―――――……
前日。
氷を河川敷に転送して、氷を溶かしながら焼却処理をしていた時。
「これが最後の一つですね」
「ようやくか」
思わず息を吐き出してしまうほど量が多かった。
見上げるほどに大きい氷から、ラースを一体ずつ小分けにし、火にくべるという作業を繰り返した。
氷の大きさに対し拳大のラースというのは対比が大きく、風の魔法で削っていく作業が思ったよりも大変だった。
個体としては千匹はいたかもしれない。
途中から数えるのをやめたから具体的な数字はわからないけど。
それもこの氷で最後となり、終わりが見えて安心する。
最後ともなればやる気は作業開始の時のように活気を取り戻し、さっさとやり遂げてしまおうと腕まくりをする。
「殿下」
「お、おかえり」
廃村の調査のために焼却処理からは離脱していたロタエさんが、転移魔法で帰ってきた。
袖をまくった腕のやり場に一瞬迷ったが、二人は二人の仕事もあるし、私は作業をしていよう。
「どうだった?」
「村はヒスイさんのおかげでほぼ更地になり、開拓はしやすそうです。ただ周辺の森に問題が」
「何かあったのか?」
「ラースがまだいるようです」
「え」
聞き耳立ててましたすみません。
ロタエさんの話によると、廃村のあった場所は凸凹しているものの問題はなし、村の周辺も見て回った際、ラースの糞や錆などの痕跡があったという。
軽く森の中に入ってみれば、木の根元にいたり、登っていたりと自由に過ごしていたらしい。
「じゃあ明日は森を見回るか」
「それがよろしいかと」
―――――……
ということで、今は残党狩りをしている。
焼却処理をしなかった一体と、焼却処理をしたラースの骨を使用し、魔法で残りの探している。
探す役はロタエさん。
指示を貰ってラースの居場所を見つけ、氷漬けにするのがカエ様と私。
どうしても動きたいと言う水属性を持っていない殿下のため、≪水面の華は末枯れず≫を入れた魔石を渡している。
かつ風属性で機動力を上げ、木を渡って移動している。
「殿下、二時の方向、集団がいます」
「よし、まとめてやってくる」
「私も行きますか?」
「ヒスイさんは正面に進んだところに別の巣があるようです」
「わかりました」
森の中では比較的群れが小分けになっている。
しかし固まっているため、まとめて氷漬けにしやすい。
丸めた紙の上を歩く練習が活きたのか、移動はスムーズに行ける。
枝から枝へ渡り、見つけては氷漬けにして、を繰り返す。
そんな作業を廃村周り五時間。
念のため広範囲で探索し、三周したぐらい。
朝一から始めたのに昼を過ぎてしまった。
「お疲れ様でした」
「さすがに、疲れたな」
「そうですね……」
魔力としてはそこまででもないというのは言わないでおこう。
今更かもしれないが。
ただ、枝から枝へ飛び越えながら、草木に潜む小さい生き物を探すのは身体的に疲れた。
体力面が問題かなあ。
スグサさんもカミルさんとやってたときに息切れしてたし、体力はもともと少ないほうなのかも。
私が仕留めたのは三百程。
殿下も同数程らしい。
「やはり多いですね」
「そうだな。繁殖力はそれなりにある方だとしても、異常繁殖に値するだろう」
表情は深刻だ。
二人が今から話そうとしていることは私は詳しくは知らないが、私が目の前にいるのに話し出すということは、私にも関係があるのかな。
「ヒスイたちが学外で任務をこなした時があっただろ」
「遠足の時のですか?」
「そうだ。あの時の薬草採取も、ピーチも、イレギュラーだったスパデューダも、国中で異常繁殖と過成長に関係している」
カエ様が言うには、ピーチの討伐は普段はあまり挙げられないらしい。
異常繁殖。確かに危険な魔物ではあるが、人間を襲うことはほぼないとのこと。
しかし今回は寮が多く、目撃情報が多かったため、間引きという意味合いで行われたのだという。
スパデューダは過成長。
巣があったことは想定していなかったが、大きすぎる個体は周辺生物のバランスを崩す。
過剰繁殖にもつながる可能性があるということで、討伐が行われた。
スパデューダに関しては人的被害も出ていたようだ。
「この情報、私に言っちゃってよかったんですか?」
「信用している、というのと、おそらくだが最後に行う予定の最上級-の任務、これも過剰繁殖によるものの可能性があるからな。注意が必要だ」
「……そうなんですね」
信じていないわけではない。
それは私も同じこと。
カエ様……殿下の言葉も人柄も信用している方だ。
だから、今言った言葉に偽りはないと思う。
偽りは。
じっ、と、殿下の表情を窺う。
疑っているのではない。
時として、目は口程に物を言う。
伝わってほしいんだ。
「……殿下」
「……今は「殿下」じゃなくカエなんだが?」
「聞いているのは殿下です」
じっ、と、見つめる。
見つめ返してくるので、さらに見つめ返す。
睨み合いとも取れそうな状況だが、私は引く気はありませんという意味合いも込めて、ブレずに見つめ続ける。
次第に殿下に眉間の皺が出来始め、口が曲がっていく。
ふいっと顔を逸らし、ため込んでいたような息を吐き出した。
「はあぁぁ……。わかった。降参だ」
「だから言ったじゃないですか」
「うるさいぞ」
ロタエさんは話すべきと考えてくれていたよう。
殿下の重い口が開く。
「……今回の二つの任務。依頼主は市民やギルドからではなく、城からだ」
