てしまいそう。
体が傾くようだ。
鼻がツンと痛い。
「……すまんな」
思ったよりも近くから、いつもより低い声が聞こえた。
何に謝ったのかわからず、聞く暇もないまま、確かな浮遊感を感じた。
「……え」
背中と膝の下と体の側面に温かさを感じる。
視線の先はカエ様の胸元。
温かさに身を預けたい気持ちと、どういう状況なのかという疑問が入り混じる。
振動を何回か感じ、止まってから浮遊感。
背中に柔らかさを感じ、天井が見える。
ベッドに寝かされたのはわかった。
無地の天井が歪む。気持ち悪い。
逃げるように目を閉じると、瞼の裏も歪んでいた。
瞼同士は離れたくないようで動いてくれない。
「触るぞ」
額がひんやりとする。一転して気持ちよく、いつの間にか力の入っていた眉間が緩む。
数秒、そのままでいてくれて、落ち着いた。
「かえさま……?」
「そのまま寝てていい」
「はい……」
声にも力が入らず、わずかに掠れていた。
布のこすれる音。
歩く音。
水の流れる音が聞こえ、止まった。
また歩く音。
近くにいる。
すぐ隣。
前髪を避けられ、ひんやりとした手が額に掠る。
すぐにまた別の触感をしたひんやりとする何かが肌に触れた。
たぶん、タオル。
「ふあーーー」
クスっと笑った声がした。
「寒くないか?」
「少し、寒いです」
また布が擦れる音がして、私の体全体に何かが乗せられた。
触れた布はひんやりしていたけど、自分が温かいのか、すぐに気にならなくなった。
「ここにいる。眠ければ寝ていいからな」
返事をしたつもりが、声が出なかった。
口は空いたかな。
それが見えていれば、無視したつもりはないことは伝わるかな。
すぐ隣に人の気配を感じる。
一向に離れようとしない上瞼と下瞼に呆れる。
全身が脱力して、受け止めてくれるベッドに安心感を抱き、頭の中では浮かんでいる感覚を持つ。
中からか、外からか。
優しい声で「おやすみ」と聞こえた。
二人は何か話しているようだが、ちょっと歩くのに精一杯で理解までは難しい。
なんか懐かしいな、聞こえてるのにわからないなんて。
足が止まる。
前が止まったから。
「じゃあ、後は頼んだ」
「はい。必要なものがあればご連絡ください」
「わかった。じゃあヒスイ、行くぞ」
「? はい」
なぜか、ロタエさんは海の方に。
カエ様と私は別方向に進む。
二人が何お話をしたのかわからず、とりあえず、カエ様について行く。
後ろを歩いていたつもりが、カエ様は自然と隣に並ぶ。
そして何を思ったか、腕をとられた。
「……あの?」
「なんだ?」
「……なんでしょう?」
まぎれもなくがっしりと左腕の二の腕を捕まれています。
少し見上げた先にある美麗なお顔は至って真剣で、ふざけているわけではないのが一目でわかる。
だからこそ、聞き返されて困った。
私、何かしたかな。
考えて、歩いて、考えて、歩いて、考えるが、わからない。
あゆみは止めない物の、わからな過ぎて言葉が出てこない。
それを察したのか、ぽつりと呟いた。
「離しはしないぞ」
「……なぜ?」
「倒れないようにだ」
え……?
「……まさか、気付いてないのか?」
えぇ?
双方びっくりして、ついに足が止まった。
いつの間にか賑わう町中に入ってきて、邪魔そうに見られながらも足は棒。
捕まれた腕はそのままに、反対の手で頭を抱えた。
下向いて、上向いて、首を捻って。一人逡巡している。
私以外の目は怪しいものを見る目になっている。
手が離れて、その顔は呆れ顔。
「……いや、いい。一先ず行こう」
何があったのか。
聞く暇もなく、足をっすめるカエ様に連れられる私。
この道のりに心覚えがあったため、とりあえず何も言わずについて行く。
寄り道もなくついたそこは、前日から泊っている宿だった。
受付を通し、カギを受け取って部屋に入る。
カエ様は躊躇いもせず私とロタエさんが使っている部屋に入った。
「どっち使ってた?」
「えと、手前を」
「よし」
連れられるまま、手前のベッドの足の方に座らされる。
カエ様が目の前に片膝を立てて座り、いつもは見上げる顔が、見下げる形でより近くにある。
跪かれ、金髪の隙間から見える黄緑色の上目遣いの瞳に、自分が写っているのがわかる。
手を伸ばされる。
伸ばされた手は、私の頬に触れた。
剣を使っているからか、掌はマメができているようで少し硬い。
努力の証。男の人らしい掌が頬を包み、長い指が耳まで届いている。
全体的にひんやりしていて、気持ちよくて、目を閉じた。
あ、なんか目頭が熱い。
「……っ」
ぴくり、と手が震えた。
それでも一度閉じた瞼同士は離れがたいようで、私の頬と一緒だった。
ぼーっとする。
眠い。寝てしまいそう。
体が傾くようだ。
鼻がツンと痛い。
「……すまんな」
思ったよりも近くから、いつもより低い声が聞こえた。
何に謝ったのかわからず、聞く暇もないまま、確かな浮遊感を感じた。
「……え」
背中と膝の下と体の側面に温かさを感じる。
視線の先はカエ様の胸元。
温かさに身を預けたい気持ちと、どういう状況なのかという疑問が入り混じる。
振動を何回か感じ、止まってから浮遊感。
背中に柔らかさを感じ、天井が見える。
ベッドに寝かされたのはわかった。
無地の天井が歪む。気持ち悪い。
逃げるように目を閉じると、瞼の裏も歪んでいた。
瞼同士は離れたくないようで動いてくれない。
「触るぞ」
額がひんやりとする。一転して気持ちよく、いつの間にか力の入っていた眉間が緩む。
数秒、そのままでいてくれて、落ち着いた。
「かえさま……?」
「そのまま寝てていい」
「はい……」
声にも力が入らず、わずかに掠れていた。
布のこすれる音。
歩く音。
水の流れる音が聞こえ、止まった。
また歩く音。
近くにいる。
すぐ隣。
前髪を避けられ、ひんやりとした手が額に掠る。
すぐにまた別の触感をしたひんやりとする何かが肌に触れた。
たぶん、タオル。
「ふあーーー」
クスっと笑った声がした。
「寒くないか?」
「少し、寒いです」
また布が擦れる音がして、私の体全体に何かが乗せられた。
触れた布はひんやりしていたけど、自分が温かいのか、すぐに気にならなくなった。
「ここにいる。眠ければ寝ていいからな」
返事をしたつもりが、声が出なかった。
口は空いたかな。
それが見えていれば、無視したつもりはないことは伝わるかな。
すぐ隣に人の気配を感じる。
一向に離れようとしない上瞼と下瞼に呆れる。
全身が脱力して、受け止めてくれるベッドに安心感を抱き、頭の中では浮かんでいる感覚を持つ。
中からか、外からか。
優しい声で「おやすみ」と聞こえた。



