豪快な笑いに気圧されながら、話もそこそこにしてマルス邸を後にした。
ぴょんぴょんと飛び跳ねながら、お見送りまでしてくれてた。
次はギルドに向かう。
依頼内容の確認と、鱗笛を受け取るため。
今日は曇り。
夏のように暑い日ではあるが、雲のおかげで日差しは弱い。
しかし蒸し暑く、歩いていても汗をかいてしまう。
海が近い場所だから、海水浴をしている人は多いかな。
ヤビクニは深海生物だから、相応に沖まで出ないといけない。
それまではどうやっていくのだろう。
魔法で飛んで行くのか、船で行くのか。
向かい風を切りながらギルドがある海へ向かっていると、髪を濡らしていたり、サーフボードに似たものを持っている人と多くすれ違う。
髪を押さえたロタエさんが、風に負けないように呟く。
「風が出てきましたね」
「そうだな。海も荒れているかもしれない」
確かに、服も髪も乱れ、何度か目にゴミが入って痛い。
歩くのが止まるほどではないにしろ、障害物のない海辺では、街中よりもあれている可能性は高い。
すれ違う人たちは海から避難してきた人たちかな。
一先ず話は聞かなければならないので、ギルドには向かっておく。
扉は締められ、まるで店仕舞いしてしまったかのように人気がない。
しかし中に灯はあるので、誰かがいるようではある。
カエ様が扉を開けた。
「いらっしゃい。待ってたよ」
受付のお婆さんが、キセルのようなものを咥えて煙を浮かしている。
両手で雑誌? を読み、仕事の合間のように見える。
「人気がないようで」
「ああ、人払いしたわけじゃあないんだがね。風が強くなって波が高くなってきてね。海自体閉じたんだよ」
海の安全もギルドが管理していて、開放するか否かはギルドが判断しているとのこと。
今日は風が強くなる予兆があったらしく、海を閉じたのも予定通りだそう。
「アンタらが行く方も風は強いかもしれないけど、どうする?」
一考。
人がいないのは好都合だ。
沖だとしても、いないならいない方が遠慮なく魔法は使える。
しかし足場が不安定なところで、波や風が強いのは危険度がより高い。
「このあとも風は強いのですか?」
「そのようだよ。アタシとしてはあまりお勧めはしないがね。一応説明しておくか」
前日同様、ソファーに座るよう促される。
お婆さんが持ってきたのは、魔石。
すでに魔法が込められているもののようだ。
それが三つ、首から下げられるようになっている。
「マルス様からのものだよ。身に危険があった時に、ギルド行の転移魔法が自動発動する」
「身の危険の判断はどうやって?」
「闇の魔法で精神状況を確認してるんだと」
確かに闇属性はそういう魔法が多いと以前聞いたことがある。
それの応用かあ。
元の世界で言う、嘘発見器みたいなものかな。
まあ、ただ。
状況を『見透かされている』ようで良い気はしないが。
「では、お借りしよう」
「あいよ。ほれ、アンタたちも」
「お借りします」
「ありがとう、ございます」
「あと鱗笛も。貴重なもんだから大事に扱うんだよ」
珊瑚だろうか、ほんのり赤みのあるか手のひらサイズの縦笛を預かって、首から石を下げ、海へ出る。
深海がある沖までは、船に乗る。
ただし海には出ない。
船に乗った状態で転移する。
そして海の上に出て笛を鳴らし、得物を待つ。
荒天時には水属性と風属性を持っている人がいるのが絶対条件だ。
幸いにして、私もロタエさんは両方あるし、カエ様も風属性を持っている。
何だったら全属性ある。
「じゃあ船はこれね。この後も天気が荒れるから、アタシが連絡したらすぐに戻るんだよ」
海が荒れても一瞬で戻れるのは魔法のいい所だなあ。
船着き場で小型だが三人なら十分な大きさの船を借り、さっそく乗り込む。
そういえば船酔い、大丈夫かな。
大丈夫か。
お婆さんに見送られ、船に設置されていた石に魔力を流す。
ギルド同士を行き来するように、光に包まれて、景色が変わる。
今までいた陸地は手乗りサイズとでも言えそうな感じに離れているが、想像していたより近いかな。
見渡す限りの水平線、って感じを想像してた。
「よし、じゃあやる前に、一度周囲を確認するか。ロタエ、頼む」
「はい」
ロタエさんが船の中心に立ち、風の魔力を練る。
使うのは、森の中の錆鼠・ラースを探していたのと同じ魔法。
指定した対象、もしくは何かしらの障害物を探す、探索系の魔法。
≪風の便り≫
海のような遮蔽物がない場所なら、これと言った指定はせず、周辺の何かしらを調べるだけでいい。
なのでラースの時な参考物品は必要ない。
どんな感覚なのか聞いてみたところ、自分を中心に風を波紋状に放ち、跳ね返りを確認する。
たぶんソナーのようなもの。
森の中でラースを探し当て指示するように具体的に探るには、おそらくは相当に間隔を研ぎ澄ませないといけないと思う。
「……大丈夫です。問題ありません」
「よし、じゃあヒスイ」
「はい」
「頼んだぞ」
鱗笛を右手で持ち、船の先頭に立つ。
波で揺れる船に、バランスを取られないようにしっかり足を踏ん張らせ、左手で手すりに掴まる。