前日。
氷を河川敷に転送して、氷を溶かしながら焼却処理をしていた時。
「これが最後の一つですね」
「ようやくか」
思わず息を吐き出してしまうほど量が多かった。
見上げるほどに大きい氷から、ラースを一体ずつ小分けにし、火にくべるという作業を繰り返した。
氷の大きさに対し拳大のラースというのは対比が大きく、風の魔法で削っていく作業が思ったよりも大変だった。
個体としては千匹はいたかもしれない。
途中から数えるのをやめたから具体的な数字はわからないけど。
それもこの氷で最後となり、終わりが見えて安心する。
最後ともなればやる気は作業開始の時のように活気を取り戻し、さっさとやり遂げてしまおうと腕まくりをする。
「殿下」
「お、おかえり」
廃村の調査のために焼却処理からは離脱していたロタエさんが、転移魔法で帰ってきた。
袖をまくった腕のやり場に一瞬迷ったが、二人は二人の仕事もあるし、私は作業をしていよう。
「どうだった?」
「村はヒスイさんのおかげでほぼ更地になり、開拓はしやすそうです。ただ周辺の森に問題が」
「何かあったのか?」
「ラースがまだいるようです」
「え」
聞き耳立ててましたすみません。
ロタエさんの話によると、廃村のあった場所は凸凹しているものの問題はなし、村の周辺も見て回った際、ラースの糞や錆などの痕跡があったという。
軽く森の中に入ってみれば、木の根元にいたり、登っていたりと自由に過ごしていたらしい。
「じゃあ明日は森を見回るか」
「それがよろしいかと」
―――――……
ということで、今は残党狩りをしている。
焼却処理をしなかった一体と、焼却処理をしたラースの骨を使用し、魔法で残りの探している。
探す役はロタエさん。
指示を貰ってラースの居場所を見つけ、氷漬けにするのがカエ様と私。
どうしても動きたいと言う水属性を持っていない殿下のため、≪水面の華は末枯れず≫を入れた魔石を渡している。
かつ風属性で機動力を上げ、木を渡って移動している。
「殿下、二時の方向、集団がいます」
「よし、まとめてやってくる」
「私も行きますか?」
「ヒスイさんは正面に進んだところに別の巣があるようです」
「わかりました」
森の中では比較的群れが小分けになっている。
しかし固まっているため、まとめて氷漬けにしやすい。
丸めた紙の上を歩く練習が活きたのか、移動はスムーズに行ける。
枝から枝へ渡り、見つけては氷漬けにして、を繰り返す。
そんな作業を廃村周り五時間。
念のため広範囲で探索し、三周したぐらい。
朝一から始めたのに昼を過ぎてしまった。
「お疲れ様でした」
「さすがに、疲れたな」
「そうですね……」
魔力としてはそこまででもないというのは言わないでおこう。
今更かもしれないが。
ただ、枝から枝へ飛び越えながら、草木に潜む小さい生き物を探すのは身体的に疲れた。
体力面が問題かなあ。
スグサさんもカミルさんとやってたときに息切れしてたし、体力はもともと少ないほうなのかも。
私が仕留めたのは三百程。
殿下も同数程らしい。
「やはり多いですね」
「そうだな。繁殖力はそれなりにある方だとしても、異常繁殖に値するだろう」
表情は深刻だ。
二人が今から話そうとしていることは私は詳しくは知らないが、私が目の前にいるのに話し出すということは、私にも関係があるのかな。
「ヒスイたちが学外で任務をこなした時があっただろ」
「遠足の時のですか?」
「そうだ。あの時の薬草採取も、ピーチも、イレギュラーだったスパデューダも、国中で異常繁殖と過成長に関係している」
カエ様が言うには、ピーチの討伐は普段はあまり挙げられないらしい。
異常繁殖。確かに危険な魔物ではあるが、人間を襲うことはほぼないとのこと。
しかし今回は寮が多く、目撃情報が多かったため、間引きという意味合いで行われたのだという。
スパデューダは過成長。
巣があったことは想定していなかったが、大きすぎる個体は周辺生物のバランスを崩す。
過剰繁殖にもつながる可能性があるということで、討伐が行われた。
スパデューダに関しては人的被害も出ていたようだ。
「この情報、私に言っちゃってよかったんですか?」
「信用している、というのと、おそらくだが最後に行う予定の最上級-の任務、これも過剰繁殖によるものの可能性があるからな。注意が必要だ」
「……そうなんですね」
信じていないわけではない。
それは私も同じこと。
カエ様……殿下の言葉も人柄も信用している方だ。
だから、今言った言葉に偽りはないと思う。
偽りは。
じっ、と、殿下の表情を窺う。
疑っているのではない。
時として、目は口程に物を言う。
伝わってほしいんだ。
「……殿下」
「……今は「殿下」じゃなくカエなんだが?」
「聞いているのは殿下です」
じっ、と、見つめる。
見つめ返してくるので、さらに見つめ返す。
睨み合いとも取れそうな状況だが、私は引く気はありませんという意味合いも込めて、ブレずに見つめ続ける。
次第に殿下に眉間の皺が出来始め、口が曲がっていく。
ふいっと顔を逸らし、ため込んでいたような息を吐き出した。
「はあぁぁ……。わかった。降参だ」
「だから言ったじゃないですか」
「うるさいぞ」
ロタエさんは話すべきと考えてくれていたよう。
殿下の重い口が開く。
「……今回の二つの任務。依頼主は市民やギルドからではなく、城からだ」