右手で笛を構え、大きく息を吸って、澄み渡る音を響かせた。
ぴょんぴょんと飛び跳ねながら、お見送りまでしてくれてた。
次はギルドに向かう。
依頼内容の確認と、鱗笛を受け取るため。
今日は曇り。
夏のように暑い日ではあるが、雲のおかげで日差しは弱い。
しかし蒸し暑く、歩いていても汗をかいてしまう。
海が近い場所だから、海水浴をしている人は多いかな。
ヤビクニは深海生物だから、相応に沖まで出ないといけない。
それまではどうやっていくのだろう。
魔法で飛んで行くのか、船で行くのか。
向かい風を切りながらギルドがある海へ向かっていると、髪を濡らしていたり、サーフボードに似たものを持っている人と多くすれ違う。
髪を押さえたロタエさんが、風に負けないように呟く。
「風が出てきましたね」
「そうだな。海も荒れているかもしれない」
確かに、服も髪も乱れ、何度か目にゴミが入って痛い。
歩くのが止まるほどではないにしろ、障害物のない海辺では、街中よりもあれている可能性は高い。
すれ違う人たちは海から避難してきた人たちかな。
一先ず話は聞かなければならないので、ギルドには向かっておく。
扉は締められ、まるで店仕舞いしてしまったかのように人気がない。
しかし中に灯はあるので、誰かがいるようではある。
カエ様が扉を開けた。
「いらっしゃい。待ってたよ」
受付のお婆さんが、キセルのようなものを咥えて煙を浮かしている。
両手で雑誌? を読み、仕事の合間のように見える。
「人気がないようで」
「ああ、人払いしたわけじゃあないんだがね。風が強くなって波が高くなってきてね。海自体閉じたんだよ」
海の安全もギルドが管理していて、開放するか否かはギルドが判断しているとのこと。
今日は風が強くなる予兆があったらしく、海を閉じたのも予定通りだそう。
「アンタらが行く方も風は強いかもしれないけど、どうする?」
一考。
人がいないのは好都合だ。
沖だとしても、いないならいない方が遠慮なく魔法は使える。
しかし足場が不安定なところで、波や風が強いのは危険度がより高い。
「このあとも風は強いのですか?」
「そのようだよ。アタシとしてはあまりお勧めはしないがね。一応説明しておくか」
前日同様、ソファーに座るよう促される。
お婆さんが持ってきたのは、魔石。
すでに魔法が込められているもののようだ。
それが三つ、首から下げられるようになっている。
「マルス様からのものだよ。身に危険があった時に、ギルド行の転移魔法が自動発動する」
「身の危険の判断はどうやって?」
「闇の魔法で精神状況を確認してるんだと」
確かに闇属性はそういう魔法が多いと以前聞いたことがある。
それの応用かあ。
元の世界で言う、嘘発見器みたいなものかな。
まあ、ただ。
状況を『見透かされている』ようで良い気はしないが。
「では、お借りしよう」
「あいよ。ほれ、アンタたちも」
「お借りします」
「ありがとう、ございます」
「あと鱗笛も。貴重なもんだから大事に扱うんだよ」
珊瑚だろうか、ほんのり赤みのあるか手のひらサイズの縦笛を預かって、首から石を下げ、海へ出る。
深海がある沖までは、船に乗る。
ただし海には出ない。
船に乗った状態で転移する。
そして海の上に出て笛を鳴らし、得物を待つ。
荒天時には水属性と風属性を持っている人がいるのが絶対条件だ。
幸いにして、私もロタエさんは両方あるし、カエ様も風属性を持っている。
何だったら全属性ある。
「じゃあ船はこれね。この後も天気が荒れるから、アタシが連絡したらすぐに戻るんだよ」
海が荒れても一瞬で戻れるのは魔法のいい所だなあ。
船着き場で小型だが三人なら十分な大きさの船を借り、さっそく乗り込む。
そういえば船酔い、大丈夫かな。
大丈夫か。
お婆さんに見送られ、船に設置されていた石に魔力を流す。
ギルド同士を行き来するように、光に包まれて、景色が変わる。
今までいた陸地は手乗りサイズとでも言えそうな感じに離れているが、想像していたより近いかな。
見渡す限りの水平線、って感じを想像してた。
「よし、じゃあやる前に、一度周囲を確認するか。ロタエ、頼む」
「はい」
ロタエさんが船の中心に立ち、風の魔力を練る。
使うのは、森の中の錆鼠・ラースを探していたのと同じ魔法。
指定した対象、もしくは何かしらの障害物を探す、探索系の魔法。
≪風の便り≫
海のような遮蔽物がない場所なら、これと言った指定はせず、周辺の何かしらを調べるだけでいい。
なのでラースの時な参考物品は必要ない。
どんな感覚なのか聞いてみたところ、自分を中心に風を波紋状に放ち、跳ね返りを確認する。
たぶんソナーのようなもの。
森の中でラースを探し当て指示するように具体的に探るには、おそらくは相当に間隔を研ぎ澄ませないといけないと思う。
「……大丈夫です。問題ありません」
「よし、じゃあヒスイ」
「はい」
「頼んだぞ」
鱗笛を右手で持ち、船の先頭に立つ。
波で揺れる船に、バランスを取られないようにしっかり足を踏ん張らせ、左手で手すりに掴まる。
右手で笛を構え、大きく息を吸って、澄み渡る音を響かせた。



